現地レポート:豪・NSW州−訴求力の高い観光素材、対象市場の可能性
都市と大自然、グルメ、パワースポットなど多様な観光素材
対象客層も幅広く、NSW州の新たな可能性を探る
今年9月にオーストラリアのゴールドコーストで開催されたJAM(ジャパン・オーストラリア・ミッション、日本の旅行会社向け商談会)のポストツアーで、ニュー・サウス・ウェールズ州(NSW州)を訪れた。南部はシドニーをゲートウェイとして、北部はクイーンズランド州(QLD州)のゴールドコーストを拠点として、いずれも日本から直行便が飛んでいるため、オーストラリアのなかでも商品化しやすいデスティネーションだ。南部と北部とではそれぞれ魅力が異なり、楽しみ方も違う。ハネムーンからシニア、FITからパッケージ商品まで、対象客層やマーケットも幅広い。
NSW州北部、パワースポットでオーガニック体験
NSW州北部のQLD州との州境に広がる大地は、マウント・ウォーニングの噴火によって形成されたカルデラ地帯。肥沃な土地であると同時に、オーストラリア国内では「気」が集まるパワースポットとしても有名だ。気候も1年を通じて温暖で、国内外から観光客も多く集まる。
ポストツアーでまず訪れたのが、肥沃な土地を象徴する場所「トロピカル・フルーツ・ワールド」。マカダミアナッツなどなじみ深いものからチョコレートフルーツといった日本ではめったに見られないものまで、500種類以上の果樹が栽培されている。広大な土地をトラムで巡るツアーは2時間ほどかかる。途中、ガイドによる解説や試食もあり、同行した旅行会社のスタッフから「修学旅行や研修旅行にぴったり」という声が聞かれたように、グループ旅行には最適な場所だ。
また、オーガニック食材を扱うショップやレストランが多いのもこの地方の特徴だ。なかでも、マウント・ウォーニングの麓にある「マービス・キッチン」では、自家栽培したハーブ類や野菜を使った料理が楽しめる。もちろん、すべて有機栽培。地元でも人気のレストランで、特にランチは自然のなかで体にやさしい食事をゆっくりと楽しむ人たちで賑わっている。
同じく、マウント・ウォーニングの麓の町チリナムの街道沿いにある小さなショップ「チリナム・ブッシュ・タッカー」も興味深い場所だ。ブッシュ・タッカーとは自然に採取されたものを意味し、ここでもさまざまな有機食材が手に入る。なかでも、中に詰まった粒々が口の中で弾け、さわやかな酸味が口いっぱいに広がるフィンガーライムは人気で、シドニーの名店「Tetsuya’s」など多くの有名シェフに使われている。
ゴールドコーストをゲートウェイに、容易にアクセス
カルデラ地帯の南、太平洋に面したバイロンベイはオージーに人気の街。「いつかはバイロンベイに住みたい」という人も多く、一度住んだら他のところには住めなくなるといわれている場所だ。白浜のビーチに面した街は小さいながらも、アートギャラリーやスタイリッシュなレストランやカフェなどが並び、サーフィンのメッカとしても知られている。街から10分ほどのケープ・バイロンは、オーストラリア大陸最東端。この半島をぐるりと巡るカヤックツアーも人気だという。
一方、パワースポットとしてヒーリングを求める人たちに選ばれているのが「ガイア・リトリート」。バイロンベイの内陸の、「気」が集まるといわれている高原にある宿泊施設だ。世界的な歌手のオリビア・ニュートン・ジョンが共同オーナーを務めていることでも知られている。リトリートとは避難所という意味で、単なるリゾートでもホテルでもない、癒しの環境を提供するヒーリング・アコモデーションというのがコンセプト。瞑想、ヨガなどのプログラムもあるが、基本は個人でリラックスすること。施設側では個人の要望に応じたサービスの提供を心がけている。宿泊者の7割が女性で、1人で訪れる女性も多いという。
