現地レポート:ゴールドコースト、販売者向けセミナーと連動の研修旅行
販売担当者に体験の機会を
セミナーと研修旅行の連動企画、JATAが推進
日本旅行業協会(JATA)のオーストラリア旅行促進部会は2010年1月、オーストラリアへの大型研修旅行を実施した。オーストラリア政府観光局(TA)をはじめ、各州政府観光局、各航空会社およびワタベウエディングが協力し、オーストラリアの重点顧客層であるハネムーン&ウエディングをテーマに、ゴールドコースト、シドニー、ケアンズの3都市で実施。今回はゴールドコーストのコースに同行した。
セミナー&研修旅行、今後増加へ
オーストラリアは、JATAが推進するビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)の重点デスティネーションだ。昨年10月、VWC2000万人推進室はオーストラリア旅行促進部会と連携し、オーストラリアの「ハネムーン&ウエディングセミナー」を東京と大阪で開催した。今回の研修旅行は、同セミナーの参加者およびDS(デスティネーション・スペシャリスト)認定者・受講者を対象に、リテール強化を目的に設定されたもの。JATAのウェブサイトに告知後すぐに定員オーバーとなり、3コースで約80名が参加する大型研修旅行となった。
テーマを設けてセミナーを開き、研修旅行へとつなげていくJATA主導のリテール強化策は、大きなものでは昨年のハワイに次いで今回のオーストラリアが2度目となる。ゴールドコーストに同行したVWC2000万人推進室室長の澤邊宏氏は、「この流れは今後急激に増えていく」と話しており、今年はマカオで学生用プログラム、ベトナムで新規商品企画をテーマにした企画を進行中だ。オーストラリアでは今後、教育旅行やMICEでも同様の企画が成り立つと澤邊氏は語る。
今回のゴールドコーストへの参加者は、関東圏、関西圏を中心に、大分、松山、沖縄などから38名が参加した。若い販売担当者やDS受講者などが中心で、オーストラリアは初めてという参加者も多く、テーマのハネムーン&ウエディングに加え、主要な観光要素も取り入れた盛りだくさんの内容となった。
まさに体験、模擬ウエディング
今回の研修で最も際立ったプログラムは、模擬ウエディングだろう。ワタベウエディングの全面協力で実現したもので、ゴールドコーストでは、一番人気の「サンクチュアリー・コーブ・チャペル」が舞台となった。2006年にリニューアルした同チャペルは、運河に面した全面ガラス張りの優雅な造りが特徴。見学するだけでも印象的だが、模擬ウエディングが行なわれたことで、参加者にとって忘れられない場所となった。
模擬ウエディングは、新郎新婦がリムジンで現れるところからスタート。厳かな入場、結婚の誓い、指輪の交換、結婚証明書への署名といった一連の流れが進行し、思わず本物の式に参列しているような気分になる。パイプオルガンの音色やプロのカメラマンが隋所で撮影する様子にもリアリティが感じられ、参加者の女性陣からは「私も結婚したい!」という声が飛び交ったほど。新郎新婦を同行者のなかから選出したことも手伝って、研修参加者にちょっとした連帯感のようなものが生まれたのは、計算外の効果だったといえるだろう。
午後は、内陸部のマウントタンボリンに位置するワイナリーに移動し、「セダークリークチャペル」を視察した。ビーチリゾートのゴールドコーストにあって、豊かな緑に囲まれた環境が印象的だ。ここでのウエディングは、レストラン内の開放的なガゼボでのパーティが定番となっている。ワイナリー併設のレストランだけあって、ワインも食事もさすがのクオリティ。チャペル、環境ともに、自然派志向のカップルにおすすめといえる。
また、ホテルは「パラッツォ・ヴェルサーチ」を見学。客室のアメニティやレストランの食器など、いたるところにヴェルサーチのロゴが入っているスペシャル感は、まさにカップル向け。敷居の高さは好みの分かれるところだが、ハネムーン&ウエディングという特別なイベントには申し分のないプロパティだろう。
ゴールドコーストの多様性
4日目は、オプショナルツアーとして、熱気球体験や世界遺産ツアーなどが用意された。2日目のビーチ散策を含めると、まさに陸・海・空を舞台にさまざまなアクティビティを盛り込んでおり、ゴールドコーストの多様性を体験できる内容となっている。
今回は世界遺産の森を歩くツアーに参加した。オーストラリア・ゴンドワナ多雨林は、同州とニュー・サウス・ウェールズ州にまたがる37万ヘクタールもの広大なエリア。観光ポイントは、州境に位置するスプリングブルック国立公園とラミントン国立公園だ。見どころは、ひとつの山脈地帯に冷温帯雨林、温帯雨林、亜熱帯雨林を見ることができる点。真夏のゴールドコーストにあって、冷温帯雨林ではひんやりとした空気を感じ、亜熱帯雨林では蒸し暑さを感じることができるのがこの世界遺産の面白いところだ。
