震災後の海外旅行市場、FITから回復−夏商戦は長期で割安な旅行提案を
震災直後、予約キャンセルや新規予約の鈍化など大きな影響を受けた旅行業界。しかし、自粛ムードを払拭しようという世間の流れの中で、FIT層から旅行需要が回復し始めているようだ。日本旅行業協会(JATA)JATA国際観光フォーラム・旅博推進室が4月28日に開催した海外旅行市場動向セミナーでは、登壇したリクルート旅行ディビジョンエイビーロードリサーチセンターセンター長の稲垣昌宏氏が震災前後の旅行需要の変化について説明。夏の海外旅行需要取り込みに向け、消費者への効果的なアプローチの仕方なども提案した。
震災前後で海外旅行新規問合せ数が約半減−エイビーロード
日本旅行業協会(JATA)が3月に調査した大手旅行会社の海外旅行予約状況では、3月が前年比21.3%減、4月は26.2%減、5月は31.8%減。さらに成田空港でもゴールデンウィーク(GW)の出入国者数は48%減とSARSを超える近年で最も大きい下げ幅になるとの予測を示していた。
こうした中、エイビーロードでの新規ツアー問合せ数は、震災前週の3月4日から10日までを100%とすると、11日から17日の震災が発生した週は55.6%減で、このうち東京出発は62.5%減、東京出発以外は42.6%減となった。18日から24日までの翌週は55.5%減となり、東京出発は56.4%減、東京出発以外は53.8%減に。新規ツアー問合せ数は全国的にも震災の翌週は震災前週と比べてほぼ半減した。
新規ツアー問合せ数はまた、震災が発生した3月11日を境に前年を下回って推移し、航空券の問合せ数が前年比で逆転。ツアーは、1月が15%増、2月が27%増、3月は9%減、4月は13%増となり、1ヶ月後には前年を上回った。
一方、航空券は1月が2%増、2月が17%増、3月も15%増、4月は22%増とプラスに推移。FITもしくはビジネス需要は、震災が発生した3月も伸びるなど個人旅行の層が需要をけん引したことがわかった。さらに、航空券の問合せ数を日別に見ると、3月11日は前年を下回っているが、その後4月10日以降は前年を越えて推移。
ただし、新規ツアー問合せ数も、日別に見ると前年を越える日も目立ち始めており、個人旅行の層がけん引しながらツアーへの需要も回復傾向にあることが考えられる。
なお、エイビーロードユーザーは20代から30代が半数を占めており、女性ユーザーが多い。また、稲垣氏は旅行に慣れている人が多いため、「世間一般の動きを先行する傾向がある。回復も早い」と言及し、FITの傾向が表れていることを伝えた。
海外旅行の意欲減退は国内より少数
地震発生後しばらくは自粛ムードが広がり、旅行を始め余暇活動を控える傾向があったが、観光庁からのメッセージ発信やメディアの消費を促す報道などもあり、徐々に自粛ムードが解消され始めた。また、今年のゴールデンウィーク(GW)は、近場の観光地などで余暇を楽しむ人の様子もテレビや新聞で伝えられた。
もともと、今年のように日並びの良いGWの海外旅行の傾向として、長距離方面の予約が落ちにくいことがいえる。例えば、ジェイティービー(JTB)が調査し4月18日に発表したGWの海外旅行人数の方面別推計(JTBグループの販売状況や航空会社の予約状況、インターネットリサーチ、業界動向から推計)は、アジアが18.8%減、ハワイが18.4%減、グアムとサイパンが16.7%減、北米が9.5%減、欧州が3.2%減、大洋州が27.8%減、アフリカや中近東、中南米などは42.9%減。北米や欧州などの長距離方面はいずれも1桁の減少幅に落ち着いており、長期休暇で長距離方面を事前に予約していた人への影響は少なかったと分析する。
また、インテージが4月5日から7日にかけて、東日本大震災以降の消費やサービスについて消費者の意向を調査した際、意欲が「やや低くなった、低くなった、かなり低くなった」と答えたのは、国内旅行が28.1%であったのに対して、海外旅行は20.9%。海外旅行は、国内旅行よりも需要が底堅いといえそうだ。
