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トップインタビュー:トルコ航空日本支社長 トゥーバ・トプタン・ヤブズ氏

2011年は乗継利便が向上、新機材投入で販売拡大へ
震災支援も継続


 2010年、成田路線を週4便から6便へ増便したこともあり旅客数が1.5倍に成長したトルコ航空(TK)は日本路線において積極的な営業展開を続けている。一方、2011年はエジプトの政情不安や東日本大震災など、TKだけでなく航空業界、旅行業界にとって厳しいスタートダッシュとなった。こうしたなか、3月28日には、新たなコンフォートクラスを設けた新機材での運航を開始し、スケジュール変更によりイスタンブール以遠の乗り継ぎ都市が拡充する。TK日本支社長のトゥーバ・トプタン・ヤブズ氏に日本市場における2011年度の販売戦略について聞いた。(聞き手:本誌記者 秦野絵里香)



-2010年度は日本の航空業界にとって、成田の発着枠増加や羽田の第4滑走路オープン、航空自由化など変化のある年になりました。1年をふりかえり、成果や課題があればお教えください


トゥーバ・トプタン・ヤブズ氏(以下、敬称略) トルコ航空(TK)は2009年までの20年間、成田線を4便で運航してきたが、2010年度は6便へと増便した重要な1年だった。さらに新機材ボーイングB777-300ER型機の投入によりキャパシティは75%増加し、大きな責任を感じた。夏期スケジュールではイスタンブール以遠への乗り継ぎが難しかったため、メインターゲットをトルコへの需要に設定。旅行会社の協力をはじめ、「トルコにおける日本年」などのイベントやプロモーション展開により、成田/イスタンブール線は前年比55%増の13万5667人と良い結果を出すことができ、楽しい1年だったと思う。


 12月になると、成田線は他社でも大幅に供給が増えたので相対的に当社のシェアも減ったが、関空線では他社のヨーロッパ線が減少したため当社への需要が増え、東京より好調だった。


 年明けも、エジプト情勢の影響でダメージを受けたものの、イスタンブール線は順調であり、落胆する必要はなかった。東日本大震災が発生するまでは、夏スケジュールの出発時間変更によってヨーロッパの同日乗り継ぎ可能都市が2都市から20都市に増えるため、4月以降の伸びが期待できていた。



-震災によって受けた影響について教えてください。3月以降の予約数や利用者の変化などのほか、今後日本路線へどのような影響が出るとお考えでしょうか


ヤブズ 地震後は在日トルコ大使館と密接に連絡を取り合っており、なるべく通常通り運航するつもりだったが、本社からソウル経由にするよう指示があった。しかしソウル経由便では、イスタンブール到着が夜中になる。1日も早く直行便に戻したかった。震災直後は状況を判断できる情報がなかったが、成田の状況について英語でも案内が出されるようになり、何かあれば正確な情報が入る環境だと伝え、3月26日に直行便に戻した。これが、次の行動に移るための第一歩となった。


 何かあったら、という可能性は常にある。安心しているわけではないが、「もしかして」に捉われていたら何もできない。大事なのは迅速に対応すること。もしものためのプランを用意し、その時までは通常運航することに尽力した。


 震災により、もちろん旅客数の減少はあったが、業務渡航需要のキャンセルは少なかった。2011年の目標は、数値は見直すものの、内容自体に変わりはない。すぐには計画をスタートできないが、2ヵ月後をめどにスムーズに実行できるよう、今はその準備をする。


-2011年度は成田路線での新機材投入、関空路線の増便など、さらなる販売拡大が見込めますが、今回の震災の影響もふまえた1年間の実績の見通しと、販売戦略をお聞かせください


ヤブズ 2011年の計画には3つの柱がある。1点目はインディビやFITといった個人客の拡大。これまでの中心であるグループを保持しながら、個人でも利用しやすい航空会社をめざす。2点目は、イスタンブール以遠の乗り継ぎ路線への注力。トルコ旅行のシーズン中はイスタンブール線を中心に販売するが、冬場はイスタンブール以遠を充実させ、ビヨンドを強化しながら年間をバランスよく運営する。


 3点目は、業務渡航の重視。これまではレジャー需要が8割を占めていたが、昨年の増便により、業務渡航を拡大させる余裕が生まれた。トルコだけでなく中央アジア方面への需要があり、これだけでもかなりのボリュームを持つと予想している。すぐに成果を出そうとするのではなく、長期的な計画が必要。現在はその最初の段階だ。


 今回の震災によって日本経済に大きなダメージがあるのは確かだが、日本なら乗り越えられると信じている。旅客数の回復は比較的早いだろう。新たに導入したコンフォートクラスも、地震前はロードファクターが80%以上あり、好評だった。


 災害や政治情勢など、世界ではいつも何が起こるかわからない。旅行、航空業界はすぐに影響を受けるので、安心できるということはない。かといって悲観はしていない。何かあったらそれにあわせて動く。それがこの業界のビジネスだ。


-日本での旅行会社の役割をどのようにご覧になっているでしょうか。今後の旅行会社との関わり方とあわせてお聞かせください


ヤブズ 震災後は、フライトスケジュールを通常に戻してほしいという旅行会社の声に応えられたことが嬉しい。そして、今こそ社会的責任を果たす時だと考えている。ある旅行会社からチャリティーツアーを提案され、すぐに承諾した。代金の一部を義援金として寄付する、2ヶ月間のキャンペーンだ。直接被災していない人も今は旅行に行きづらい雰囲気だと思うが、旅行に行くことで何かの役に立つようにし、旅行者の心配を軽減したい。また、儲けるためではないので、4月、5月の2ヶ月間は値頃感のある運賃を設定し、行きやすくした。


 かつて大阪に勤務していたとき、トルコで大地震があった。飛行機はキャンセルされるし、母国のことを考えると悲しく、落ち込んだ。そういう時期を乗り越えられたのは、まわりの友達や、旅行会社の方々のおかげ。私は一生忘れない。地震後、大阪の旅客はいち早く戻ってきたが、これは旅行会社の皆さんの協力が大きかったと思う。「がんばれトルコ」、「今こそトルコに行こう」といったキャンペーンをしてくれた。それが心に残っていて、いつか恩返しをしたいと思っていた。東京で違う立場となった今、個人として、企業として、できる限りのことをするつもりだ。


-日本では、トルコ国内の対日感情が良好と考えられています。両国の関係についてのご見解や、今後さらに関係を深めていく上でのご意見をお聞かせください


ヤブズ 私は大学時代から日本と関わりがあり、人生で重要な時期を日本で過ごしてきた。TKでの19年のうち、11年間は日本勤務。私にとって、日本は切っても切り離せない存在だ。


 トルコと日本は歴史的にも関係が良好で、ビジネス交流も伸びている。初めて大阪に勤務した頃はトルコ料理店もなく、観光局もなかったが、今ではトルコと日本がお互いをよく知り合うようになり、本当に嬉しい。震災後の支援以外でも、もっと関係を深められるよう取り組みたい。


 今回の震災では、被災地での水不足を知り、本社から水を送ってもらった。スタッフの1人が仙台出身だったこともあり仙台を中心に支援することになり、1.5リットルのペットボトル1000本を直接届けに行った。今後もできるだけ続けたいと思っている。


 また、被災された旅行会社の皆様がこの状況を乗り越え、精神的にも身体的にも元気になれるよう協力したい。私たちは航空会社なので、運搬などでできることがあると思う。何かあれば遠慮なく声をかけてほしい。いつでも大歓迎だ。もし少しでも役に立てるなら喜んで動き、そのチャンスを与えてくれることに感謝したい。


-ありがとうございました



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