羽田特集:航空券ホールセラーから見る需要動向(2)地方需要取込への施策
羽田空港の国際化により、消費者の選択肢は広がったことは間違いない。なかでも、日本国内路線の乗り継ぎによる地方からの羽田発海外という需要拡大に期待が寄せられていた。しかし、各社の話を聞くと現時点では神奈川や東京といった首都圏からの利用者がほとんどで、羽田の国際化が地方需要取り込みの起爆剤とはなっていないようだ。ただし今後、米系航空会社が就航し、選択肢が増えることで、新たな需要が生まれることが予想される。ホールセラー各社ではキャンペーンや施策を展開し、地方需要の取り込みに攻勢をかける。
地方需要の取り込みに課題
羽田空港国際化で最も恩恵を受けているのは、そのアクセスのよさから首都圏からの旅行者だろう。各航空会社もまずその利便性を最大のメリットとして、消費者にアピールしている。各社のこれまでの実績からも、その点は明らかなようだ。エヌティーエス(NTS)航空営業部次長の篠原和儀氏は「現状では首都圏の旅行会社の利用が多い」と話し、クロノス・インターナショナル営業部販売課アジア・オセアニアチーム主任の徳山希美氏も「横浜などの旅行会社による羽田便の集客が多い」と明かす。
一方で、新たな需要創造の機会として期待されていた地方需要の取り込みについては、苦戦が続いている。クロノス・インターナショナル営業部販売課販売推進チーム係長の加本謙吾氏は「地方からの問い合わせは多いが、それが集客にまだ結びついていないのが現状。潜在性はあると思う。米国線が就航すれば、状況が変わってくるかもしれない」と話し、まだ眠っている需要の覚醒に期待を寄せる。NTSの篠原氏も「東北、北海道、九州方面のエージェントに向けて羽田の乗り継ぎメリットをアピールする販売展開を進めるが、期待したほどの効果は上がっていない」と現状を説明し、「まだ羽田の国際線が浸透していないのではないか」と分析する。
地方での認知度不足については、クロノスの加本氏も「羽田国際化は知られているとは思うが、どこの航空会社がどこに何時に飛んでいるのかまではまだ浸透していないように思う」との意見だ。クロノスでは、随時スケジュールなどをエージェントに知らせてはいるものの、集客の増加には結びついていない。羽田国際線の中身の認知が浸透していないことに加えて、早朝発や深夜着の便では同日の国内線への乗り継ぎが不可能という現実的な問題も大きい。また、「地方発では仁川というハブ空港が隣国にある」(ベルツアーズ)と、羽田と仁川のハブ機能の差を指摘する声もある。
そうしたなか、羽田便の時間的制約から発着地を変える傾向も出てきているという。NTS航空営業部営業グループチーフの阿部鉱三氏によると、羽田到着が深夜になる便については、帰りを成田にする旅行者も増えきており、「利用者にとっては(羽田国際化によって)選択肢が広がったということだろう」と話す。クロノスの徳山氏も「地方の取り込みにはまだ課題が多いものの、羽田から出て、福岡に帰るというコンビネーションも出てきている」と明かし、これまでとは異なる需要の潜在性を暗示する。また、ダイナスティーホリデーは「東京発(羽田)のパッケージツアーに、地方からの参加者も見られ始めたのは新しい傾向」と回答。外航ながら羽田のハブ化に期待するところは大きい。
キャンペーンで需要喚起と認知度向上
いずれにせよ、各社にとって羽田国際化は近年にない大きなビジネスチャンスには違いなく、キャンペーンや発券システムの向上などで需要喚起の取り組みを進めている。ダイナスティーホリデーでは、ビジネスクラス航空券の一部で地域制限はあるもののタクシークーポンを、ビジネスクラスあるいはエコノミークラス航空券の一部でパーキングチケットを供与している。いずれ早朝チャイナエアライン(CI)の早朝CI223便利用者の居住エリアを広げるのが目的だ。