海外旅行の伸びしろは国内旅行者に、長期で割安な旅行造成を
稲垣氏は、効果的な旅行提案の方法として、国内旅行検討者をターゲットとした販促をすすめる。エイビーロードの調査によると、海外旅行者のうち、国内旅行に行かずに海外旅行に行った人よりも、国内旅行に行って海外旅行にも行った人の割合の方が約2倍高かった。つまり、ランダムに販促をするのではなく、国内旅行を検討している人を対象に販促をかける方が効果的で効率的だと紹介。
例えば、今年は特に節電対策などで企業が長期休暇を導入する傾向があり、長期の海外旅行を検討する人が増えると見込まれる。節電や放射能漏れ問題といった状況に対するストレスから逃れ、癒しを求める旅行がうまれると予想し、長期間ゆったり滞在でき、物価が安い地域への旅行ニーズが高まるという。
また、パンフレットの作り方や並べ方については、国内/海外と行き先別に分けて制作、展示するのではなく、「予算別」、「期間別」、「目的別」など、オンラインで旅行を選ぶ際に比較検討するイメージで、検討する側の立場にたった販促が効果的だという。これにより、国内旅行だけしか検討していなかった人に違った切り口で海外旅行を提案でき、さらに旅行先の選択肢を広げることにもなり、旅行需要全体の喚起にもつながる。国内旅行、海外旅行と別々の売上目標をたてていることが多いが、店舗にとって売上の最大化をめざすととらえることで、取り組むことをすすめた。
このほか、国内旅行に参加した顧客情報の活用も提案。どの時期に何回、どんな旅行をしているのか、といった情報から、例えば、桜のお花見ツアーに参加する人にはオランダのチューリップや花を見に行くツアーをすすめるなど、具体的に誘導できると提案した。
※訂正案内(2011年5月18日 11時21分)
訂正箇所:小見出し2 第2段落 第2文
誤:例えば、ジェイティービー(JTB)が調査したルックJTBのGWの方面別予約状況(4月18日発表)は、
↓
正:例えば、ジェイティービー(JTB)が調査し4月18日に発表したGWの海外旅行人数の方面別推計(JTBグループの販売状況や航空会社の予約状況、インターネットリサーチ、業界動向から推計)は、
震災前後で海外旅行新規問合せ数が約半減−エイビーロード
日本旅行業協会(JATA)が3月に調査した大手旅行会社の海外旅行予約状況では、3月が前年比21.3%減、4月は26.2%減、5月は31.8%減。さらに成田空港でもゴールデンウィーク(GW)の出入国者数は48%減とSARSを超える近年で最も大きい下げ幅になるとの予測を示していた。
こうした中、エイビーロードでの新規ツアー問合せ数は、震災前週の3月4日から10日までを100%とすると、11日から17日の震災が発生した週は55.6%減で、このうち東京出発は62.5%減、東京出発以外は42.6%減となった。18日から24日までの翌週は55.5%減となり、東京出発は56.4%減、東京出発以外は53.8%減に。新規ツアー問合せ数は全国的にも震災の翌週は震災前週と比べてほぼ半減した。
新規ツアー問合せ数はまた、震災が発生した3月11日を境に前年を下回って推移し、航空券の問合せ数が前年比で逆転。ツアーは、1月が15%増、2月が27%増、3月は9%減、4月は13%増となり、1ヶ月後には前年を上回った。
一方、航空券は1月が2%増、2月が17%増、3月も15%増、4月は22%増とプラスに推移。FITもしくはビジネス需要は、震災が発生した3月も伸びるなど個人旅行の層が需要をけん引したことがわかった。さらに、航空券の問合せ数を日別に見ると、3月11日は前年を下回っているが、その後4月10日以降は前年を越えて推移。
ただし、新規ツアー問合せ数も、日別に見ると前年を越える日も目立ち始めており、個人旅行の層がけん引しながらツアーへの需要も回復傾向にあることが考えられる。
