羽田特集:航空券ホールセラーから見る需要動向(2)地方需要取込への施策
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地方需要の取り込みに課題
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一方で、新たな需要創造の機会として期待されていた地方需要の取り込みについては、苦戦が続いている。クロノス・インターナショナル営業部販売課販売推進チーム係長の加本謙吾氏は「地方からの問い合わせは多いが、それが集客にまだ結びついていないのが現状。潜在性はあると思う。米国線が就航すれば、状況が変わってくるかもしれない」と話し、まだ眠っている需要の覚醒に期待を寄せる。NTSの篠原氏も「東北、北海道、九州方面のエージェントに向けて羽田の乗り継ぎメリットをアピールする販売展開を進めるが、期待したほどの効果は上がっていない」と現状を説明し、「まだ羽田の国際線が浸透していないのではないか」と分析する。
地方での認知度不足については、クロノスの加本氏も「羽田国際化は知られているとは思うが、どこの航空会社がどこに何時に飛んでいるのかまではまだ浸透していないように思う」との意見だ。クロノスでは、随時スケジュールなどをエージェントに知らせてはいるものの、集客の増加には結びついていない。羽田国際線の中身の認知が浸透していないことに加えて、早朝発や深夜着の便では同日の国内線への乗り継ぎが不可能という現実的な問題も大きい。また、「地方発では仁川というハブ空港が隣国にある」(ベルツアーズ)と、羽田と仁川のハブ機能の差を指摘する声もある。
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キャンペーンで需要喚起と認知度向上
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クロノスでは、シンガポール航空(SQ)の早朝SQ635便を対象に2010年下期キャンペーンとして、東京23区から羽田空港までのタクシー代、羽田空港駐車場、東横インでの羽田前泊でサポートを行なっている。また、「アメリカン航空(AA)が飛び始めれば、現在のキャンペーンを検証して、新たなキャンペーンを考えていきたい」と意欲的だ。OTAも同じくSQの早朝便で東横インでの前泊無料サービスを提供。また、SQが実施している地方からの団体向けバス代のサポートにも協力している。
一方、NTSでは、昨年1月から開始した発券システム「クリックチケット」に期待をかける。旅行会社が自社で作成したPNRを持ち込み発券できるように改良しており、2月下旬には本格稼働する。篠原氏は、「クリックチケットは24時間発券可能。羽田深夜便での急な出張でも対応ができ、インターネット環境があれば簡単に導入できるため、地方の小さなエージェントにも有効」と話す。システムの使い勝手の改善は羽田便の予約でも効果はありそうだ。このほか、NTSでは、欧米便の就航に合わせて、タクシーチケットや荷物の宅配サポートなどのサービスについて、航空会社側に提案。航空会社も予算的に厳しい側面はあるが、需要喚起に向けたキャンペーンを検討しているところだ。
羽田発タイのパッケージが好調
エーアンドエー、TG羽田便は新しい時間帯の効果大
タイ国際航空(TG)のツアー商品ロイヤル・オーキッド・ホリデ
イズなど、タイを専門に扱うエーアンドエー。営業部長の枝川淳氏
はTGの羽田/バンコク線について、「就航前は供給過多の懸念があ
り、どれだけレジャーのお客様を集客できるのか分からなかったが、
問い合わせも多く好調に推移している」と話す。同路線の使用機材
はエアバスA340-500型機で、エコノミークラスは155席。タイ人のイ
ンバウンド需要も高く、日本発の座席が取りづらい状況で、「グルー
プで固まって取るのが難しい状況」と明かす(2010年12月24日取材
時点)。
羽田便の就航後の特徴としては、発着地をミックスして利用する
旅行者が増えたことを指摘する。「プーケットに行く場合、行きは
直行の成田便を利用し、帰りは羽田」と例を挙げ、利用者にとってはフライトパターンの選
択肢が広がったと評価する。また、TG661便は早朝にバンコクに到着するため、「ゴルフパ
ッケージなど新しい現地の過ごし方を提案できる」と話す。復路のTG660便の羽田着は、日
系2社の翌日早朝着とは異なり同日の午後10時30分で「この時間設定も好まれていると思う。
時間帯が異なるので、価格競争にもならない」とメリットを強調する。今後は、TGの戦略に
も沿って、アッパークラスの取り込みにも力を入れていく考えだ。
集客地域については、圧倒的に東京と神奈川。その地域のリテーラーから見積もりを頼ま
れるとき、「第一希望で羽田、第二希望で成田」というリクエストが増えてきているという。
地方については、「今後、静岡、長野、山梨などに広げていきたい」と話し、「冬期につい
ては仙台や札幌も意識している」と付け加えた。
取材:山田友樹