観光活性化フォーラム
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年頭所感、「新たな一歩」への意気込み多く−大手各社トップ

  • 2011年1月6日
 ジェイティービー(JTB)やエイチ・アイ・エス(HIS)、日本旅行業協会(JATA)など旅行関連各社や業界団体のトップが年頭所感を発表した。今年は、景気や市場環境に不透明感を示しつつ、新たなビジネスモデルの構築をかかげる内容が多い。また、2012年に100周年を迎えるJTB、2010年が30周年であったHIS、同じく2010年に55周年を迎えた近畿日本ツーリスト(KNT)、また、2011年に統合を予定するジャルパックとジャルツアーズなど、「新たな一歩」に向けた意気込みを示したものも目立った。


「仕掛け」で価値創造、自ら需要創りだす
JTB代表取締役社長 田川博己氏


 21世紀の10年間はまさに激動の時代であった。価値観の急速な変化、幾多の危機に直面し、模索を続けた10年といえる。今こそ従来とは異なる発想や活動による「新しい価値の創造」が必要。次の時代にチャレンジする旅行会社として、流通の一手段に終わることなく、自らが需要を創出するため従来と違う仕掛けをおこない、自ら発信し、社会への有用性を示していきたい。

 今年4月からは新しい中期経営計画「JTB New Departure 2011」がスタートする。今までよりもう一段高いレベルのサービスをお客様へ提供するために挑戦をする改革として位置づけている。次の100年へ向けてお客様へ感動と喜びを提供し、「交流文化産業」をグローバルに展開する企業グループへと進化し続ける。



「Innovation」テーマに自ら変化、世界中のお客様の旅に焦点
HIS代表取締役社長 平林朗氏


 創業30周年の節目を越え、2011年は新たな30年の最初の年になる。業界を取り巻く構造や環境は予想を上回るスピードで変化を遂げている。変化にスピーディーに対応するだけでなく、自ら変化することを迫られている。昨年、ハウステンボスを新たにグループに迎え入れたことも我々にとって30年目の大きな変化であり挑戦だった。

 新たな30年のスタートとなる今こそ、グループ全体がこれまでのビジネスモデルを見直し、海外発海外旅行や訪日旅行など、世界中のお客様の旅に目を向けたビジネスへの転換が重要。2011年を「Innovation 改革実行年」と位置づけ、引き続きお客様に喜んでいただける旅の提供を基軸に、次の30年につながる1年にすべく覚悟をもって取り組んでいく。



「強いKNTグループ」復活へ、個人旅行事業改革など取り組み
KNT代表取締役社長 吉川勝久氏


 昨年は、旅行需要も本格的な回復とは言い切れない状況だったが、平城遷都1300年祭、上海万博、バンクーバー冬季オリンピック、FIFAワールドカップ南アフリカ大会と大型イベントが開催され、イベントに強いKNTの力を発揮できた。中期経営計画で見直した販売・費用構造の革新に向けた施策の着実な実行による成果も現れ、計画通りの結果となる見込み。

 中期経営計画での今年度の重点施策は「個人旅行事業の改革」、「中国・アジア事業の拡大」、「スポーツビジネスの拡大」。団体旅行事業部門でも再編を実施している。こうした再編のキーワードは「お客さま都合と効率化」。KNTグループのフィールドは、新しい商品企画新しいサービスの提供だ。今年、我々は次の節目となる創立60周年に向けて新たな一歩を踏み出す。「強いKNTグループ」の復活をめざし、前進していこう。



ビジネスモデル転換を推進、訪日・BTM・オンラインに注力
日本旅行代表取締役社長 丸尾和明氏


 昨年は総じて需要回復傾向にあったが、リーマンショック以前の水準までの回復にはまだ程遠く、引き続き厳しい状況が続いた。こうした環境下、「マーケット変化への的確・迅速な対応」を重点取組みに掲げ、経営資源や取り組みのシフトによって「ビジネスモデルの転換」を推し進めていく。

