観光活性化フォーラム
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休暇分散アンケート、滑り出しは否定意見が集中−「効果なし」6割超

  • 2010年6月25日
 観光庁と経済産業省が6月22日に開始した休暇分散化についての意見募集で、6月24日17時現在、否定的な評価やコメントが集中している。これは、経産省が提供する「アイディアボックス」の仕組みを使ったもので、休暇分散化の効果やメリット・デメリット、休暇分散化が実施された場合にすることなど合計9項目について、選択肢と自由回答欄で意見を募集。しかし、休暇分散化の効果の有無を聞く質問で、効果がないとする回答が全体の6割を超えるなど、苦しい滑り出しとなっている。

 回答数は9項目で異なるものの、最も回答が多い休暇分散化の効果の有無で約1500件。メリットについての設問でも「特にない」が約1230件のうち67%を占め、「混雑が緩和され、旅行がしやすくなる」は15%に留まっている。逆にデメリットでは、約1170件のうち「休日の異なる地域に住む家族や友人に会えなくなる」と、「休日の異なる取引先との連絡が難しくなり、企業の経済活動等に支障が生じる」が26%、「仕事が休めなくなる」が19%などだ。

 また、分散化が実施された場合に何をするかの設問では、約1100件の回答のうち「仕事をする」が28%、「その他」が27%、「家でゆっくり過ごす」が24%。「宿泊旅行」は13%、「海外旅行」は6%だ。さらに、「年次有給休暇の取得を促進することが大前提」とする意見に対する考えを聞いた設問では、「その通りだと思う」が42%、「その通りだと思うが、実際には仕事の都合等のため取得できない」が32%などとなっている。


▽オピニオン−旅行に関心のない人にも納得してもらえるメリットを

 回答期限が7月12日までであることや、回答者が自ら意見を述べようとするインターネットユーザーのみであり、様々な立場の人々の意見が反映されているかは不明であることから、現時点で一義的な結論は導けない。しかし、休暇分散化の実現に向けた検討材料にすると意見を募集している以上、逆風であることは間違いない。

 こうした反応は、説明不足によるものが多いように思う。一部で議論はなされていたとはいえ、一般の国民目線からすれば唐突な話であったろう。いきなり「あなたの休暇をずらしたい」などといわれれば、拒否したくもなる。しかも、その説得材料であるメリットが「旅行満足度の向上、リピーターの増加」「観光地の評価の向上」「潜在需要の喚起」など、旅行・観光に関心のない、あるいは少ない人からすれば何の得にもならない点ばかり。

 メリットを聞く設問で「家族や親族とゆっくり過ごす時間が増える」という選択肢もあるが、同じ場所に暮らしていれば前と変わらず、離れていればむしろ休みが合わなくなる。「観光産業で働く人の雇用が安定する」ことを、観光産業で働かない人がどこまで真剣に望んでくれるだろうか。

 例え旅行が好きな人にとってもデメリットが生じる変化を、そうでない人に受け入れてもらうことが必要なのだ。そのためには、「あなたにもメリットがある」ことを根気よく丁寧に説明し続けなければならない。

 政府は「新成長戦略」で観光を成長分野として重視する姿勢を明確化した。この中で、休暇分散化については2010年度中に祝日法改正法案を提出する方針を示しているが、急いては事を仕損じる。観光振興がいかに日本経済に好影響を与えうるのか、日本にとってどのような良い意味を持つのか、まずはその点から伝えていくべきではないだろうか。(松本)