取材ノート:ランデブーカナダ、会場インタビュー、CTCと各州の方針

  • 2010年6月9日
 カナダ最大の旅行見本市「ランデブーカナダ」(RVC)が、5月8日から5日間、マニトバ州の州都ウィニペグで開催され、総勢約1400人が集結した。日本からは旅行会社7社のバイヤーのほか、在カナダの日系ツアーオペレーターなど15人が参加した。

 CTC副社長のチャールズ・マッキー氏は「参加者数は過去最大規模。これは世界的な不況から脱しつつあることに加え、バンクーバーオリンピックの効果も大きい。初参加のバイヤーは90社増えた。セラーはカナダ全州から集まっており、新しい観光素材も豊富に紹介されている。新商品やこれから売れそうな商品の情報を得るためにも、RVCを最大限に活用してほしい」と語った。

 会場では、CTCをはじめ各州観光局のブースも開設。それぞれのブースで、今年の日本マーケットの動向やプロモーション活動について聞いた。
                          
                              
CTC、各州と協力し30万人回復への流れを確実に

 昨年はインフルエンザなどの影響を受け、日本からカナダへの年間旅行者数が20万人にまで落ち込んだ。これに対しCTC日本地区代表のアンソニー・リッピンゲール氏は、「今年はすでに回復の兆しが見えている」と強調した。

 リッピンゲール氏は「オリンピック効果もあり1月から2月は好調。エア・カナダ(AC)の成田/カルガリーの直行便が就航するなどプラス要素は多く、目標の年間30万人も難しくない」とみる。また、日本旅行業協会(JATA)のビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)の重点デスティネーションとなったことを受け、5月末にはJATAの代表団による視察旅行もある。「これらも含め、2010年は非常にポジティブな傾向といえる。日本の各州担当者が州の垣根を越えて力をあわせ、旅行会社店頭でのカナダに関するセミナーなども実施している。年間予算の42%を旅行業界関係に振り分け、旅行会社とのパートナーシップをさらに強固にしていく予定だ」と、日本人旅行者数の回復に向けて具体的なアクションを開始していることを強調した。


BC州、バンクーバー、ウィスラーの五輪効果をいかしオカナガン地方も販促

 ブリティッシュ・コロンビア州では、冬のバンクーバーオリンピックが大きな追い風になっている。昨年は1ヶ月おきにプレスツアーを実施し、メディア露出もかなり増えた。同州日本地区マネージャーの菊地友子氏は、「オリンピックの余韻をいかし、夏のバンクーバーやウィスラーのプロモーションにも力を入れていく予定」と語った。

 さらに、内陸部のオカナガン地方やクートニー・ロッキーも、積極的に紹介していく方針だ。「特にオカナガンはここ10年で大きく変わっている注目のエリア。ワイナリーが120ヶ所に急増し、ゴルフ場やリゾートホテルも次々と誕生している。ACのカルガリー線を利用して、ロッキーとあわせた周遊も提案していきたい」とし、オカナガン地方やクートニー・ロッキーへの旅行会社向けの研修旅行も実施する考えを示した。


アルバータ州、カルガリー直行便を軸にさらに深い体験型旅行を提案

 カナディアン・ロッキーを有するアルバータ州も、日本人旅行者の数は順調に回復している。同州観光局副社長のジョン・マメラ氏は「3月に就航したACの成田/カルガリー線が連日80%から90%の予約率と聞いており、これが最大のプラス要因となっている」と分析し、「カルガリーを入口に、アルバータ全体をプロモーションしていく予定」と語った。

 例えばバンフ、レイクルイーズ、ジャスパーという伝統的なカナディアン・ロッキーはもちろん、先住民文化や恐竜をキーワードにウォータートン国立公園やバッドランドなども積極的に紹介していく考えだ。さらに、牧場滞在などの体験型の素材やローカルの人々との交流、あらゆる年代にあわせたアドベンチャー体験など「ただ見るだけではない“アルバータ・エクスペリエンス”をピーアールしていく」と方針を示した。


オンタリオ州、G8、G20のピーアール効果に期待

 オンタリオ州では昨年12月以降、日本人旅行者が回復してきているという。同州観光局アジア・パシフィック地区マーケティングマネージャーのハービー浜崎氏は「冬のキャンペーンの効果があり、順調に回復している。1月から2月は2ケタ以上の伸び率があり、通年では2年前の水準まで戻るとみている」と語った。

