インタビュー:JATA海外旅行業務部チャーターコーディネーター 引田潤造氏
チャーター便利用促進へより多くの情報共有を
リスク分散へルール見直しの働きかけも
地方発着路線を中心に定期便の減便や運休、機材の小型化などが続き、航空座席の供給数が減少するなか、打開策としてチャーター便への注目が高まりつつある。2008年末には国土交通省が包括旅行(ITC)チャーター規制を大幅に緩和した。この流れのなか、日本旅行業協会(JATA)は、チャーター便の利用促進をめざして「チャーターコーディネーター」を設置した。チャーターコーディネーターの役割とは何か、6月7日付けで海外旅行業務部チャーターコーディネーターに就任した引田潤造氏に聞いた。(聞き手:本誌 秦野絵里香)
−チャーターコーディネーターの機能や業務内容についてお聞かせください
引田潤造氏(以下、敬称略) 就任して約1ヶ月半。期待を感じる一方で、チャーター便の利用には様々な課題もあり、簡単ではないと改めて実感している。私は、チャーターコーディネーターとは情報伝達機能を持った相談役だと考えている。旅行会社、航空会社やサプライヤー、空港や観光局や行政。大きくわけて3つのグループのトライアングルをつなぐパイプ役として、スムーズな情報伝達をする方法を確立することが使命だ。
それぞれのニーズや課題を知るため、旅行会社や航空会社、地方空港などと意見交換を実施してきた。残念ながら、まだチャーター便の実現を報告できる段階ではないが、旅行会社や地方の議員などから、具体的なチャーター便の設定に向けて相談を受けるなど、期待されていると感じている。まずはチャーター便の実施に積極的な旅行会社や地方の行政とともに、成功事例をつくりたい。
−チャーターの利用促進のため、具体的にどのように取り組んでいかれるのでしょうか
引田 第1のステップとして、JATAのウェブサイト上にチャーター関連情報を掲出する専用のコーナーを設置する。チャーター便の設定に前向きな旅行会社や航空会社、政府観光局、地方自治体、空港会社、業界団体などの情報を集約し、共有することが目的だ。これまで分散していた情報を集約し、わかりやすく発信することで、JATA会員の旅行会社に活用してもらいたい。また、現在販売しているチャーター便利用商品の情報を掲出したいと考えている。そこから観光局や旅行会社へリンクを貼ることで、販売機会の提供にもつながり、リスクの軽減につなげたい。
最新情報を発信するにはスピードも大切だ。すべての情報が出揃ってから整えて掲出するより、暫定的にでもまずはスタートさせる。遅くても2010年8月中には、専用コーナーをオープンしたい。
旅行会社からは、売れ残った仕入座席を転売したいとか、ユニット卸しをしたいなどの意見もあがっている。第2のステップは、旅行会社のニーズに応えていくことだ。現在のところ、チャーターのリスクは旅行会社だけにかかってしまうので、間口を広げてリスクを分散する方法を考えていきたい。また、チャーターのニーズのある地方を訪問し、現状の問題点や障壁について調査する。チャーターコーディネーターに就任してから1年後にあたる2011年6月までには、何らかのかたちにしたいと考えている。
−旅行会社にとってチャーターは魅力ある素材ですが、リスクが高いというのが本音です。リスク軽減のため何が必要でしょうか
引田 ルールの見直しは是非検討したい。2008年末にチャーター便の規制が緩和された後も、リーマンショック後の景気低迷や新型インフルエンザなどの影響もあり思うように設定本数が伸びていない。卵が先か鶏が先かになってしまい困難とは思うが、現行の法制度の中で改善点を模索していくとともに、規制緩和の可能性も探っていく。
また、もちろんルールの見直しが前提になるが、たとえばJATA会員専用サイトを通じて売れ残り席の転売システムを構築するなど、旅行会社のリスクを軽減する方法も考えられる。
−日本航空(JL)が大型機材を退役させる結果として、外国航空会社を活用する必要性が増す可能性がありますね
