09年度は旅行会社の7割が減収、中堅は増収多く−帝国データバンク調査

  • 2010年7月30日
 帝国データバンク(TDB)がこのほど明らかにした旅行会社の経営実態調査によると、2009年度に減収となった旅行会社は約7割を占めた。景気低迷による消費者の節約志向から、「安・近・短」のデスティネーションを選ぶ傾向が多く見られた。一方で、ヨーロッパなど長距離方面が減少し、旅行単価が下落したことで減収となった企業が増えたようだ。同調査は、2010年6月末時点の企業概要データベースから、09年度の収入高50億円以上の旅行会社を選び調査、分析したもの。

 また、主要125社の09年度収入高(売上高)総額は前年比5.9%減の4兆9699億3800万円で、燃油サーチャージ額廃止やシルバーウィークなどにより旅行需要の高まりが期待されたものの、年間を通じて個人消費が低迷し、新型インフルエンザの発生や法人需要の落ち込みなども重なって収入高は伸び悩んだ。減収となった旅行会社は125社中68.8%にあたる86社で、規模別でみると収入高の上位企業は減収が多く、中堅企業は増収が多くなった。増収した中堅企業のなかには、国内旅行や韓国、アジアなど近場エリアをメインに取り扱う旅行会社や、高速バスを取り扱う旅行会社などが多かったという。

 TDBでは、2010年度の旅行業界は回復傾向にあるとし、成田空港の発着枠拡大や上海万博開催、FIFAワールドカップ開催などの影響で、とりわけ海外旅行の取扱高が増加していると指摘。また、中国個人観光ビザの要件緩和による訪日外客数増加や羽田空港の国際化なども追い風になると見込む。ただし、シルバーウィークがないことや燃油サーチャージ額の値上げもあって安・近・短の傾向は続くとの分析で、旅行単価が08年のリーマンショック前の水準に戻るには一定の時間がかかるとし、旅行会社の業績回復は小幅にとどまるとの見通しを示した。


▽09年度の倒産件数は過去5年間で最大に

 09年度の旅行会社の倒産件数は過去5年間で最多となる52件であった。原因としては、販売不振や業界不振による「不況型倒産」が多かった。景気低迷により旅行需要が低迷するなかで、薄利多売の価格競争激化により資金繰りが厳しくなった企業が増えたようだ。また、航空会社によりゼロコミッションの本格化が収益悪化につながったケースも見られたという。