夏の海外旅行予約、間際化の傾向強く-「安・近・長」でアジアが好調
トラベルビジョンがこのほど実施した旅行大手各社の夏の海外旅行予約状況に関する聞き取り調査で、市場が東日本大震災の影響から回復傾向にあることがわかった。取材に応じた各社では、前年比にはややばらつきがあるものの、「好調」と表現する会社もあり、総じて市場動向の好転を報告。燃油サーチャージの高騰などもあり「安・近・長」の傾向が見られるという。また、間際化が強まっているとの指摘も多く、各社ともさらなる需要の取り込みに向けて販売を強化する考えだ。
近畿日本ツーリスト(KNT)によると、6月30日時点の7月の海外旅行取扱人数は前年比1割増で、8月、9月は前年並みに推移。今年は予約が間際化しており、たとえば8月の予約状況をみると、5月末時点では前年比1割以上減だったが、1ヶ月間で前年並みまで回復した。
阪急交通社も7月は20%増、8月は25%増、9月は5%増で好調に推移。震災後新聞出稿などを控えたこともあり、4月、5月は前年割れとなったが、ゴールデンウィーク明けごろから自粛ムードが緩和し、6月以降は回復傾向にある。ただし、燃油サーチャージの高騰の影響が懸念されることから「今後の動向は予断を許さない状況」とした。
一方、日本旅行は、6月19日時点で7月が11%減、8月が8%減、9月が9%減、7月から9月までの3ヶ月間では10%減で推移。ただし、夏の海外旅行商品の受注が活発化してきた5月末以降から、週間受注は連続して前年を上回っているという。予約の間際傾向から、8月まで間際需要を取り込む夏商戦は続くとみている。
ジャルパックは、6月29日時点では7月が前年同週比で減少したが、8月、9月は増加。昨年に比べ日本航空(JL)の供給座席量が減少したことを考慮すると、好調だという。予約の間際化に対しては、7月中旬に発売予定の間際商品「売りつくし」の方面を拡大するなど対策を実施し、需要の取り込みをはかる考えだ。
▽方面別ではアジアが好調、「安・近・長」傾向明確に
方面別では、燃油サーチャージの高騰もあり近距離のアジア方面が好調で、通常より2、3日長めの商品の売れ行きが良く「安・近・長」傾向がみられた。夏休みの長期化を見込んだ長期滞在商品も堅調に推移しているようだ。
KNTによると、アジア、ハワイ、台湾など近距離が好調で、WEB専用商品「クリッキーファミリー」も、グアムやサイパンを中心に売れ行きがよい。また、夏休みの家族向け商品の企画により、韓国は長めの5日間コースに人気が集まった。長期滞在商品は、ハワイ、グアム方面は10日から12日間、マレーシアは15日、16日の商品が人気。「全体的に長期化しているかは不明だが、長期滞在の需要を開拓できた」という。
阪急交通社によると、中国、韓国、台湾、ハワイが人気だ。夏の長期滞在型商品も各方面で設定したが「それよりも通常より数日程度長い商品が売れている」とし、アジア、中国では通常より2、3日長めのツアーが人気だという。同社の主な客層はシニア層であることから、夏の長期休暇や休暇分散にそれほど影響はなかったとの見方だ。今後はアジア方面を中心に間際予約が増えるとの見込みで、各方面で集客が弱い日があれば、新聞出稿やウェブなどで集中的に再販売するなど柔軟に対応していく考えだ。
日本旅行によると、アジアが好調で、なかでも東南アジアは約20%増で推移しており、少し長めのプランを申し込む人もいるという。同社は「極端に長期日程で旅行するわけではないが、旅行日程や方面の選択肢が増えた」ととらえており、こうした需要に対応する商品を投入しているところ。また、オセアニアも5%増と堅調に推移。このほか、前年より数を増やし、29本のチャーターを設定した北欧、スイスも好調で、受注は約60%増と増加し、ほぼ完売する見込みだ。
ジャルパックでも安・近・長の傾向が出ており、アジア、ミクロネシアが好調。ただし、JLの羽田/パリ線の利用を前面に押し出した施策が奏功し、ヨーロッパも売り上げを伸ばした。「例年に比べてわずかだが長期化する傾向がある」こともあり、長期休暇商品を売り出すなど需要の取り込みをはかっていく考えだ。