引田 外国航空会社やその日本地区総代理店との信頼関係が重要だ。特に、契約をして販売していたのにフライトがなくなるという最もリスクの高い「飛んでこない便」を防ぐためにできることをしていきたい。例えば、ヨーロッパでは航空会社別の、アメリカでは国別の、安全運航を基準とするリストがあり、公開されている。大手旅行会社のなかには、そういったものを独自に活用している会社もあるだろう。旅行会社がチャーター便利用商品を設定する判断材料のひとつとして、こういったより踏み込んだ情報もウェブを通じて紹介し参考にしてもらえると思う。
また、旅行会社各社には実際に「飛んでこない便」などの失敗事例のデータを提供してもらい活用することで、判断の一助となる相談窓口としたい。
現在の状況では、JLも全日空(NH)もチャーター便に積極的とはいい難い状況だろう。今後は、JL、NH以外の国内航空会社や定期便のある外国航空会社、格安航空会社(LCC)へも働きかけていく。
−これまでのご経歴を活用して今後どのように取り組んでいかれるか、抱負をお聞かせください
引田 航空会社、旅行会社で仕事をしてきているので、いい意味で広く浅く旅行業界を把握している。旅行業界のメカニズムをふまえ、そこで働く人の顔がわかるのが私の強みだが、一方でこれまで行政とは接点を持っていなかった。今後は積極的に交流していく必要がある。また、航空会社時代には「ナイトラン」といわれる夜から次の日まで駐機する機材を活用して、近場のグアムへのチャーター便を実施したこともある。こういった方法も一考したいが、一方で空港の課題もある。チャーターを利用したい地方空港は24時間運用ではなく、発着時間などに限界がある。人的な対応も課題だ。
チャーターコーディネーターの設置は、旅行会社とサプライヤー、行政が一体となってチャーター利用促進の機会をつくる良いチャンスだと捉えている。リスクを軽減して積極的にチャーターを活用するためにも、前述した内容と重複するが、旅行会社のみなさんには、特に失敗事例について正確なデータの提供をお願いしたい。リスクを被った旅行会社があっても、それが風聞で伝わるだけでは次のリスク回避へと繋げることはできない。
チャーターコーディネーターは、旅行会社のニーズがあってこその役割。まずは旅行会社が、チャーターに興味を持って取り組んでもらえるように働きかけたい。
−ありがとうございました
リスク分散へルール見直しの働きかけも
地方発着路線を中心に定期便の減便や運休、機材の小型化などが続き、航空座席の供給数が減少するなか、打開策としてチャーター便への注目が高まりつつある。2008年末には国土交通省が包括旅行(ITC)チャーター規制を大幅に緩和した。この流れのなか、日本旅行業協会(JATA)は、チャーター便の利用促進をめざして「チャーターコーディネーター」を設置した。チャーターコーディネーターの役割とは何か、6月7日付けで海外旅行業務部チャーターコーディネーターに就任した引田潤造氏に聞いた。(聞き手:本誌 秦野絵里香)
−チャーターコーディネーターの機能や業務内容についてお聞かせください
引田潤造氏(以下、敬称略) 就任して約1ヶ月半。期待を感じる一方で、チャーター便の利用には様々な課題もあり、簡単ではないと改めて実感している。私は、チャーターコーディネーターとは情報伝達機能を持った相談役だと考えている。旅行会社、航空会社やサプライヤー、空港や観光局や行政。大きくわけて3つのグループのトライアングルをつなぐパイプ役として、スムーズな情報伝達をする方法を確立することが使命だ。
それぞれのニーズや課題を知るため、旅行会社や航空会社、地方空港などと意見交換を実施してきた。残念ながら、まだチャーター便の実現を報告できる段階ではないが、旅行会社や地方の議員などから、具体的なチャーター便の設定に向けて相談を受けるなど、期待されていると感じている。まずはチャーター便の実施に積極的な旅行会社や地方の行政とともに、成功事例をつくりたい。
−チャーターの利用促進のため、具体的にどのように取り組んでいかれるのでしょうか
引田 第1のステップとして、JATAのウェブサイト上にチャーター関連情報を掲出する専用のコーナーを設置する。チャーター便の設定に前向きな旅行会社や航空会社、政府観光局、地方自治体、空港会社、業界団体などの情報を集約し、共有することが目的だ。これまで分散していた情報を集約し、わかりやすく発信することで、JATA会員の旅行会社に活用してもらいたい。また、現在販売しているチャーター便利用商品の情報を掲出したいと考えている。そこから観光局や旅行会社へリンクを貼ることで、販売機会の提供にもつながり、リスクの軽減につなげたい。