NSW州政府観光局日本局長の金平京子氏は、バイロンベイを中心としたNSW州北部について、「パワースポットという視点を伝えていきたい。癒しを求める女性やハネムーナーに対して訴求力が高い」と語る。日本からの直行便が飛ぶゴールドコーストをゲートウェイとすれば、アクセスも容易な場所。今後は、ゴールドコーストを拠点としたツアーも含め、QLD州観光局との協力も模索していくと意欲的だ。
NSW州南部、シドニーから気軽に世界自然遺産
オーストラリアに11ヶ所ある世界自然遺産。そのなかのひとつが、シドニーから車まで2時間半ほどで行けるブルーマウンテンズだ。ユーカリに含まれる油が空気中に気化し、そこに光が反射して青みがかって見えることからその名がついた。世界遺産に登録された理由は、そのユーカリの種類が多様なことと、すでに化石しか残っていないと考えられていた中生代ジュラ紀の裸子植物ウォレマイパインが発見されたことによる。現在では、種を絶やさないために種子が売られ、栽培している人も多いが、オリジナルのウォレマイパインのありかは秘匿されている。
ブルーマウンテンズ観光のハイライトのひとつ「シーニック・ワールド」にも立ち寄った。アイコン的存在のスリーシスターズやエアーズロックと同じ大きさを誇るマウント・ソリタリーなどの絶景を、レイルウェイやケーブルカーに乗って楽しめるほか、ハイキングコースも整備され、世界遺産の大自然をあますことなく体感できるようになっている。周辺には老舗ホテルからB&Bまで宿泊施設が豊富にそろい、パッケージからFITまで幅広いマーケットに対応。シドニーから日帰りで訪れることは可能だが、「ここに宿泊して、夕方や朝の風景も楽しんでほしい」と、金平氏はすすめる。
モノデスとしてのシドニーの可能性
シドニーでは「ブリッジ・クライム」を体験してみた。登るのはポート・ジャクソン湾にかかるハーバー・ブリッジ。1932年に完成した美しいアーチ橋だ。グループ全員、同じつなぎに着替えて、注意事項などのブリーフィングを受けたのち、およそ2時間のエクスプレスコースに出発。橋の欄干をたどりながら登るが、足下が格子状の鉄板のところもあり、足がすくむ。無線機を通してクライムリーダーから橋の歴史に関する解説を受けながら、登っていくとやがて頂上に到着。海面からは134メートルの高さだ。360度のパノラマが広がり、眼下にはオペラハウス。シドニーの街を独り占めした感覚が心地いい。
オーストラリア最大の都市シドニーだが、ボンダイやマンリーなど魅力的なビーチもあり、周辺には洗練されたレストランやカフェも多い。都市のなかにこれほどビーチが散在するところは世界でも珍しく、都市観光として訴求力の高い素材はそろっている。シドニーのモノデスとして魅力的な商品造成が可能で、そのためにもこれまで以上に積極的な情報発信と情報収集が、現地側と造成側双方に求められそうだ。
対象客層も幅広く、NSW州の新たな可能性を探る
今年9月にオーストラリアのゴールドコーストで開催されたJAM(ジャパン・オーストラリア・ミッション、日本の旅行会社向け商談会)のポストツアーで、ニュー・サウス・ウェールズ州(NSW州)を訪れた。南部はシドニーをゲートウェイとして、北部はクイーンズランド州(QLD州)のゴールドコーストを拠点として、いずれも日本から直行便が飛んでいるため、オーストラリアのなかでも商品化しやすいデスティネーションだ。南部と北部とではそれぞれ魅力が異なり、楽しみ方も違う。ハネムーンからシニア、FITからパッケージ商品まで、対象客層やマーケットも幅広い。
NSW州北部、パワースポットでオーガニック体験