 我々がこれまで築いてきたビジネスモデルがもはや通用しなくなってきていると言っても過言でない。個人旅行でのインターネット利用拡大や需要多様化、サプライヤーによる直販化、インバウンドの大幅な拡大など、マーケットの構造変化は一過性のものではなく、今後ますます加速していく。この認識のもと、今年はインバウンド営業やBTM営業、インターネット販売を中核としたビジネスモデルへの転換をめざす。



お客様の評価こそ真実、「人づくり」にも傾注へ
阪急交通社代表取締役社長 生井一郎氏


 景気低迷が続く中、日本経済は依然として厳しい状況にある。アイスランドの火山噴火や尖閣諸島問題など厳しい経営環境の中だが、我々が価格競争におちいることなく概ね順調な業績で推移していることは、お客様に支持されている証。お客様からいただく評価こそ真実だ。お客様が本当にほしいサービスは何かを突き詰めて考え、ニーズにあった商品を提供できるように行動してほしい。その積み重ねが「お客様支持率No.1の旅のクリエーター」へ続く道だ。

 今年は、阪急交通社グループ各社間の結束をさらに固め、新たな時代に向かって発展するスタートの年にしたい。そのためには、中期経営計画に定めた重点課題にスピード感を持って対処すること、かつ社員の知恵と情熱と行動が必要。未来を切り開くのは社員一人ひとりの力。会社としてもこれまで以上に人づくりに重点を置き、社員一人ひとりが働きがいを感じ、誇りに思う会社をめざし、全力を傾ける。



2011年は「第2の創業」、チームプレイ精神が結果につながる
ジャルパック、ジャルツアーズ代表取締役社長 大西誠氏


 今年はジャルパックとジャルツアーズにとって第2の創業とでもいうべき年。苦しい状況の中でも何としてでも次にたすきを繋ぐ「one for all」のチームプレイの精神で、社員一人ひとりが自分の役割、仕事を全力で全うしよう。そうすれば、時間を経て必ず結果につながる。

 統合を機に、自分たちが新しい会社の歴史を創るという気概を持って仕事をしていこう。お互いに元気に挨拶を交わし、明るく楽しく活気が溢れ、人を思いやりながら自分に厳しい、そんな社風を創り、トップをめざして全力を尽くそう。



「戦国時代」乗り切るためにグループ全体を総点検
全日空(NH)グループCEO 伊東信一郎氏


 昨年は、新ブランド戦略「Inspiration of Japan」の開始など新生ANAのスタートをきった年。しかし、今後の見通しは円高や景気の影響、中国問題など予断を許さない。オープンスカイが進む中、攻勢をかけてくるアジアの航空会社やLCC、高いコスト競争力を持って復活してくる日本航空(JL)、A380導入を決めたスカイマーク、新幹線との競争など、まさに我々は「戦国時代」に突入しようとしている。

 こうした環境下で、2011年はこれからの戦国時代を乗り切るための「総点検の年」にしたい。グローバルな視点から「競争に勝ち、将来を乗り切る力があるのか」についてグループ全体を点検し、生き抜くためにやるべき事を真剣に考え実行する。不足があればスピード感をもって変える。こういう年にしていきたい。「アジアを代表する航空企業グループになる」という目標のもと、過去様々な課題を乗り越えてきた。全員があと一歩、勇気を持って壁を乗り越えれば、そのゴールが見渡せるところまで来ている。



「一般社団」移行で需要喚起強化
JATA会長 金井耿氏


 今年はJATAが一般社団法人として新たなスタートを切る節目の年。これを契機に、会員の共通利益となる事業を強化し、観光立国推進に向けて改めて「民」の立場から観光庁とも協働し、一層の需要喚起に努めていく。アウトバウンドについては、第1期の3年間を終えたビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)の新たな展開をはかり、2000万人達成の早期実現に努める。国内旅行は「もう一泊、もう一度」のさらなる浸透により年間宿泊数の増加をはかる。

 今年は大きなイベントが予定されていないが、こんな時にこそ、我々の需要創出の力が試される。旅行会社がお客さまからより一層支持される環境づくりに邁進していきたい。