最新情報を発信するにはスピードも大切だ。すべての情報が出揃ってから整えて掲出するより、暫定的にでもまずはスタートさせる。遅くても2010年8月中には、専用コーナーをオープンしたい。
旅行会社からは、売れ残った仕入座席を転売したいとか、ユニット卸しをしたいなどの意見もあがっている。第2のステップは、旅行会社のニーズに応えていくことだ。現在のところ、チャーターのリスクは旅行会社だけにかかってしまうので、間口を広げてリスクを分散する方法を考えていきたい。また、チャーターのニーズのある地方を訪問し、現状の問題点や障壁について調査する。チャーターコーディネーターに就任してから1年後にあたる2011年6月までには、何らかのかたちにしたいと考えている。
−旅行会社にとってチャーターは魅力ある素材ですが、リスクが高いというのが本音です。リスク軽減のため何が必要でしょうか
引田 ルールの見直しは是非検討したい。2008年末にチャーター便の規制が緩和された後も、リーマンショック後の景気低迷や新型インフルエンザなどの影響もあり思うように設定本数が伸びていない。卵が先か鶏が先かになってしまい困難とは思うが、現行の法制度の中で改善点を模索していくとともに、規制緩和の可能性も探っていく。
また、もちろんルールの見直しが前提になるが、たとえばJATA会員専用サイトを通じて売れ残り席の転売システムを構築するなど、旅行会社のリスクを軽減する方法も考えられる。
−日本航空(JL)が大型機材を退役させる結果として、外国航空会社を活用する必要性が増す可能性がありますね
引田 外国航空会社やその日本地区総代理店との信頼関係が重要だ。特に、契約をして販売していたのにフライトがなくなるという最もリスクの高い「飛んでこない便」を防ぐためにできることをしていきたい。例えば、ヨーロッパでは航空会社別の、アメリカでは国別の、安全運航を基準とするリストがあり、公開されている。大手旅行会社のなかには、そういったものを独自に活用している会社もあるだろう。旅行会社がチャーター便利用商品を設定する判断材料のひとつとして、こういったより踏み込んだ情報もウェブを通じて紹介し参考にしてもらえると思う。
また、旅行会社各社には実際に「飛んでこない便」などの失敗事例のデータを提供してもらい活用することで、判断の一助となる相談窓口としたい。
現在の状況では、JLも全日空(NH)もチャーター便に積極的とはいい難い状況だろう。今後は、JL、NH以外の国内航空会社や定期便のある外国航空会社、格安航空会社(LCC)へも働きかけていく。
−これまでのご経歴を活用して今後どのように取り組んでいかれるか、抱負をお聞かせください
引田 航空会社、旅行会社で仕事をしてきているので、いい意味で広く浅く旅行業界を把握している。旅行業界のメカニズムをふまえ、そこで働く人の顔がわかるのが私の強みだが、一方でこれまで行政とは接点を持っていなかった。今後は積極的に交流していく必要がある。また、航空会社時代には「ナイトラン」といわれる夜から次の日まで駐機する機材を活用して、近場のグアムへのチャーター便を実施したこともある。こういった方法も一考したいが、一方で空港の課題もある。チャーターを利用したい地方空港は24時間運用ではなく、発着時間などに限界がある。人的な対応も課題だ。
チャーターコーディネーターの設置は、旅行会社とサプライヤー、行政が一体となってチャーター利用促進の機会をつくる良いチャンスだと捉えている。リスクを軽減して積極的にチャーターを活用するためにも、前述した内容と重複するが、旅行会社のみなさんには、特に失敗事例について正確なデータの提供をお願いしたい。リスクを被った旅行会社があっても、それが風聞で伝わるだけでは次のリスク回避へと繋げることはできない。
チャーターコーディネーターは、旅行会社のニーズがあってこその役割。まずは旅行会社が、チャーターに興味を持って取り組んでもらえるように働きかけたい。
−ありがとうございました