現地レポート:南オーストラリア州−アデレード、フルリオ半島、カンガルー島
自然と野生動物に触れ、美食とワインを楽しむ
落ち着いた大人好みの旅行先、南オーストラリア州
オーストラリアの南部中央に位置する南オーストラリア州。2009年の日本人訪問者数は8600人で、他の地域に比べると少ないが、10年前に比べると語学留学目的の若年層やアクティブシニアのFITを中心に倍増しているという。ワイナリーで有名なバロッサやカンガルー島がメディアで紹介されるなど、徐々にその魅力が日本でも知られるようになってきた。食とワイン、静かに広がる大自然の景観など、落ち着いた「大人のオーストラリア」が堪能できる南オーストラリア州は、まさに通好みのデスティネーション。今回は代表的な観光地、アデレード、フルリオ半島、カンガルー島の魅力を紹介する。
ヨーロッパの雰囲気を味わいながら巡る
多民族都市アデレード
州都であるアデレードは、人口約100万人。オーストラリア第5の都市だ。19世紀に自由植民地として計画的な都市づくりが行なわれ、ドイツ、イタリア、ギリシャなどヨーロッパからの移民を多く受け入れてきた。このような歴史的背景から、アデレードの建造物はヨーロッパ風のものが多いが、近年ではアジア系の移民も増えており、多民族都市としての一面も垣間見える。
そんな多様性を味わうには、街歩きが一番。街の中心部に位置するセントラル・マーケットは創業140年の伝統を誇る「アデレードの台所」だ。野菜、果物、肉、魚などの生鮮食品はもちろんのこと、チーズやナッツ、パンの専門店や輸入食材を売る店など、約80もの店舗が軒を連ねる。カフェやアジア顔負けの屋台もあり、散策中に小腹が減った際、気軽に利用することができる。
散策の足を街の北側へ伸ばすと、昔ながらの通り「ノース・テラス」がある。南オーストラリア美術館や州立図書館、大学などが建ち並び、落ち着いた雰囲気だ。歩き疲れたらカフェに入ってみよう。アデレードっ子はコーヒーに対するこだわりが強いそうで、世界中にある某有名コーヒーチェーンが撤退を余儀なくされたほど、カフェのレベルが高いという。
フルリオ半島で大地が育む食材を堪能
野生動物の観察を楽しむ
アデレードとその近郊は食の宝庫だ。その所以は豊かな食材を生む周辺地域の存在にある。アデレードから車で1時間圏内には、「ペンフォールズ」「ジェイコブズ・クリーク」など、日本でも有名なワイナリーを含め200以上のワイナリーがあるほか、海が近いため新鮮な魚介類も豊富。今回はアデレードから南下し、車で約40分の距離にあるフルリオ半島を巡った。
まず訪れたのは、ワインと絶景が楽しめるマクラーレン・ベール。約50ヶ所のワイナリーがあり、シラーズの名産地となっている。今回、訪問した「ザ・オリーブ・グローブ&ロイド・ブラザーズ」では、60エーカーの土地でシラーズ以外にオリーブを栽培。オリーブはすべて手摘みで収穫され、選別後に上質なオリーブオイルへと加工される。店内ではこだわりのオリーブオイルが数種類販売されているほか、ここで作られたワインやジャム、ボディケア製品を販売している。
町の中心部は、小さいながらも土産品を買うのに最適。例えば、1910年に実際に使われていた列車を店舗として利用したユニークなお店「アーモンドトレイン」。マクラーレン・ベールの名産であるアーモンドや関連製品が手に入る。道路のはす向かいには、南オーストラリア自慢のドライフルーツをチョコレートで包んだ「Fruchoc」(フルーチョック)を製造販売する「メドロー・コンフェクショナリー&フルーチョックスショールーム」もあり、甘い物好きにはたまらない。
フルリオ半島をさらに南東に進むと、ビクターハーバーという港町に出る。夏にはサーフィンや海水浴で賑わうこの地域での観光の定番は、グラニット島だ。島へ行くには長さ600メートルの土手道を渡る。徒歩でも行けるが、クライスデールという種類の馬がひく名物の2階建てのトラムを体験したい。歩くほどのゆったりとしたペースで、2階席からの景色が楽しめる。また、グラニット島は野生動物の保護区となっていて、5月中旬から10月までホエール・ウォッチングが楽しめるほか、夜のツアーに参加すると体長わずか35センチという小さくかわいらしいフェアリーペンギンを観察することができる。
「オーストラリアのガラパゴス」
カンガルー島で野生動物に出会う
カンガルー島は東京都の2倍に匹敵する面積で、オーストラリアで3番目に大きな島だ。本土から離れていたため、開拓の影響をあまり受けなかった。そのため、「オーストラリアのガラパゴス」といわれるほどで、島内には891種類もの自生植物や267種類の鳥類、世界でも希少な純血リグリアン種のミツバチなど、独自の生態系が保たれている。
