取材ノート:日本/インド間の交流拡大へ−ビザ施策、新観光素材も提案

「Visa on arrival」で日本からの観光客促進へ

開会式の冒頭に挨拶に立ったインド観光省局長のデベッシュ・チャルトベディ氏は、インドが日本人観光客を非常に重要視していることを強調。「2010年1月から試験的にはじめた「Visa on arrival」(VOA)の対象国5ヶ国に、日本が含まれているのもそのため」と述べ、日本マーケットの拡大に意欲を見せた。
VOAとは、デリーやムンバイなどの主要国際空港において、国際空港 到着時に対象国のパスポート保持者のビザ申請を受け付けるシステム。当初は日本、フィンランド、ルクセンブルグ、ニュージーランド、シンガポールの5ヶ国を対象とし、さらに13ヶ国の追加を検討している。今年、デリーで開催されるコモンウェルスゲームを見据えての設置といわれているが、最初の5ヶ国に日本が含まれたことはインドが日本マーケットを重視していることの表れといえるだろう。ビザの簡素化は日本観光客増加へのはずみとなるものと思われる。
日本側から最初に挨拶に立った観光庁観光地域振興部長の田端浩氏は、「インドはアジアの大国であり、旅行先としての可能性は大きい」としながらも、「日本人にとってはまだあまり知られていない国」という現状も指摘した。今後は、「日本人にとってインドが訪れやすい国になるように、社会的なインフラや安全性向上などの問題を解決することがポイントになるだろう」と述べた。
ホームステイやスキーなど新素材も紹介

キャンペーンでは、アーユルベーダやヨガを中心にしたウェルネス・ツーリズムや、インドの伝統文化に触れるカルチャー体験、都市部から遠く離れた村などでのホームステイなどのルーラル・ツーリズム、エコロジーを意識した野生動物との出会いなど、新たな体験型の旅が提案されている。インドには、実は「雪質が世界一」といわれるスキー場もあり、日本ではあまり知られていない名所も紹介された。
インフラ整備推進、安全や清潔さの改善も求む

また、従来の仏跡巡りのツアーは、道路などインフラが十分に整っていないというイメージがあったが、インド観光省のスジット・バネルジー氏は「道路の整備は迅速に進んでいる。また、道路沿いの休憩所やトイレの設置も優先的に進めている」と強調。これを受けて、JATA副会長の佐々木隆氏は「インドの経済発展によってインドの国内旅行が活発化し、それがインフラの整備にもつながっていると思われる。今後の展開に期待している」と述べ、さらに「日本はインドに非常に興味を持っているし、刺激的で魅力的な国というイメージがある」と話した。
その一方で佐々木氏は、日本人の中でインドの「安全さや清潔さ」のイメージはあまり改善がされていないとの現状を指摘。今後は「ものめずらしく、特殊な興味のある人だけが行くデスティネーション」から、「安全で魅力的で、誰でもが行きたくなるデスティネーション」への転換が望まれると語り、会場から大きな拍手を受けていた。イメージ向上はやはり、今後の大きな課題となるだろう。
豪華列車やクルーズなど、新たなプロダクトを

シンポジウムの参加人数はやや少なめだったが、非常に充実していた。佐々木氏が語った「後から振り返って、今回のシンポジウムが日本とインドの観光交流促進のターニングポイントだったといわれるような成果を出したい」という言葉が、参加者の気持ちを代表しているように思われた。
取材:宮田麻未、写真:神尾明朗