ハワイ・マーケット&トレンド:上期ハワイ商品はサービス競争激化

  • 2011年2月24日
2011年上期ハワイ商品動向
〜細部のサービス強化で品質向上と個性化はかる〜


 羽田空港の国際化や円高、一昨年の新型インフルエンザからの回復など、追い風の吹いた2010年の旅行業界。しかし、景気の停滞やデフレの継続による購買意欲の低迷が続くなど、2011年も楽観はできない状況だ。品質志向へのシフトが見てとれた昨年のハワイ商品だが、今年はどうだろうか。より一層の付加価値を追求し、価値あるものに対価を払う消費者の傾向に沿う一方、ノンブランド商品やウェブ商品による展開など、各社の新たな取り組みを中心に、上期ハワイ商品の傾向を探る。


座席不足はチャーターで、ウェブでは価格優先

 上期ハワイの販売目標人数は、各社とも前年実績を多少上回るか前年並みに落ち着いている。羽田からの路線は増えたが、座席供給量は必ずしも十分ではないことから、JTBワールドバケーションズは夏場を中心にチャーター便利用の商品で補い、近畿日本ツーリスト(KNT)もゴールデンウィークおよび夏休みは、チャーター便利用の商品増設で対応していく。

 両社はまた、ハワイを含む全方面において、インターネット商品にも力を入れている。ルックJTBは商品改革2年目を迎え、細部の品質をより強固に保証していく一方で「SALE!」などのノンブランド商品、昨年5月に開始したウェブ専用商品で多様なニーズに対応する。KNTでは、ウェブ商品「クリッキー」をより充実させ、価格を抑えた「クリッキーバーゲン」、観光を組み込んだ「クリッキープラス」、短期売り切り型の「タイムセール」など5つのカテゴリーを展開。新たに女性の「ひとりたび」を提案したり、ハワイではゴルフやサーフィンに特化した商品も投入していく考えだ。

 今年の上期は、昨年より1ヶ月ほど前倒しで予約が動いている、というのは阪急交通社。座席が取りにくかったり、米国本土からの需要増で現地ホテルがタイトになっていたりする状況が旅行代金に反映されており、旅行者がより価格に敏感になっている印象が否めないという。また、地方市場では、大阪や名古屋も座席がとりにくく、福岡では仁川経由の大韓航空(KE)利用のハワイ商品が伸びているのが目立った動きだ。


保険付き商品も登場、サービス合戦はより激化

 昨年は、多くのホールセラーがブランド改革とそれに伴うサービス改革を行なった。今年もさまざまなサービスがてこ入れされており、さながらサービス戦争の様相を呈している。今年度最も目を引いたのは、ANAセールスの海外旅行保険付き商品だろう。“安心あったかサポート”をコンセプトに、ANAハローツアー全商品に契約手続き不要の海外旅行保険をセット。ホールセラーとしては初めてのサービスとなるが、利用者目線で見ると、今後は各社が取り入れる必然のサービスとなりそうな予感だ。

 今年も大々的にハワイキャンペーンを展開しているエイチ・アイ・エス(HIS)では、早期予約の特典を強化している。特典は、ドルフィン・ウォッチングやゴルフの1ラウンドプレイ、サンセットディナークルーズといったオプショナルツアー8つのなかから、120日前予約なら2つ、90日前予約なら1つを選ぶことができるというもの。料金換算するまでもなく、その付加価値の高さが注目される。

 参加者向けの現地サービスの代表ともいえるトロリーとラウンジも、さらなる改革が進んでいる。ラウンジでは、ルックJTBが昨年シェラトン・ワイキキ・リゾートに新設した「ルアナラウンジ」を新たにロイヤル・ハワイアン・ホテルとウェスティン・モアナ・サーフライダーにも設置。合計3ヶ所とし、いずれのラウンジにも豪華なコンチネンタルの朝食を用意。どのカテゴリーの客室に泊まっていても利用できるようにした。ワイキキの主要ホテル5ヶ所に「ライライ・ラウンジ」を展開しているホリデイでも、3ヶ所でコンチネンタルの朝食サービスを開始。こちらは宿泊ホテルに関係なく利用できるようになっている。

 一方、トロリーでは、4月1日のジャルツアーズとの統合前に、ブランド名を統一し、海外・国内ともに「JALパック」ブランドを展開するジャルパックが、レインボートロリーのアラモアナルートに加え、ダイヤモンド・ヘッドルートとショッピングルートを新設。ワイキキ地区の観光とショッピングをこの3本で網羅できるラインナップとした。ルックJTBは、4、6、10月限定でダウンタウン散策トロリーを設定。1日6便を1時間ごとに運行し、ダウンタウンでの観光や食事、ショッピングをサポートしていく。