なお、エイビーロードユーザーは20代から30代が半数を占めており、女性ユーザーが多い。また、稲垣氏は旅行に慣れている人が多いため、「世間一般の動きを先行する傾向がある。回復も早い」と言及し、FITの傾向が表れていることを伝えた。
海外旅行の意欲減退は国内より少数
地震発生後しばらくは自粛ムードが広がり、旅行を始め余暇活動を控える傾向があったが、観光庁からのメッセージ発信やメディアの消費を促す報道などもあり、徐々に自粛ムードが解消され始めた。また、今年のゴールデンウィーク(GW)は、近場の観光地などで余暇を楽しむ人の様子もテレビや新聞で伝えられた。
もともと、今年のように日並びの良いGWの海外旅行の傾向として、長距離方面の予約が落ちにくいことがいえる。例えば、ジェイティービー(JTB)が調査し4月18日に発表したGWの海外旅行人数の方面別推計(JTBグループの販売状況や航空会社の予約状況、インターネットリサーチ、業界動向から推計)は、アジアが18.8%減、ハワイが18.4%減、グアムとサイパンが16.7%減、北米が9.5%減、欧州が3.2%減、大洋州が27.8%減、アフリカや中近東、中南米などは42.9%減。北米や欧州などの長距離方面はいずれも1桁の減少幅に落ち着いており、長期休暇で長距離方面を事前に予約していた人への影響は少なかったと分析する。
また、インテージが4月5日から7日にかけて、東日本大震災以降の消費やサービスについて消費者の意向を調査した際、意欲が「やや低くなった、低くなった、かなり低くなった」と答えたのは、国内旅行が28.1%であったのに対して、海外旅行は20.9%。海外旅行は、国内旅行よりも需要が底堅いといえそうだ。
海外旅行の伸びしろは国内旅行者に、長期で割安な旅行造成を
稲垣氏は、効果的な旅行提案の方法として、国内旅行検討者をターゲットとした販促をすすめる。エイビーロードの調査によると、海外旅行者のうち、国内旅行に行かずに海外旅行に行った人よりも、国内旅行に行って海外旅行にも行った人の割合の方が約2倍高かった。つまり、ランダムに販促をするのではなく、国内旅行を検討している人を対象に販促をかける方が効果的で効率的だと紹介。
例えば、今年は特に節電対策などで企業が長期休暇を導入する傾向があり、長期の海外旅行を検討する人が増えると見込まれる。節電や放射能漏れ問題といった状況に対するストレスから逃れ、癒しを求める旅行がうまれると予想し、長期間ゆったり滞在でき、物価が安い地域への旅行ニーズが高まるという。
また、パンフレットの作り方や並べ方については、国内/海外と行き先別に分けて制作、展示するのではなく、「予算別」、「期間別」、「目的別」など、オンラインで旅行を選ぶ際に比較検討するイメージで、検討する側の立場にたった販促が効果的だという。これにより、国内旅行だけしか検討していなかった人に違った切り口で海外旅行を提案でき、さらに旅行先の選択肢を広げることにもなり、旅行需要全体の喚起にもつながる。国内旅行、海外旅行と別々の売上目標をたてていることが多いが、店舗にとって売上の最大化をめざすととらえることで、取り組むことをすすめた。
このほか、国内旅行に参加した顧客情報の活用も提案。どの時期に何回、どんな旅行をしているのか、といった情報から、例えば、桜のお花見ツアーに参加する人にはオランダのチューリップや花を見に行くツアーをすすめるなど、具体的に誘導できると提案した。
※訂正案内(2011年5月18日 11時21分)
訂正箇所:小見出し2 第2段落 第2文
誤:例えば、ジェイティービー(JTB)が調査したルックJTBのGWの方面別予約状況(4月18日発表)は、
↓
正:例えば、ジェイティービー(JTB)が調査し4月18日に発表したGWの海外旅行人数の方面別推計(JTBグループの販売状況や航空会社の予約状況、インターネットリサーチ、業界動向から推計)は、
取材:本誌 秦野絵里香