タイ、日本市場重視変わらず-タイトラベルマート・プラス取材
バンコクで毎年開催されるタイ最大の「タイトラベルマート・プラス」(TTM+)。今年も6月8日から10日の日程でバンコク郊外のコンベンションセンターIMPACTで開催された。2010年の訪問者数は前年比12.6%増の伸びを見せており、今年は400社に上るセラーがタイから、そして300社以上のバイヤーが世界各国から集まった。日本市場に向けては震災の影響があるものの、変わらずに日本を重視する姿勢だ。また、今年度の新しいコンセプトを発表し、今後はより環境に配慮したグリーンツーリズムを推進する方針を説明。新しいエコデスティネーション化に乗り出した。
訪問者数は順調に回復、1680万人見込む
2001年から毎年の恒例行事となっているTTM+。「プラス」は「メコンエリア(Greater Mekong)」を指し、タイ国内およびメコン川流域エリアの旅行商品を紹介するトラベルマートである。今年は400社に上る出展に対し335社のバイヤーが海外から訪れ、海外からの注目の高さがうかがえる。また、BtoCのトラベルフェスティバル(TTF)も同時にIMPACTの別翼で開催されており、まさに東南アジア最大規模の旅行イベントとなった。
メディアブリーフィングではタイ国政府観光庁(TAT)総裁のスラポン・サウェートセラニー氏が登壇し、タイ観光業界の現状を話した。デモや空港閉鎖などの影響があったものの、2010年のタイへの訪問者数は1593万6400人と前年比12.6%の伸びを見せたことを説明。2011年1月から5月までの訪問者数を見るとすでに820万人に達しており、前年同時期と比べると24.4%増で順調に回復しているという。特に欧米からの旅行者は戻りが早く、依然として世界でも人気の高いデスティネーションであることをアピールした。今年は1680万人の海外からの渡航者を見込んでいるとのこと。
また、東日本大震災について言及し、TATとして引き続き日本をメインターゲットとしていくことを強調した。会場では日本旅行業協会(JATA)VWC2000万人推進室室長の澤邊宏氏が紹介され、震災と原発事故による旅行自粛ムードからの脱却、節電のためより長い夏休みを取得するといった日本国内での呼びかけについて説明。早期の復興に向け、「自粛するのではなく、今まで通りにビジネスをすることが必要」であると訴えた。
「震災後も日本市場は重要」
今年のTTM+には、いつもとは違ったブースと機能が設けられていた。東日本大震災による日本の旅行業界への深刻な影響を配慮し、TTFに日本の旅行素材を紹介するブースを、そして日本人のバイヤー向けにテーブルトップセールスの場が設けられた。それぞれのテーブルの持ち時間は約10分で、予約制。日本市場を重要視する150社の旅行会社が集まり、各テーブルをまわる。通訳として日本語を学ぶ大学生が各テーブルに配置され、担当者同士の活発な情報交換がされた。
また、日本向けのブリーフィングでは、TAT副総裁のサンスーン・ンガオランシー氏が登壇。「2006年に130万人の渡航者を数えた頃に比べればここ数年、日本人の訪問者数は減っているが、日本市場は依然として重要視しており、震災後もそれは変わらない」と改めて述べた。「震災後も日本の旅行者数はそれほど、落ち込んではいない」と述べ、その理由としてビジネス客とFITの需要を挙げた。特にFITは日本人旅行者の約65%を占めており、デスティネーションも人気のチェンマイやプーケットのほか、トラートやチャーン島などにも広がり、安定した市場となっている。
ンガオランシー氏は個別インタビューで、特に日本の市場に向けた旅行スタイルを提案。グリーンツーリズムのほかに力を入れていきたいのは、健康、美容をテーマにした旅行だ。10月までに「タイランド・ビューティ」をコンセプトにプロモーションを開始したいといい、現在、人気のあるメディカルツーリズムに加え、ヒーリング、ビューティなどに主眼をおいたアクティビティも推奨していく。ダイエットや審美歯科といった美容を目的とした医療施設の利用、人工透析や健康診断などの医療行為もタイでは日本で受けるよりも格段に費用が安い。「安いからというだけでなく、優れた技術を求めて来てほしい」といい、タイの医療やウェルネスに関する技術の高さをアピールした。
タイ独自のエコツーリズムを探る
欧州での販売も好評
また、メディアブリーフィングでTAT総裁のスラポン・サウェートセラニー氏は、深刻な環境の変化に対応するため、今年度からの新しいコンセプトとして「Go Green Go Thailand」を推進することを発表。自然ガス燃料や電気自動車を動力とするバスの利用や植樹といったアクティビティを推奨していくほか、主旨に沿った活動をする企業にはライセンスを与えるなど環境にやさしいツーリズムをめざす。欧米のエコツーリズムの格付け基準を採用し、環境にやさしいホテルなどにもグリーンホテルの証明を発行。すでにタイ全土で500のホテルが認定されているという。さらに、チェンマイをグリーンツーリズムのモデル都市に設定し、環境に配慮した観光都市の例として作り上げ、より成熟したサスティナブルな観光立国をめざしていく。TTM+はタイの総選挙前の実施であったが政府が変わってもTATの方針に変更はないと断言した。
今後、エコツーリズムを進めていくのに際し、その主な商品をタイエコツーリズム旅行協会(Thai Ecotourism And Travel Association=TEATA)会長のドゥアンカモン・チャンスリヤウォン氏が紹介した。
TEATAはグリーンツーリズムを取り扱う民間企業が集まって組織されており、アウトドアアクティビティの専門家が集まっているのが特徴だ。TATやタイ航空、タイ国観光スポーツ省などのバックアップのほか、設立資金の75%を欧州のCSR企業によって支援されている。商品造成には18ヶ月をかけ、PATA(=Pacific Asia Travel Association)から金賞を受賞するといった功績もあるという。
商品を造成するにあたり、主にヨーロッパ市場をリサーチし、協力企業などとともに吟味を重ねガイドラインを作った。そしてガイドについても、世界基準を取り入れつつタイならではのグリーンツーリズムの在り方を探ったという。FAMツアーでも大変好評を得ており自信を持っておすすめできるとのこと。すでに欧州では販売が開始されており、売れ行きも好調だ。
プーケットマラソン、今年も開催
日本からも多くのランナーが参加
2004年のスマトラ地震で深刻な被害を受けたプーケット。その復興をめざし、翌年の2005年から毎年の恒例行事として始まったのが、プーケット国際マラソンだ。今年も6月12日に開催され、世界各国から出場者が集まる盛況な大会となった。
スタート/ゴール地点のある会場はリゾートエリアのラグーナ・ビーチ・リゾートで、前夜祭のパスタパーティも同リゾートのボールルームで開催される。
プーケットマラソン日本連絡先となっている長谷川博氏によると、今年は日本人参加者が344人(2010年は211人)と2006年以来過去最高で、この日のために結成されたという一般人によるマラソンチームも参加した。大会全体としては欧米やアジア周辺諸国からの参加者も含めて約4000人が参加。ファミリーで参加する人も多いという。
給水所や応急施設、トイレの配置がしっかりしているほか、世界的に有名なスポーツイベント司会者のウィット・レイモンド氏の司会で、ゴール前には(チップをつけて走行している人のみ)名前を呼んでもらえるという演出もあり、国際大会の名に恥じない運営となっている。
前日に出場をエントリーする場所とスタート/ゴール地点が同じ場所であること、またゴール後には軽食や15分間のマッサージサービスがあるなど、出場者にとってもわかりやすい。ケアの行き届いたマラソン大会といえそうだ。
取材・写真:岩佐史絵