現在は島の3分の1が、国立公園や自然保護区として指定されている。西部に位置するフリンダーズチェイス国立公園では、島固有のカンガルーやワラビー、ケープバロンという絶滅危惧種のガチョウなど多くの動植物が見られる。また、圧倒的な自然景観も人気で、波や風に削り取られた岩の景勝地、アドミラルズ・アーチとその下で休むニュージーランドオットセイが観察できる。また、地元のガイドさんが「天然のダリの作品」と評する奇石、リマーカブル・ロックスは大きさ、景色ともに圧巻だ。
また、カンガルー島で1番人気の見どころのシールベイ自然保護区では、約1000匹のアシカがコロニーを形成している。遊歩道からアシカを観察できるが、保護区の受付でガイド付きのツアーに申し込めば海岸に入ってアシカを間近で見られる。運が良ければ産まれたばかりの赤ちゃんアシカや、波の上をサーフィンするように泳ぐアシカに出会える。
また、カンガルー島は他の南オーストラリア州の地域同様、食の宝庫でもある。ワイナリーのほか、マロン(淡水ロブスター)の養殖場「アンダーメル・マロン・ファーム」やワイルドフェンネル(ウイキョウ)などを使ったリキュールを製造する「KIスピリッツ」、良質なリグリアン蜂のハチミツを販売する「アイランド・ビーハイブ」など、グルメな旅行者も満足できるだろう。
カンガルー島は日本人にはまだ馴染みの薄い観光地だが、大自然との触れあいや美酒・美食など、日本人にアピールする観光素材が多い。「カンガルー島をオペラハウス、ウルル(エアーズロック)、グレートバリアリーフに続くオーストラリアの第4のアイコンにしたい」と南オーストラリア州政府観光局は意気込んでおり、日本での注目度の高まりを期待したい。
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落ち着いた大人好みの旅行先、南オーストラリア州
オーストラリアの南部中央に位置する南オーストラリア州。2009年の日本人訪問者数は8600人で、他の地域に比べると少ないが、10年前に比べると語学留学目的の若年層やアクティブシニアのFITを中心に倍増しているという。ワイナリーで有名なバロッサやカンガルー島がメディアで紹介されるなど、徐々にその魅力が日本でも知られるようになってきた。食とワイン、静かに広がる大自然の景観など、落ち着いた「大人のオーストラリア」が堪能できる南オーストラリア州は、まさに通好みのデスティネーション。今回は代表的な観光地、アデレード、フルリオ半島、カンガルー島の魅力を紹介する。
ヨーロッパの雰囲気を味わいながら巡る
多民族都市アデレード
州都であるアデレードは、人口約100万人。オーストラリア第5の都市だ。19世紀に自由植民地として計画的な都市づくりが行なわれ、ドイツ、イタリア、ギリシャなどヨーロッパからの移民を多く受け入れてきた。このような歴史的背景から、アデレードの建造物はヨーロッパ風のものが多いが、近年ではアジア系の移民も増えており、多民族都市としての一面も垣間見える。
そんな多様性を味わうには、街歩きが一番。街の中心部に位置するセントラル・マーケットは創業140年の伝統を誇る「アデレードの台所」だ。野菜、果物、肉、魚などの生鮮食品はもちろんのこと、チーズやナッツ、パンの専門店や輸入食材を売る店など、約80もの店舗が軒を連ねる。カフェやアジア顔負けの屋台もあり、散策中に小腹が減った際、気軽に利用することができる。
散策の足を街の北側へ伸ばすと、昔ながらの通り「ノース・テラス」がある。南オーストラリア美術館や州立図書館、大学などが建ち並び、落ち着いた雰囲気だ。歩き疲れたらカフェに入ってみよう。アデレードっ子はコーヒーに対するこだわりが強いそうで、世界中にある某有名コーヒーチェーンが撤退を余儀なくされたほど、カフェのレベルが高いという。
フルリオ半島で大地が育む食材を堪能
野生動物の観察を楽しむ
アデレードとその近郊は食の宝庫だ。その所以は豊かな食材を生む周辺地域の存在にある。アデレードから車で1時間圏内には、「ペンフォールズ」「ジェイコブズ・クリーク」など、日本でも有名なワイナリーを含め200以上のワイナリーがあるほか、海が近いため新鮮な魚介類も豊富。今回はアデレードから南下し、車で約40分の距離にあるフルリオ半島を巡った。
まず訪れたのは、ワインと絶景が楽しめるマクラーレン・ベール。約50ヶ所のワイナリーがあり、シラーズの名産地となっている。今回、訪問した「ザ・オリーブ・グローブ&ロイド・ブラザーズ」では、60エーカーの土地でシラーズ以外にオリーブを栽培。オリーブはすべて手摘みで収穫され、選別後に上質なオリーブオイルへと加工される。店内ではこだわりのオリーブオイルが数種類販売されているほか、ここで作られたワインやジャム、ボディケア製品を販売している。
町の中心部は、小さいながらも土産品を買うのに最適。例えば、1910年に実際に使われていた列車を店舗として利用したユニークなお店「アーモンドトレイン」。マクラーレン・ベールの名産であるアーモンドや関連製品が手に入る。道路のはす向かいには、南オーストラリア自慢のドライフルーツをチョコレートで包んだ「Fruchoc」(フルーチョック)を製造販売する「メドロー・コンフェクショナリー&フルーチョックスショールーム」もあり、甘い物好きにはたまらない。