クロノスでは、シンガポール航空(SQ)の早朝SQ635便を対象に2010年下期キャンペーンとして、東京23区から羽田空港までのタクシー代、羽田空港駐車場、東横インでの羽田前泊でサポートを行なっている。また、「アメリカン航空(AA)が飛び始めれば、現在のキャンペーンを検証して、新たなキャンペーンを考えていきたい」と意欲的だ。OTAも同じくSQの早朝便で東横インでの前泊無料サービスを提供。また、SQが実施している地方からの団体向けバス代のサポートにも協力している。
一方、NTSでは、昨年1月から開始した発券システム「クリックチケット」に期待をかける。旅行会社が自社で作成したPNRを持ち込み発券できるように改良しており、2月下旬には本格稼働する。篠原氏は、「クリックチケットは24時間発券可能。羽田深夜便での急な出張でも対応ができ、インターネット環境があれば簡単に導入できるため、地方の小さなエージェントにも有効」と話す。システムの使い勝手の改善は羽田便の予約でも効果はありそうだ。このほか、NTSでは、欧米便の就航に合わせて、タクシーチケットや荷物の宅配サポートなどのサービスについて、航空会社側に提案。航空会社も予算的に厳しい側面はあるが、需要喚起に向けたキャンペーンを検討しているところだ。
地方需要の取り込みに課題
羽田空港国際化で最も恩恵を受けているのは、そのアクセスのよさから首都圏からの旅行者だろう。各航空会社もまずその利便性を最大のメリットとして、消費者にアピールしている。各社のこれまでの実績からも、その点は明らかなようだ。エヌティーエス(NTS)航空営業部次長の篠原和儀氏は「現状では首都圏の旅行会社の利用が多い」と話し、クロノス・インターナショナル営業部販売課アジア・オセアニアチーム主任の徳山希美氏も「横浜などの旅行会社による羽田便の集客が多い」と明かす。
一方で、新たな需要創造の機会として期待されていた地方需要の取り込みについては、苦戦が続いている。クロノス・インターナショナル営業部販売課販売推進チーム係長の加本謙吾氏は「地方からの問い合わせは多いが、それが集客にまだ結びついていないのが現状。潜在性はあると思う。米国線が就航すれば、状況が変わってくるかもしれない」と話し、まだ眠っている需要の覚醒に期待を寄せる。NTSの篠原氏も「東北、北海道、九州方面のエージェントに向けて羽田の乗り継ぎメリットをアピールする販売展開を進めるが、期待したほどの効果は上がっていない」と現状を説明し、「まだ羽田の国際線が浸透していないのではないか」と分析する。
地方での認知度不足については、クロノスの加本氏も「羽田国際化は知られているとは思うが、どこの航空会社がどこに何時に飛んでいるのかまではまだ浸透していないように思う」との意見だ。クロノスでは、随時スケジュールなどをエージェントに知らせてはいるものの、集客の増加には結びついていない。羽田国際線の中身の認知が浸透していないことに加えて、早朝発や深夜着の便では同日の国内線への乗り継ぎが不可能という現実的な問題も大きい。また、「地方発では仁川というハブ空港が隣国にある」(ベルツアーズ)と、羽田と仁川のハブ機能の差を指摘する声もある。
そうしたなか、羽田便の時間的制約から発着地を変える傾向も出てきているという。NTS航空営業部営業グループチーフの阿部鉱三氏によると、羽田到着が深夜になる便については、帰りを成田にする旅行者も増えきており、「利用者にとっては(羽田国際化によって)選択肢が広がったということだろう」と話す。クロノスの徳山氏も「地方の取り込みにはまだ課題が多いものの、羽田から出て、福岡に帰るというコンビネーションも出てきている」と明かし、これまでとは異なる需要の潜在性を暗示する。また、ダイナスティーホリデーは「東京発(羽田)のパッケージツアーに、地方からの参加者も見られ始めたのは新しい傾向」と回答。外航ながら羽田のハブ化に期待するところは大きい。
