海外旅行者数は4月半ばで底打ち、通年での見通しは厳しく−JTBF調査

 日本交通公社(JTBF)は4月22日、東日本大震災後の海外旅行市場動向についてとりまとめ、海外旅行者数は4月半ばでほぼ下げ止まったと分析した。その一方で、半年や1年単位での見通しは「良くない」とし、企業の収益悪化や復興税導入を見越した消費支出の絞り込みによる海外旅行需要の低迷への懸念を示した。また、9.11テロやSARSと比較すると、震災直後に一旦需要が回復するまでは早いが、長期的な影響について注意が必要であり、旅行会社は今後の旅行需要の下ぶれリスクを計算に入れて慎重に取り組む必要があるという。

 海外旅行者数の下げ止まりについては、震災が旅行者心理に与えた影響は大きいものの、9.11テロやSARSなどと違い、海外旅行自体に障害となる要素が少なく、ビジネス渡航需要が回復していることから、国内旅行などに比べて早く底を打ったと判断。また、年間の海外旅行者数の60%を占める首都圏マーケットでは、成田空港を出発する日本人旅行者数が4月に入り下げ止まったことも理由としてあげている。

 さらに、SARSや9.11テロの場合は、その約2ヶ月後に旅行者数が上向いてきており、JTBFがおこなったマーケットサーベイでも旅行予約時期が出発日の60日以内という人が80%以上を占めていることなどから、先行予約の取消が影響力を持つのは旅行者減少のつながる事象が起こってから最大2ヶ月先までと分析。つまり、5月には旅行者数が上向くと予想する。また、日本人海外旅行者数も訪日外国人旅行者数も減少しているなかで、成田と羽田路線で航空会社が絞り込んだ座席数は10%弱であり、ビジネス需要が震災前の水準に回復してきていることから、航空会社もレジャー需要の早期回復に期待しているとの考えだ。

 一方、JTBFは今後の見通しについて、中、長期的スパンでみた影響に注意が必要だと指摘する。今夏は、燃油サーチャージが2008年の水準に並び、旅行需要が高まるはずの夏の需要回復期に影響する可能性を示唆。また、震災による電力不足が企業収益を悪化させ、復興財源確保に向けた増税の検討、個人消費への影響が年単位で続くと予想する。今後も最大でマグニチュード8クラスの余震があり得る、といった不確定性が大きいため、旅行業界にとって繰り返し影響を与える可能性があるという。こうしたリスクを把握し、慎重な姿勢で経営戦略をたてる必要があると訴えた。


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