 6月には同州のマスコーカ地方でG8首脳会議、トロントでG20首脳会議が開催され、メディア露出が多くなることで訴求効果を期待する。「さらに2015年には、南北アメリカの国々を対象とした『パン・アメリカン競技大会』が開催され、これにあわせトロントから北一帯の広いエリアで新ホテルや施設の開発が進んでいる」とし、「例えばトロントにはリッツ・カールトン、トランプタワー、シャングリ・ラなどのホテルがオープンする予定」と、新たな動きへの期待を示した。

 日本マーケットには特に、ワインとグルメ、フライ&ドライブ、歴史と文化などをテーマに、トレードとメディアに向けた積極的なプロモーションを展開する意向だ。


ユーコン準州、冬のオーロラ鑑賞に加えて、夏、秋の素材もアピール

 冬のオーロラツアーの需要が中心のユーコン準州だが、同州観光局マーケティングマネージャーのマーガレット・グッドウィン氏によると、「新たに夏から秋にかけての素材も提案したい」との意向だ。「アラスカのホワイトホースからスキャグウェイ、そしてヘインズ・ジャンクションを巡り、壮大な山岳と海とを体験するゴールデンサークルの旅を促進していく。さらに8月下旬から9月上旬のトゥームストーン山地で見られるツンドラの紅葉なども紹介していきたい」という。

 日本マーケットに関しては、「全体的に見るとまだ大きな市場ではないが、冬の需要も含め大切に育てたい」とし、昨年には高橋由香氏が同州の日本代表として就任したことに触れ、「ユーコンのサプライヤーも今後の展開に大きな期待を寄せている」と語った。


プリンス・エドワード島、体験型素材を軸に新マーケットを開発

 「赤毛のアン」の舞台として知られるプリンス・エドワード島(PEI)では、2008年に同書の出版100周年を迎え、同年だけで8000人の日本人旅行者が訪れた。昨年はインフルエンザのためにこれが半減。同州観光局広告パブリシティマネージャーのロバート・ファーガソン氏は「今年は以前のレベル、5000人以上をめざしてプロモーションを展開したい」と語った。

 現在、PEIを舞台にした映画「アンを探して」が上映中で、宣伝材料としてピーアールを進めていく予定だ。また、新しい素材では、オイスターフィッシングやクッキングなどPEIの農業や漁業をフューチャーした70以上の体験型プロダクトを用意。「『赤毛のアン』以外にもさまざまあるPEIの素朴な魅力を楽しんでもらえるよう、アピールしていく」と、新たなマーケット開発に意欲を示した。


旅行見本市で市場ニーズに対応

 CTC副社長のチャールズ・マッキー氏によると、「日本
人の旅の傾向が少しずつ変わりつつある」という。例えば
人気のロッキーでもハイキングや乗馬体験、恐竜の化石で
有名なバッドランドまで足をのばす人が増え、より深く体
験する旅、プラスアルファのある旅が求められているとい
う。「プラスアルファの情報を得るためにもRVCはいい機
会」と話す。

 参加したバイヤーからは「RVCは夏のシーズンがスター
トする時期なので、日本マーケットの現状や今年の傾向を
サプライヤーに理解してもらい、それにあったサービスやサポート提供を依頼できるのが
最大のメリット」(メープルファンツアーズ・バンクーバー・オペレーション・マネージ
ャーの菅又孝宣氏)などの意見が聞かれた。

 CTC日本事務所ではRVCの参加バイヤーに対して、旅行費用などのサポートを実施してい
る。さらに10月に北京で開催する「ショーケース・カナダ」への参加者にも、旅行費用を
サポートする方針だ。CTC日本地区代表のアンソニー・リッピンゲール氏は「RVCとアジア
マーケットにフォーカスしたショーケースはそれぞれ特徴が異なり、意味がある」と参加
する意義を強調。旅行会社がカナダに再び目を向け、RVCなどにも関心を持ってもらえる
よう、積極的にプロモーションしていく意向を話した。



取材協力:カナダ観光局(CTC)
取材:吉沢博子