オーストラリアでは人気の世界遺産が都市部から簡単にアクセスできる強みがあり、両国立公園もゴールドコーストの中心部から約1時間30分の距離にある。JPTツアーズが催行する1日コースでは、スプリングブルックで3つの展望台を巡り、ラミントンではツリートップを歩くというように、バリエーションに富んだ内容が特徴。曲がりくねった山道は最小限に細く舗装されていたり、あまりショップや休憩所がないという状況もまた、環境保護の先進国オーストラリアならではの取り組みとして学ぶべき点である。
体験こそ最大の学び
研修旅行中、最も多くの感想が聞こえたのは、やはり模擬ウエディングだ。新婦役を務めたエス・ティー・ワールドの下條真由子さんは、「全体の流れが把握でき、何にどれくらい時間がかかるのかといった細かいことまでわかった」と話している。隣に駐車場があるといった環境も含めて3つのチャペルを見学できたのも、ウエディング担当者には参考になったようだ。
ゴールドコースト最大の魅力であるビーチが印象に残ったという参加者も多い。まっすぐに伸びる海岸線とサーファーズパラダイスのビル群が織り成す風景は、確かにゴールドコーストならでは。焼けるほど熱い砂浜を裸足で歩き、海の水で足を冷やした時間は、まさに実地体験だった。
そのほか、「直接販売に役立つホテルが視察したかった」「もう少し自由時間がほしかった」などの声もあったが、盛りだくさんの内容に、「ビーチだけでなく、山や森の魅力も視察できた」という声も多かった。ホームページに体験記を載せるという人や、社内勉強会を開くための資料づくりをするという人もいれば、有給を取って参加した人もいたほど。販売現場はやはり、こうした現地視察や体験に飢えているのではないかと感じた。「クチコミに勝るものはない」という澤邊氏の言葉通り、新しい発見を楽しみ、それを語ることで旅行業界の活性化をはかろうとするJATAの動きに、今後も大いに注目したい。
セミナーと研修旅行の連動企画、JATAが推進
日本旅行業協会(JATA)のオーストラリア旅行促進部会は2010年1月、オーストラリアへの大型研修旅行を実施した。オーストラリア政府観光局(TA)をはじめ、各州政府観光局、各航空会社およびワタベウエディングが協力し、オーストラリアの重点顧客層であるハネムーン&ウエディングをテーマに、ゴールドコースト、シドニー、ケアンズの3都市で実施。今回はゴールドコーストのコースに同行した。
セミナー&研修旅行、今後増加へ
オーストラリアは、JATAが推進するビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)の重点デスティネーションだ。昨年10月、VWC2000万人推進室はオーストラリア旅行促進部会と連携し、オーストラリアの「ハネムーン&ウエディングセミナー」を東京と大阪で開催した。今回の研修旅行は、同セミナーの参加者およびDS(デスティネーション・スペシャリスト)認定者・受講者を対象に、リテール強化を目的に設定されたもの。JATAのウェブサイトに告知後すぐに定員オーバーとなり、3コースで約80名が参加する大型研修旅行となった。
テーマを設けてセミナーを開き、研修旅行へとつなげていくJATA主導のリテール強化策は、大きなものでは昨年のハワイに次いで今回のオーストラリアが2度目となる。ゴールドコーストに同行したVWC2000万人推進室室長の澤邊宏氏は、「この流れは今後急激に増えていく」と話しており、今年はマカオで学生用プログラム、ベトナムで新規商品企画をテーマにした企画を進行中だ。オーストラリアでは今後、教育旅行やMICEでも同様の企画が成り立つと澤邊氏は語る。
今回のゴールドコーストへの参加者は、関東圏、関西圏を中心に、大分、松山、沖縄などから38名が参加した。若い販売担当者やDS受講者などが中心で、オーストラリアは初めてという参加者も多く、テーマのハネムーン&ウエディングに加え、主要な観光要素も取り入れた盛りだくさんの内容となった。
まさに体験、模擬ウエディング
今回の研修で最も際立ったプログラムは、模擬ウエディングだろう。ワタベウエディングの全面協力で実現したもので、ゴールドコーストでは、一番人気の「サンクチュアリー・コーブ・チャペル」が舞台となった。2006年にリニューアルした同チャペルは、運河に面した全面ガラス張りの優雅な造りが特徴。見学するだけでも印象的だが、模擬ウエディングが行なわれたことで、参加者にとって忘れられない場所となった。
模擬ウエディングは、新郎新婦がリムジンで現れるところからスタート。厳かな入場、結婚の誓い、指輪の交換、結婚証明書への署名といった一連の流れが進行し、思わず本物の式に参列しているような気分になる。パイプオルガンの音色やプロのカメラマンが隋所で撮影する様子にもリアリティが感じられ、参加者の女性陣からは「私も結婚したい!」という声が飛び交ったほど。新郎新婦を同行者のなかから選出したことも手伝って、研修参加者にちょっとした連帯感のようなものが生まれたのは、計算外の効果だったといえるだろう。
