日本航空、更生計画案を提出−1.6万人削減も旅行子会社は「戦略的に必要」
日本航空(JL)と日本航空インターナショナル(JLI)、ジャルキャピタル(JLC)の3社は8月31日、東京地方裁判所に更生計画案を提出した。機材計画の効率化と不採算路線の撤退による赤字路線の全廃などの事業計画を盛り込んだ。同日会見したJL会長の稲盛和夫氏は、「株主、金融機関の方に大変なご迷惑をおかけした。本日がJLの再生のスタート」とし、「今後は事業計画にのっとって、着実に、それ以上の数字が出るように努力していかなければならない」と挨拶。その上で、「この更生計画が絵に描いた餅にならないよう、必死で推進していく」と強調した。
事業計画では、赤字路線の全廃のほか、コスト構造の変革、航空運送事業への経営資源の集中、人員削減、路線の収益力強化、組織改革、金融危機や新型インフルエンザなどの外的リスクへの耐性強化に取り組み、計画初年度である2010年度からの営業黒字化と債務超過脱却による早期再生をめざす。
▽機材、路線、アライアンス
機材関連は、ボーイングB747-400型機など合計103機を退役し、リージョナル路線用の機材を除いて運航機種数を7機種から4機種に削減。一方で、小型機のB737-800型機やエンブラエルE170型機、そして将来的な国際線の戦略機材であるB787型機の導入を進める。機材の減少によりチャーターで使用可能な機材が少なくなるものの、機材の効率的な運用のためにチャーターは今後も継続したいという。
路線計画は、12年度末に国際線65路線(09年度末・75路線)、国内線109路線(同・148路線)とする当初案から変更ない。国内線は採算確保を前提に多頻度・小型化を進め、一定レベルの路線網を維持。国際線は欧米の主要拠点と、成長が見込めるアジア路線を中心に構成し、顧客ニーズに応えるとともに、アライアンス内での戦略的役割を確立する。一方、リゾート路線については、収益力があり、かつ顧客ニーズの高いホノルルとグアム路線に特化する。なお、路線撤退はすでに進めてきており、10年度下期には追加の休減便は予定していない。
アライアンスについては、パートナー航空会社の顧客や経営ノウハウ、設備、ITシステムなどの資産を積極的に活用。また、アメリカン航空(AA)との独占禁止法適用除外(ATI)の認可を取得して共同事業の準備を進めるほか、AAのノウハウ取得やその他の航空会社との2社間提携強化をはかる。
▽組織改革、人員削減、LCC
組織面では、11月30日の更生計画認可を想定し、12月1日に3社がJLIを存続会社として合併。JLIは企業再生支援機構から3500億円の出資を受け、株式を発行。さらにJALウェイズ(JO)と経理子会社のジャルリーブルを吸収合併する。その後、2011年4月1日に、社名を「日本航空株式会社」に変更する計画だ。子会社の売却などの事業再編により、経営資源の航空運送事業への集中をはかるが、旅行事業を担うジャルパックやジャルツアーズについては「戦略的に必要」との認識から存続する。
LCCの設立についてJL社長の大西賢氏は、「利便性が高く、高品質なサービスを提供する航空会社として、まずは更生計画を着実に実行していく」ことが主眼と説明。ただし、「変化する環境に対して、JLグループとしてどう対応していくのかは研究すべき」とし、日本版LCCの設立の検討も進めるとした。
また、路線別収支の責任を負う部門を新設するなどし、グループ全体で損益責任を明確化。また、空港の運営コストや不動産賃料の削減、人員削減、賃金や福利厚生制度の改定なども取り組む。人員は、2009年度末で4万8714人のグループ社員を、2010年度末で約3万2600人まで削減。すでに特別早期退職や子会社の売却などで約8000人の退職がほぼ確定しており、今後追加の退職募集や自然減で残りの約8000人の削減をめざす。
▽財務目標、再上場
更生計画の財務目標は、初年度である2010年度に債務超過を解消し、営業収益1兆3250億円、営業利益641億円をめざす。現在のところは目標を上回る数値で推移しているといい、最終年度の2012年度には営業収益1兆2733億円、営業利益1175億円の達成をめざす考えだ。この前提となる旅客数は、国際線と国内線の合計で2009年度が約4790万人であるのに対し、2012年度は3994万人を想定。営業経費は、人件費などの削減により2009年度の1兆6286億円から2012年度は1兆1558億円に抑えることをめざす。
企業再生支援機構は、支援期間である3年の間に3500億円を回収する必要があるが、同機構企業再生支援委員長の瀬戸英雄氏は、そのための方法の一つとして再上場も検討していると説明。上場する場合のスケジュールについては、「12年3月頃にはある程度の準備に取りかからなければいけない」とした。ただし、「上場が困難である場合には、株式をどこかに引き受けてもらわなければいけない」とし、「3年間で、みんなが投資したいという会社にするのが先決」と語った。