羽田商品にも独自のサービスを展開

 羽田空港の国際線ターミナル開業は、昨年の旅行需要を押し上げる大きな要素のひとつとなった。ハワイへは3つの航空会社が就航していることで、各社とも羽田発着のハワイ商品とそれに伴うサービスを充実させている。主なサービスは、羽田空港での乗り継ぎ、駐車場、後泊など空港でのサービス、そしてフライトの出発が夕方となる帰国日の過ごし方の提案だ。

 HISの例を見てみると、有名レストランでの朝食と観光を組み合わせたプランや憧れのホテルスパでのんびりするプラン、そしてホエール・ウォッチングを楽しむ朝食クルーズやランチクルーズ(期間限定)など、合計6つのプランを帰国日に用意。そのほか、定額制のタクシーサービス、パーキングやスーツケースレンタルの特別割引など、羽田空港での利便性向上をはかっている。

 航空会社系ホールセラーでは、ANAセールスが羽田/ホノルル線キャンペーンを実施する。3名以上のグループを対象に、羽田空港での周辺駐車場を無料とするほか、周辺ホテルの後泊を3000円引きに。また全日空(NH)便は現地を18時55分に出発するため、レイトチェックアウト対象ルームも用意した。

 日本航空(JL)が国内線と国際線のMCTを短縮し、羽田でのスムーズな乗り継ぎをはかっているため、JALパックの羽田利用商品も利便性が高くなっている。国内線から国際線への乗り継ぎ必要時間を60分に、国際線から国内線は70分に大幅短縮。羽田空港内の移動も、JLの乗り継ぎ専用バス「JALスカイシャトル」の利用が可能だ。


ニッチマーケットに向けた商品も展開

 ハワイの幅広い客層のなかでも、各社が特に力を入れているのはハネムーナー&ウエディング、そしてファミリーだ。今年もその傾向は変わらないが、随所でよりニッチな層に向けた商品も出てきている。

 例えば、女性層も重要なマーケットのひとつ。OL、女性グループ、母娘旅など、時代とともにさまざまな切り口が生まれてきた女性層に、今年“女子会”というキーワードを使っているのはJALパックだ。対象ホテルの対象ルームに女性のみで3連泊すると、ツインベッドルームを確約するほか、シャンパンやスナック、テディベアといった特典がホテルから用意されるというもの。対象の3ホテルはロイヤル・ハワイアンなど、いずれも女性が憧れるラグジュアリーなホテルがセレクトされており、“特典”に敏感な女性層をくすぐりそうな内容となっている。

 結婚記念日や誕生日など、シルバー世代に提案するメモリアルな旅行は定着してきたが、人生の節目を迎える“退職者”を対象とする商品を発表したのは日本旅行だ。人生のセカンドステージを迎える退職者にねらいを定め、新しい門出を祝う感謝の旅として「退職記念 海外の旅」という独立パンフレットをベストエクセレントのカテゴリーで制作。ヨーロッパは添乗員が同行し、ハワイを含むリゾート地では専用車で案内するのが特徴で、11方面にコースを設定している。

 隣島については、ビッグ・アイランド(ハワイ島)のコナ線が運休となったことで、どの島もオアフ島からアクセスするという意味で条件が同じとなった。これを好機と捉え、今後はマウイ島にも力を入れていきたいとしているのは阪急交通社。シルバー世代にとっても親しみやすいマウイ島を開拓することで、需要拡大をねらっている。内容は、観光を取り入れ、ホテルでくつろぐ時間を考慮する予定だ。

 隣島強化を明確に打ち出しているジャルパックでは、別冊「ハワイアン・アイランズ」を制作し、ハワイ、マウイ、カウアイ、ラナイの4島の商品を網羅する。これまでオリジナル観光「ホクレア」を2ルート設定してハワイ島に力を入れてきた同社だが、今年はマウイ島にアップカントリールート、カウアイ島にノスタルジックタウンとポイプ・ビーチ散策ルートを新設し、隣島全体のサービスを強化している。


今週のハワイ50選
ワイキキ(オアフ島)
ダイヤモンド・ヘッド(オアフ島)
ダウンタウン(オアフ島)
ポイプ・ビーチ(カウアイ島)


取材:竹内加恵