JNTOの事業仕分け、訪日外客促進業務を国へ、直営の案内所は廃止に

  • 2010年4月30日
 政府の行政刷新会議は4月28日、日本政府観光局(JNTO)の業務について事業仕分けをおこなった。ウェブサイトを通じた海外宣伝や招請事業、訪日ツアー造成支援などの観光旅客来訪促進業務については、「国に戻し国としてロードマップを企画立案し、その上で民間に委ねるものはその方向で検討」との結論を下した。また、ツーリスト・インフォメーション・センター(TIC)運営などの外国人旅行客の受入体制整備に関しては、「JNTO直営の受入体制(TIC)は廃止」となった。評価者からは、国(観光庁)と独立行政法人(JNTO)、民間企業の役割分担が不明確、民間でできることが多いといった意見が挙がった。一方で、ほとんどの評価者が成長戦略の中で観光は重要な要素であり、訪日外客誘致促進は重要であるとの考を前提に示していた。

 評価者側は、2009年度の訪日旅行促進事業費として計上された約30億円の予算をJNTOと民間企業が競争入札している点や、このうち26億円を民間企業が受託している点について、「すでに民間にわたせる状況ではないか」といった意見を述べた。これに対しJNTO側は、民間もJNTOもどちらも使用できる予算となっていることや、海外ネットワークを広げながら各国の動向や情報交換が必要なため民間のビジネスになりにくい点などを説明。評価者側は、国として観光立国をめざしており、日本貿易振興機構(ジェトロ)や大使館などを活用することもできると指摘。また、JNTOがマーケティングした内容をもとに観光庁が企画立案と予算決めをおこなうという流れについても、中長期的な具体的戦略が見えにくいうえに、民間でできることが多いと言及した。

 このほか、TICについては各地域や地方自治体の観光案内所も多数ありすでに対応できていることなどから、地域づくりやまちづくりにもつながるため、実際の運営の必要はないと判断。直営でのTIC運営は廃止、との結論に至った。

 同日定例会見を実施した観光庁長官の溝畑宏氏は仕分け結果について、「観光庁とJNTOの役割や機能の分担が十分理解されていないと思う。今後、わかりやすく明確化し、総合的にプロモーション強化がはかれるような体制作りを検討したい」と話す。一方で、「中国、韓国のJNTO海外事務所の視察をしたが、アジアの競合国と比べ少ない予算で頑張っている」と評価する。JNTOの民営化に関しては、個人的な所管としたうえで、「世界の観光政策では基本は国と法人が一体となって実施しているため公益性を考えたとき、国とJNTOとの一体となった動きが望ましい姿では」と述べた。また、案内所については「バランスを見てから考えていく。仕分けは仕分けとして結果を受けとめ議論したい」との見解を示した。