午後は、内陸部のマウントタンボリンに位置するワイナリーに移動し、「セダークリークチャペル」を視察した。ビーチリゾートのゴールドコーストにあって、豊かな緑に囲まれた環境が印象的だ。ここでのウエディングは、レストラン内の開放的なガゼボでのパーティが定番となっている。ワイナリー併設のレストランだけあって、ワインも食事もさすがのクオリティ。チャペル、環境ともに、自然派志向のカップルにおすすめといえる。
また、ホテルは「パラッツォ・ヴェルサーチ」を見学。客室のアメニティやレストランの食器など、いたるところにヴェルサーチのロゴが入っているスペシャル感は、まさにカップル向け。敷居の高さは好みの分かれるところだが、ハネムーン&ウエディングという特別なイベントには申し分のないプロパティだろう。
ゴールドコーストの多様性
4日目は、オプショナルツアーとして、熱気球体験や世界遺産ツアーなどが用意された。2日目のビーチ散策を含めると、まさに陸・海・空を舞台にさまざまなアクティビティを盛り込んでおり、ゴールドコーストの多様性を体験できる内容となっている。
今回は世界遺産の森を歩くツアーに参加した。オーストラリア・ゴンドワナ多雨林は、同州とニュー・サウス・ウェールズ州にまたがる37万ヘクタールもの広大なエリア。観光ポイントは、州境に位置するスプリングブルック国立公園とラミントン国立公園だ。見どころは、ひとつの山脈地帯に冷温帯雨林、温帯雨林、亜熱帯雨林を見ることができる点。真夏のゴールドコーストにあって、冷温帯雨林ではひんやりとした空気を感じ、亜熱帯雨林では蒸し暑さを感じることができるのがこの世界遺産の面白いところだ。
オーストラリアでは人気の世界遺産が都市部から簡単にアクセスできる強みがあり、両国立公園もゴールドコーストの中心部から約1時間30分の距離にある。JPTツアーズが催行する1日コースでは、スプリングブルックで3つの展望台を巡り、ラミントンではツリートップを歩くというように、バリエーションに富んだ内容が特徴。曲がりくねった山道は最小限に細く舗装されていたり、あまりショップや休憩所がないという状況もまた、環境保護の先進国オーストラリアならではの取り組みとして学ぶべき点である。
体験こそ最大の学び
研修旅行中、最も多くの感想が聞こえたのは、やはり模擬ウエディングだ。新婦役を務めたエス・ティー・ワールドの下條真由子さんは、「全体の流れが把握でき、何にどれくらい時間がかかるのかといった細かいことまでわかった」と話している。隣に駐車場があるといった環境も含めて3つのチャペルを見学できたのも、ウエディング担当者には参考になったようだ。
ゴールドコースト最大の魅力であるビーチが印象に残ったという参加者も多い。まっすぐに伸びる海岸線とサーファーズパラダイスのビル群が織り成す風景は、確かにゴールドコーストならでは。焼けるほど熱い砂浜を裸足で歩き、海の水で足を冷やした時間は、まさに実地体験だった。
そのほか、「直接販売に役立つホテルが視察したかった」「もう少し自由時間がほしかった」などの声もあったが、盛りだくさんの内容に、「ビーチだけでなく、山や森の魅力も視察できた」という声も多かった。ホームページに体験記を載せるという人や、社内勉強会を開くための資料づくりをするという人もいれば、有給を取って参加した人もいたほど。販売現場はやはり、こうした現地視察や体験に飢えているのではないかと感じた。「クチコミに勝るものはない」という澤邊氏の言葉通り、新しい発見を楽しみ、それを語ることで旅行業界の活性化をはかろうとするJATAの動きに、今後も大いに注目したい。
ゴールドコースト観光局
2010年は前年比15%増をめざす
新型インフルエンザの打撃を受けた2009年、ゴー
ルドコーストへの日本人旅行者数は11万3324名(09年
9月までの1年間)で、前年比の2.4%減となった。
しかし、ゴールドコースト観光局局長のゴードン・
プライス氏は今年、「15%増をめざす」考え。その
ためにもリテールからのセールスリードは効果的と
して、研修旅行を積極的に受け入れていく意向だ。
「ウエディング&ハネムーンの重要性は昔も今も変
わらない。今後も研修旅行には明確なテーマを設け
たい」と話す。
また現在、約3割を占めるFITマーケットには、現地在住の日本人のブログを同局の日
本語ウェブサイトに掲載し、情報を配信している。ビーチクラブの利用法やスーパーマ
ーケットでの買物の仕方といった旅行のヒントがメインで、あくまでも筆者個人の意思
で綴られているのが興味深いところ。女性視点の内容が読者の共感を得ているという。
最新情報としては、Q1リゾート&スパより高いコンドミニアム「ソウル」やヒルトン
が建設中。ビーチウォークのショッピングモールも大改装し、ビーチフロントのレスト
ランやカフェ、バーといった魅力的なスポットが増える予定となっている。
ゴールドコースト観光局日本語ウェブサイト http://www.verygc.jp
取材協力:オーストラリア政府観光局、クーンズランド州観光公社、
ゴールドコースト観光局、ジェットスター航空、ワタベウエディング
取材:竹内加恵