NSW州北部のQLD州との州境に広がる大地は、マウント・ウォーニングの噴火によって形成されたカルデラ地帯。肥沃な土地であると同時に、オーストラリア国内では「気」が集まるパワースポットとしても有名だ。気候も1年を通じて温暖で、国内外から観光客も多く集まる。
ポストツアーでまず訪れたのが、肥沃な土地を象徴する場所「トロピカル・フルーツ・ワールド」。マカダミアナッツなどなじみ深いものからチョコレートフルーツといった日本ではめったに見られないものまで、500種類以上の果樹が栽培されている。広大な土地をトラムで巡るツアーは2時間ほどかかる。途中、ガイドによる解説や試食もあり、同行した旅行会社のスタッフから「修学旅行や研修旅行にぴったり」という声が聞かれたように、グループ旅行には最適な場所だ。
また、オーガニック食材を扱うショップやレストランが多いのもこの地方の特徴だ。なかでも、マウント・ウォーニングの麓にある「マービス・キッチン」では、自家栽培したハーブ類や野菜を使った料理が楽しめる。もちろん、すべて有機栽培。地元でも人気のレストランで、特にランチは自然のなかで体にやさしい食事をゆっくりと楽しむ人たちで賑わっている。
同じく、マウント・ウォーニングの麓の町チリナムの街道沿いにある小さなショップ「チリナム・ブッシュ・タッカー」も興味深い場所だ。ブッシュ・タッカーとは自然に採取されたものを意味し、ここでもさまざまな有機食材が手に入る。なかでも、中に詰まった粒々が口の中で弾け、さわやかな酸味が口いっぱいに広がるフィンガーライムは人気で、シドニーの名店「Tetsuya’s」など多くの有名シェフに使われている。
ゴールドコーストをゲートウェイに、容易にアクセス
カルデラ地帯の南、太平洋に面したバイロンベイはオージーに人気の街。「いつかはバイロンベイに住みたい」という人も多く、一度住んだら他のところには住めなくなるといわれている場所だ。白浜のビーチに面した街は小さいながらも、アートギャラリーやスタイリッシュなレストランやカフェなどが並び、サーフィンのメッカとしても知られている。街から10分ほどのケープ・バイロンは、オーストラリア大陸最東端。この半島をぐるりと巡るカヤックツアーも人気だという。
一方、パワースポットとしてヒーリングを求める人たちに選ばれているのが「ガイア・リトリート」。バイロンベイの内陸の、「気」が集まるといわれている高原にある宿泊施設だ。世界的な歌手のオリビア・ニュートン・ジョンが共同オーナーを務めていることでも知られている。リトリートとは避難所という意味で、単なるリゾートでもホテルでもない、癒しの環境を提供するヒーリング・アコモデーションというのがコンセプト。瞑想、ヨガなどのプログラムもあるが、基本は個人でリラックスすること。施設側では個人の要望に応じたサービスの提供を心がけている。宿泊者の7割が女性で、1人で訪れる女性も多いという。
NSW州政府観光局日本局長の金平京子氏は、バイロンベイを中心としたNSW州北部について、「パワースポットという視点を伝えていきたい。癒しを求める女性やハネムーナーに対して訴求力が高い」と語る。日本からの直行便が飛ぶゴールドコーストをゲートウェイとすれば、アクセスも容易な場所。今後は、ゴールドコーストを拠点としたツアーも含め、QLD州観光局との協力も模索していくと意欲的だ。
NSW州南部、シドニーから気軽に世界自然遺産
オーストラリアに11ヶ所ある世界自然遺産。そのなかのひとつが、シドニーから車まで2時間半ほどで行けるブルーマウンテンズだ。ユーカリに含まれる油が空気中に気化し、そこに光が反射して青みがかって見えることからその名がついた。世界遺産に登録された理由は、そのユーカリの種類が多様なことと、すでに化石しか残っていないと考えられていた中生代ジュラ紀の裸子植物ウォレマイパインが発見されたことによる。現在では、種を絶やさないために種子が売られ、栽培している人も多いが、オリジナルのウォレマイパインのありかは秘匿されている。
