取材ノート:外資系金融のMICEがサプライヤーに求めるもの−MPIセミナー

返事と見積もりはスピード第一
モバイル端末の活用を

山本氏もスピードとフットワークを重視。サプライヤーとの打ち合わせ後、「会社に戻った時には打ち合わせで質問した内容の返事が届いている」状態を最良とする。そのため山本氏自身もメールのチェックは欠かさないが、サプライヤーの営業担当者に対しては、「モバイル端末を持つこと」を推奨。「モバイルでの迅速な返答と、それに加えてフェイス・トゥ・フェイスの営業をしてほしい」と成約へのポイントを明かす。
「分かったつもり」は禁物
双方の意向を再確認

サプライヤーとの間でも、ニーズの再確認が欠かせない。山本氏は、「『前回と同じ』といわれて分かっているつもりでも、お互いの認識が違うケースがあった」と述懐する。また、同じ文面のメールを送っても、受け取る側の解釈は人によってさまざま。山本氏は、メールだけで済ませず「ちょっとしたことでも電話をして確認することも必要」と説き、営業の秘訣として「質問をたくさんする聞き上手」をあげる。質問をすることで、相手のニーズの把握につながるとの考えだ。
サプライヤーとの信頼構築
困難をともに乗り越える関係に

「リスクをとってやってくれるかどうか」は、山本氏も言及する点だ。いいかえれば「問題解決を一緒にしてくれる人」であり、困難を共有して乗り越えたとき、「満足を超えて感動になる。感動になったとき、リピーターになる」という。山本氏は実例として、「参加者におみやげを渡したい」という突然のクライアントの要望に対し、サプライヤーが奔走してくれたおかげで、時間までに予算どおりの品を用意することができて感謝したというエピソードを語った。
井上氏も、リーマンショックなどの苦難の時に支えてくれたサプライヤーとはあつい信頼が生まれると述べ、今後も長期的な関係を保っていきたいとする。また、担当者が有能であることも信用につながる要素。あるホテルで10年以上バンケットに携わる担当者は、主催者側までよく把握しており、「3年前のクライアントでも覚えていて、前回を踏まえた提案をしてくれた」という。
成功を左右する「食」と
現場でのサービス

食事において、旅行会社の奮闘が成功を導いたケースもある。北海道で開催したMICEで、山本氏はウニやカニなど特産物のお料理を参加者に楽しんでもらいたいと提案。ホテル側では前例がなかったが、旅行会社の交渉により、寿司職人を呼んでの握り寿司からジンギスカンまで、持ち込みが実現した。その結果、「メリルリンチでのイベントで初めて、ドアを開けたとたん参加者が走った」ほど大好評だったという。食へのこだわりと、課題に直面した時にあきらめず協力してくれたパートナーシップが成果に表れたといえる。
また、本山氏は現場でのサービスが参加者の印象に残ることに触れ、「海外の人から日本人のサービス担当者を連れて帰りたいといわれ、クオリティの高さを再認識した」と日本のサービスに信頼を寄せる。現場スタッフの裁量が大きいのも日本の仕事の特徴とし、「誰であっても一人に頼むと全員に伝わって動いてくれる」と評価する。
最後に新井氏は、総括して「やはり人が大事」と結び、思い出深いイベントを連携意識によって創出することを呼びかけた。
取材:福田晴子