※訂正案内(2010年9月3日 15時00分)
訂正箇所:「▽機材、路線、アライアンス」第2パラグラフ最終文
誤:9年度下期には追加の休減便は予定していない
↓
正:10年度下期には追加の休減便は予定していない
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▽機材、路線、アライアンス
機材関連は、ボーイングB747-400型機など合計103機を退役し、リージョナル路線用の機材を除いて運航機種数を7機種から4機種に削減。一方で、小型機のB737-800型機やエンブラエルE170型機、そして将来的な国際線の戦略機材であるB787型機の導入を進める。機材の減少によりチャーターで使用可能な機材が少なくなるものの、機材の効率的な運用のためにチャーターは今後も継続したいという。
路線計画は、12年度末に国際線65路線(09年度末・75路線)、国内線109路線(同・148路線)とする当初案から変更ない。国内線は採算確保を前提に多頻度・小型化を進め、一定レベルの路線網を維持。国際線は欧米の主要拠点と、成長が見込めるアジア路線を中心に構成し、顧客ニーズに応えるとともに、アライアンス内での戦略的役割を確立する。一方、リゾート路線については、収益力があり、かつ顧客ニーズの高いホノルルとグアム路線に特化する。なお、路線撤退はすでに進めてきており、10年度下期には追加の休減便は予定していない。
アライアンスについては、パートナー航空会社の顧客や経営ノウハウ、設備、ITシステムなどの資産を積極的に活用。また、アメリカン航空(AA)との独占禁止法適用除外(ATI)の認可を取得して共同事業の準備を進めるほか、AAのノウハウ取得やその他の航空会社との2社間提携強化をはかる。
▽組織改革、人員削減、LCC
組織面では、11月30日の更生計画認可を想定し、12月1日に3社がJLIを存続会社として合併。JLIは企業再生支援機構から3500億円の出資を受け、株式を発行。さらにJALウェイズ(JO)と経理子会社のジャルリーブルを吸収合併する。その後、2011年4月1日に、社名を「日本航空株式会社」に変更する計画だ。子会社の売却などの事業再編により、経営資源の航空運送事業への集中をはかるが、旅行事業を担うジャルパックやジャルツアーズについては「戦略的に必要」との認識から存続する。
LCCの設立についてJL社長の大西賢氏は、「利便性が高く、高品質なサービスを提供する航空会社として、まずは更生計画を着実に実行していく」ことが主眼と説明。ただし、「変化する環境に対して、JLグループとしてどう対応していくのかは研究すべき」とし、日本版LCCの設立の検討も進めるとした。
また、路線別収支の責任を負う部門を新設するなどし、グループ全体で損益責任を明確化。また、空港の運営コストや不動産賃料の削減、人員削減、賃金や福利厚生制度の改定なども取り組む。人員は、2009年度末で4万8714人のグループ社員を、2010年度末で約3万2600人まで削減。すでに特別早期退職や子会社の売却などで約8000人の退職がほぼ確定しており、今後追加の退職募集や自然減で残りの約8000人の削減をめざす。
▽財務目標、再上場
更生計画の財務目標は、初年度である2010年度に債務超過を解消し、営業収益1兆3250億円、営業利益641億円をめざす。現在のところは目標を上回る数値で推移しているといい、最終年度の2012年度には営業収益1兆2733億円、営業利益1175億円の達成をめざす考えだ。この前提となる旅客数は、国際線と国内線の合計で2009年度が約4790万人であるのに対し、2012年度は3994万人を想定。営業経費は、人件費などの削減により2009年度の1兆6286億円から2012年度は1兆1558億円に抑えることをめざす。
企業再生支援機構は、支援期間である3年の間に3500億円を回収する必要があるが、同機構企業再生支援委員長の瀬戸英雄氏は、そのための方法の一つとして再上場も検討していると説明。上場する場合のスケジュールについては、「12年3月頃にはある程度の準備に取りかからなければいけない」とした。ただし、「上場が困難である場合には、株式をどこかに引き受けてもらわなければいけない」とし、「3年間で、みんなが投資したいという会社にするのが先決」と語った。
※訂正案内(2010年9月3日 15時00分)
訂正箇所:「▽機材、路線、アライアンス」第2パラグラフ最終文
誤:9年度下期には追加の休減便は予定していない
↓
正:10年度下期には追加の休減便は予定していない
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