JALは「国際国内ともに発展」へ−稲盛会長、再建可能性を強調

  • 2010年2月2日
 日本航空(JL)会長に2月1日付けで就任した稲盛和夫氏は、同日の会見で安全性を最重要視しながら早急に再建を実現する方針を語った。現在のところJLの将来像やその実現に向けた方策は、外航との提携先などを含めて「着任したばかりで固まっていない」状態。しかし、企業再生支援機構による事業再生計画案については、「航空業界はまったくの素人」であるものの「長く経営に携わった身として、確実に実行に移せば再建は十分に可能」と強調。また、JL社長に就任した大西賢氏は、「JLはいまだに『親方日の丸』の体質を引きずっているところもある」と述べ、「高コスト体質、しがらみなどの負の遺産を徹底的に断ちきって生まれ変わる。過去と決別し、皆様から与えて頂いた最後のチャンスを社員全力でやり抜く」と誓った。




 大西氏によると、今後の方針としては「航空機材の大幅な刷新の実現」「筋肉質かつ柔軟な事業運営体制の実現」「戦略実現のためのリソースの集中投下」を実行。これにより、「世界的にもトップレベルの強靭な体質をもった新たなJLに生まれ変わる」考えだ。また、稲盛氏は「企業の最も大切な財産は社員の心」と述べ、“親方日の丸”と揶揄される現状の変革と「社員がJLグループで働きたい、一丸となって再建に協力したいと思うような企業風土」の醸成をはかると説明。さらに、「企業経営の原点は収入を増やして費用を減らすこと。幹部、社員全員が損益計算に関心を持つようマインドを変えていきたい」とも語った。

 また、国土交通大臣の前原誠司氏が国際線を1社に集約する可能性に言及したことについて、稲盛氏は「国際線のないJLは、国民の皆さんにとってイメージしにくいはず」と指摘。ブラジルに移民したという友人の「JLに乗ると国に帰ったような気がする。心の拠り所であり、なんとしても路線を維持して欲しい」との声を紹介した上で、「国内、国際ともに発展していくようにしたい」と意欲を示した。また、全日空(NH)との関係についても「JLだけの繁栄を望むのではなく、両社が切磋琢磨できれば」と語った。

 なお、会社更生法の適用を申請した後の状況としては、ブランドイメージの低下や安全運航への支障が懸念されたが、稲盛氏は「なんの混乱もなく従来通り多くのお客様にご搭乗頂いている」といい、「国民の皆様や旅行会社など関係者の皆様から温かい励ましとご支援を頂いた賜物」と謝意を述べた。