観光白書、日本人海外旅行者数は3%減−休暇取得と家族旅行需要増が課題

  • 2010年6月15日
 政府は6月11日、「平成21年度観光の状況・平成22年度観光施策」(平成22年版「観光白書」)を閣議決定した。白書によると、平成21年度の日本人海外旅行者数は前年比3.4%減の1544万6000人となった。8月以降は燃油サーチャージの廃止などで回復基調となり、9月のシルバーウィークも好調だったが、景気後退による個人消費の低迷、新型インフルエンザの影響が大きく響き、全体で見ると落ち込んだ。

 訪日外国人旅行者数は世界経済の低迷や円高、新型インフルエンザの影響で18.7%減の679万人と大きく減少。ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)重点市場国のうち、ビザの緩和の影響で増えた中国を除いた全市場で減少しており、なかでも韓国、台湾が大幅に減少したため全体の下げ幅も拡大した。これをふまえ、観光庁では訪日需要拡大のため実施したプロモーションの成果を検証し、成果指標をたてていく。さらに、2010年度からは訪日外国人の詳細な消費動向や満足度を調査し、訪日旅行の質をはかるための調査を四半期ごとに実施することで、訪日旅行が与える経済効果の数値化をはかる。

 また、国民1人あたりの国内宿泊観光旅行回数は暫定値で6.0%減の1.42回、宿泊数は暫定値で2.1%減の2.31泊と減少した。これをふまえ、観光庁では若者や家族などの費用対効果が見込める世代に対し、予算を費やし振興策を打ち出していく方針だ。

 なお、平成20年度の国内旅行消費額は0.3%増の23.6億円と微増で、間接的な効果を含めた生産波及効果は51.4兆円、付加価値誘発効果は国内総生産(名目GDP)の5.3%の26.5兆円、雇用誘発効果は430万人と推計した。


▽他国との旅行動向比較を実施、日本は家族旅行の少なさと休暇取得が課題

 白書では第一部「観光政策の新たな展開」で「旅行環境に関する国際比較」をテーマに掲げ、日本、韓国、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリアの主要7ヶ国で旅行環境の比較を実施。日本は国内総旅行量(回数×泊数)と海外旅行回数が7ヶ国で最低値となった。また、日本、フランス、韓国で詳細な調査を実施し比較したところ、家族旅行回数が少ない、休暇取得状況が十分でなく、休暇を取得しても3割から6割程度しか旅行に使わない、といった問題点があがった。また、国内旅行の消費額を比較すると、1回あたりの旅行消費額は日本がもっとも高いことから、日本人は少ない宿泊数で消費額が高い旅行をしており、経済効果の高さが期待できると分析した。

 家族旅行の動向は、フランスが2.07回、韓国が1.89回のところ、日本は1.10回にとどまっており、とくに中学生、高校生は他2ヶ国の水準の半分だった。観光庁によると、子ども時代の旅行経験をもつ人はその後も旅行する傾向が高いことから、家族旅行の減少は将来的な需要の減少につながると分析しており、家族旅行の需要喚起は旅行消費額を維持し、旅行需要を保つために真剣に取り組むべき重要な課題として位置づけているという。