旅行の「質」向上には協力必要、JATA観光会議で議論−4つのWIN実現を

 日本旅行業協会(JATA)が9月23日に開催した国際観光会議で、「ツーリズム新時代−更なる旅の質を問う−」をテーマにパネルディスカッションが実施された。ファシリテーターのジェイティービー(JTB)国際部長の古澤徹氏と内外の旅行業界関係者がパネリストとして登壇。古澤氏は総括として、「旅の質の向上は必要不可欠」と強調。その上で、その実現には「旅行者、旅行会社、サプライヤー、デスティネーション、4つのWINの関係が重要」とし、関係者が協力して取り組むべきと訴えた。

 パネリストにはJTBワールドバケーションズ常務執行役員の藤本幸男氏、ワールド航空サービス専務取締役の松本佳晴氏、文芸春秋クレア・トラベラー編集長の石橋俊澄氏、ドイツ観光局アジア・オーストラリア地区統括局長のペーター・ブルーメンシュテンゲル氏、英国の旅行会社であるトラファルガーツアーズ・アジア社長のフェネラ・ビショップ氏が登壇した。

 ディスカッションの冒頭、藤本氏はルックJTBの16年ぶりの商品革新について説明。商品革新は、低価格競争とそれによる収益力や品質、企画力の低下という負の連鎖への危機感から始まったといい、旅行者の不満点の改善に取り組んだことを紹介。この結果、利益率や催行率の向上につながったという。また、松本氏は、こうした品質面での取り組みに加え、「まず一つのテーマがあって、そのテーマにあわせたディテールへのこだわり」が重要とした。

 一方、ビショップ氏は契約ホテルや添乗員などの質を厳しく管理する組織的な取り組みを紹介。ブルーメンシュテンゲル氏は、政府としてインフラなどの改善に多額を投資を継続しており、それが旅行の質の向上に取り組んでいるとした。さらに石橋氏は、ホテル取材の経験から、質はハードとソフトのいずれかで決まるものではないと指摘した。

 ディスカッションではこのほか、旅行の質を向上する方法やそれによって得られる効果、商習慣、社会的意義などについて議論。古澤氏は、それらを踏まえ、旅行の質の向上が旅行者、旅行会社、サプライヤー、デスティネーションすべての持続可能性につながると言及。その上で、「旅の持つエネルギーや力で社会に貢献していける」とし、「旅行産業に関わる様々な人々が、ツーリズムの新時代に向けて互いに知恵を絞り、今日議論した内容を常に心におき、今後協力し合っていくことが求められている」と語った。