フルリオ半島をさらに南東に進むと、ビクターハーバーという港町に出る。夏にはサーフィンや海水浴で賑わうこの地域での観光の定番は、グラニット島だ。島へ行くには長さ600メートルの土手道を渡る。徒歩でも行けるが、クライスデールという種類の馬がひく名物の2階建てのトラムを体験したい。歩くほどのゆったりとしたペースで、2階席からの景色が楽しめる。また、グラニット島は野生動物の保護区となっていて、5月中旬から10月までホエール・ウォッチングが楽しめるほか、夜のツアーに参加すると体長わずか35センチという小さくかわいらしいフェアリーペンギンを観察することができる。
「オーストラリアのガラパゴス」
カンガルー島で野生動物に出会う
カンガルー島は東京都の2倍に匹敵する面積で、オーストラリアで3番目に大きな島だ。本土から離れていたため、開拓の影響をあまり受けなかった。そのため、「オーストラリアのガラパゴス」といわれるほどで、島内には891種類もの自生植物や267種類の鳥類、世界でも希少な純血リグリアン種のミツバチなど、独自の生態系が保たれている。
現在は島の3分の1が、国立公園や自然保護区として指定されている。西部に位置するフリンダーズチェイス国立公園では、島固有のカンガルーやワラビー、ケープバロンという絶滅危惧種のガチョウなど多くの動植物が見られる。また、圧倒的な自然景観も人気で、波や風に削り取られた岩の景勝地、アドミラルズ・アーチとその下で休むニュージーランドオットセイが観察できる。また、地元のガイドさんが「天然のダリの作品」と評する奇石、リマーカブル・ロックスは大きさ、景色ともに圧巻だ。
また、カンガルー島で1番人気の見どころのシールベイ自然保護区では、約1000匹のアシカがコロニーを形成している。遊歩道からアシカを観察できるが、保護区の受付でガイド付きのツアーに申し込めば海岸に入ってアシカを間近で見られる。運が良ければ産まれたばかりの赤ちゃんアシカや、波の上をサーフィンするように泳ぐアシカに出会える。
また、カンガルー島は他の南オーストラリア州の地域同様、食の宝庫でもある。ワイナリーのほか、マロン(淡水ロブスター)の養殖場「アンダーメル・マロン・ファーム」やワイルドフェンネル(ウイキョウ)などを使ったリキュールを製造する「KIスピリッツ」、良質なリグリアン蜂のハチミツを販売する「アイランド・ビーハイブ」など、グルメな旅行者も満足できるだろう。
カンガルー島は日本人にはまだ馴染みの薄い観光地だが、大自然との触れあいや美酒・美食など、日本人にアピールする観光素材が多い。「カンガルー島をオペラハウス、ウルル(エアーズロック)、グレートバリアリーフに続くオーストラリアの第4のアイコンにしたい」と南オーストラリア州政府観光局は意気込んでおり、日本での注目度の高まりを期待したい。
カンタス航空、10月からの機材大型化で座席数増加
段階的にプレミアムエコノミー導入予定
カンタス航空(QF)は7月から、成田/シドニー線
で週6便をボーイングB747-400型機に、週1便をエアバ
スA330-200型機に変更し、座席数を週1256席増加する。
QFグループエグゼクティブのロブ・ガーニー氏は、5
月下旬から6月上旬にかけて開催された「オーストラ
リア・ツーリズム・エクスチェンジ」(ATE)でのイ
ンタビューで、機材大型化について「座席数を増加さ
せる絶好のタイミング」と語った。その理由について、
「QFは以前も成田/シドニーの線をB747型機で運航し
ていたが、世界的な金融危機の影響などで需要が落ち
込み、B737型機に変更していた」とこれまでの背景を
説明した上で「景気の底にあった頃にはそれが適切な
キャパシティだったが、現在は日本マーケットにも回
復の兆しが見られるようになり、機材大型化に踏み切
ることにした」と語った。
さらにガーニー氏は「B747-400型機の機材で今後1
年から2年以内に、段階的にプレミアムエコノミーの
サービスを開始する」との考えを明かした。成田/シ
ドニー間ではビジネスクラス利用客が多いが、エコノ
ミークラスよりもゆとりのあるプレミアムエコノミー
を導入することで、ビジネス客の需要に対応する。
また、QFは現在A380型機を6機保有しているが、2011年3月までに新たに4機を受領する予
定。A380型機での運航頻度が、メルボルン/ロサンゼルス線のほか、シンガポール経由の
メルボルン/ロンドンで増加する。シンガポール経由の便では最終的にA380型機の運航が
週5便に増えるため、シンガポール経由メルボルン行きの座席が増加することになる。
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取材協力:オーストラリア政府観光局、カンタス航空、南オーストラリア州政府観光局
取材:安井久美