ANAグ、11年3月期は最終黒字−震災影響額190億円も需要は底打ち

  • 2011年5月9日
 ANAグループの2011年3月期(2010年4月1日〜2011年3月31日)の連結業績は、売上高が前年比10.5%増の1兆3576億5300万円、営業損益は678億800万円の黒字(前年、以下同じ:542億4700万円の赤字)、経常損益は370億2000万円の黒字(863億300万円の赤字)となった。3月11日に発生した東日本大震災により予約キャンセルや需要の落ち込みなどの影響を受けたものの、国内線、国際線ともに通期での需要が堅調に推移。その結果、当期純損益は233億500万円の黒字となった。また、2012年3月期の業績予想については、震災や原発事故などの影響により、航空事業の本格的な回復が不透明であることから合理的な算出が不可能と判断し開示を延期。事業計画の見直しを含め、緊急収支改善策、需要喚起などを実行していく考えだ。

 なお、震災影響額は約190億円で、国内線が120億円、国際線が30億円、旅行事業は50億円減収したほか、貨物でも10億円を減収。約20億円の内部相殺を加味し連結で約190億円減収となった。国内線、国際線ともに出張などの個人需要は落ち込みが少なく堅調に推移しているが、プレジャー需要の伸びが弱いという。ただし、ゴールデンウィークの予約状況をみると、4月28日時点で国内線は5%減となっているものの1週間前には10%減だったためGW間際まで伸びてきている。また、国際線は生産規模を伸ばしたこともあり4%増と前年を上回って推移。全日空(NH)専務取締役執行役員の日出間公敬氏は、「震災直後から4月頭が底だった。回復に期待している」と述べた。

 航空運送事業は、売上高が11.9%増の1兆2182億9200万円、営業損益は605億400万円の黒字となった。このうち、国際線旅客は震災直後は訪日外客などが落ち込んだが、通期ではビジネス需要が大幅に回復するとともに、円高によりプレジャー需要が堅調に推移。さらに、羽田/ロサンゼルス線や成田/ミュンヘン、ジャカルタ、マニラ線などの新規路線を開設したことで競争力、輸送力が拡大し、国際線旅客数は10.8%増の516万人と前年を上回り、旅客単価は18.3%と大きく改善した。また、国内線旅客は震災直後に旅行のとりやめ、自粛などでプレジャー需要が急激に減少したが、通期では需要が堅調に推移したため旅客数は1.7%増となり、旅客単価も1.7%改善した。

 旅行事業では、売上高が4.5%減の1593億8100万円と前年を下回ったものの、コスト削減に努め営業損益は26億3700万円の黒字を計上した。海外旅行では、アイスランド火山の噴火やタイの政情不安、尖閣諸島問題や韓国砲撃事件、東日本大震災などが発生したものの、夏の羽田/ホノルルチャーター便利用商品や羽田発着定期便商品の販売が好調に推移し、海外パッケージツアー売上高は1.7%増の215億5800万円と前年を上回った。また、国内パッケージツアーは3.6%減の1276億2700万円となった。


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