ブルーマウンテンズ観光のハイライトのひとつ「シーニック・ワールド」にも立ち寄った。アイコン的存在のスリーシスターズやエアーズロックと同じ大きさを誇るマウント・ソリタリーなどの絶景を、レイルウェイやケーブルカーに乗って楽しめるほか、ハイキングコースも整備され、世界遺産の大自然をあますことなく体感できるようになっている。周辺には老舗ホテルからB&Bまで宿泊施設が豊富にそろい、パッケージからFITまで幅広いマーケットに対応。シドニーから日帰りで訪れることは可能だが、「ここに宿泊して、夕方や朝の風景も楽しんでほしい」と、金平氏はすすめる。
モノデスとしてのシドニーの可能性
シドニーでは「ブリッジ・クライム」を体験してみた。登るのはポート・ジャクソン湾にかかるハーバー・ブリッジ。1932年に完成した美しいアーチ橋だ。グループ全員、同じつなぎに着替えて、注意事項などのブリーフィングを受けたのち、およそ2時間のエクスプレスコースに出発。橋の欄干をたどりながら登るが、足下が格子状の鉄板のところもあり、足がすくむ。無線機を通してクライムリーダーから橋の歴史に関する解説を受けながら、登っていくとやがて頂上に到着。海面からは134メートルの高さだ。360度のパノラマが広がり、眼下にはオペラハウス。シドニーの街を独り占めした感覚が心地いい。
オーストラリア最大の都市シドニーだが、ボンダイやマンリーなど魅力的なビーチもあり、周辺には洗練されたレストランやカフェも多い。都市のなかにこれほどビーチが散在するところは世界でも珍しく、都市観光として訴求力の高い素材はそろっている。シドニーのモノデスとして魅力的な商品造成が可能で、そのためにもこれまで以上に積極的な情報発信と情報収集が、現地側と造成側双方に求められそうだ。
極上のホテルライフ、富裕層にアピール度大
NSW州では、大自然をいかした大人向けのリゾ
ートでの滞在も可能だ。例えば、ブルーマウン
テンズ世界遺産エリアの奥、ガーデン・オブ・
ストーン国立公園の麓ウォルガン・バレーに広
がる「ウォルガン・バレー・リゾート&スパ」。
エミレーツ・ホテル&リゾーツが運営する超高
級リゾートだ。周囲を大自然に囲まれ、このリ
ゾートのほかには何もなく、世間から完全に隔
絶された特別な時間と空間が流れる。
部屋は独立したコテージタイプ。すべてスイ
ートで、標準タイプのヘリテージ・スイートが
36部屋、ファミリーやハネムーナーに最適なウ
ォレマイ・スイートが3部屋。このほか最も広い
部屋となるウォルガン・スイートが1部屋ある。
携帯電話もつながらない陸の孤島だが、シドニ
ーからは車で約3時間という近さ。アクティビテ
ィやスパなども充実している。日本での認知度
はまだまだだが、ジャルパックやエイチ・アイ
・エスでも商品化し、送客実績があるという。
ラグジュアリーに自分たちだけの時間を過ごし
たいカップルやハネムーナーにはぴったりのリ
ゾートだ。
また、バイロンベイの街の中心から15分ほど
離れた場所にある大人の隠れ家的リゾート「バ
イロン・アット・バイロン・リゾート&スパ」
も注目のリゾートだ。広いプロパティにはエコ
・フレンドリーというコンセプトのもと、見ご
とに周辺の自然と調和したスイートルームが点
在する。各部屋にはキッチンも付いているので
長期滞在も可能。プライベートアクセスのビー
チも近く、プール、スパ、ジムなどリゾートに
は欠かせない施設も整う。プライベート感たっ
ぷりなので特にハネムーナーにおすすめ。ゴー
ルドコースト空港からのアクセスも容易だ。
取材協力:オーストラリア政府観光局、ニュー・サウス・ウェールズ州政府観光局
取材:山田友樹