キャンペーンで需要喚起と認知度向上
いずれにせよ、各社にとって羽田国際化は近年にない大きなビジネスチャンスには違いなく、キャンペーンや発券システムの向上などで需要喚起の取り組みを進めている。ダイナスティーホリデーでは、ビジネスクラス航空券の一部で地域制限はあるもののタクシークーポンを、ビジネスクラスあるいはエコノミークラス航空券の一部でパーキングチケットを供与している。いずれ早朝チャイナエアライン(CI)の早朝CI223便利用者の居住エリアを広げるのが目的だ。
クロノスでは、シンガポール航空(SQ)の早朝SQ635便を対象に2010年下期キャンペーンとして、東京23区から羽田空港までのタクシー代、羽田空港駐車場、東横インでの羽田前泊でサポートを行なっている。また、「アメリカン航空(AA)が飛び始めれば、現在のキャンペーンを検証して、新たなキャンペーンを考えていきたい」と意欲的だ。OTAも同じくSQの早朝便で東横インでの前泊無料サービスを提供。また、SQが実施している地方からの団体向けバス代のサポートにも協力している。
一方、NTSでは、昨年1月から開始した発券システム「クリックチケット」に期待をかける。旅行会社が自社で作成したPNRを持ち込み発券できるように改良しており、2月下旬には本格稼働する。篠原氏は、「クリックチケットは24時間発券可能。羽田深夜便での急な出張でも対応ができ、インターネット環境があれば簡単に導入できるため、地方の小さなエージェントにも有効」と話す。システムの使い勝手の改善は羽田便の予約でも効果はありそうだ。このほか、NTSでは、欧米便の就航に合わせて、タクシーチケットや荷物の宅配サポートなどのサービスについて、航空会社側に提案。航空会社も予算的に厳しい側面はあるが、需要喚起に向けたキャンペーンを検討しているところだ。
羽田発タイのパッケージが好調
エーアンドエー、TG羽田便は新しい時間帯の効果大
タイ国際航空(TG)のツアー商品ロイヤル・オーキッド・ホリデ
イズなど、タイを専門に扱うエーアンドエー。営業部長の枝川淳氏
はTGの羽田/バンコク線について、「就航前は供給過多の懸念があ
り、どれだけレジャーのお客様を集客できるのか分からなかったが、
問い合わせも多く好調に推移している」と話す。同路線の使用機材
はエアバスA340-500型機で、エコノミークラスは155席。タイ人のイ
ンバウンド需要も高く、日本発の座席が取りづらい状況で、「グルー
プで固まって取るのが難しい状況」と明かす(2010年12月24日取材
時点)。
羽田便の就航後の特徴としては、発着地をミックスして利用する
旅行者が増えたことを指摘する。「プーケットに行く場合、行きは
直行の成田便を利用し、帰りは羽田」と例を挙げ、利用者にとってはフライトパターンの選
択肢が広がったと評価する。また、TG661便は早朝にバンコクに到着するため、「ゴルフパ
ッケージなど新しい現地の過ごし方を提案できる」と話す。復路のTG660便の羽田着は、日
系2社の翌日早朝着とは異なり同日の午後10時30分で「この時間設定も好まれていると思う。
時間帯が異なるので、価格競争にもならない」とメリットを強調する。今後は、TGの戦略に
も沿って、アッパークラスの取り込みにも力を入れていく考えだ。
集客地域については、圧倒的に東京と神奈川。その地域のリテーラーから見積もりを頼ま
れるとき、「第一希望で羽田、第二希望で成田」というリクエストが増えてきているという。
地方については、「今後、静岡、長野、山梨などに広げていきたい」と話し、「冬期につい
ては仙台や札幌も意識している」と付け加えた。
取材:山田友樹