現地レポート:タイ−プーケット、アンダマン・トラベル・トレード
プーケットへの日本人旅行者数回復に大きな期待
〜アンダマン・トラベル・トレードが開催〜
2009年11月、タイのプーケットでアンダマン・トラベル・トレード(ATT)が開催された。2年に1度開かれるこのトレードショーは、プーケットを中心としたアンダマン地域に特化したもの。世界各地から250社を超えるバイヤーと、地元プーケットをはじめ150社以上のセラーが集まった。日本からも東京、大阪、福岡から旅行会社が参加し、各出展ブースで商談や情報交換が進められた。ATTで掴んだ市場動向と、ポストツアーで訪れたプーケットの観光素材を紹介する。
日本人観光客に回復の兆し、新たなマーケット開拓も
「日本人旅行者数に回復の兆しが見えている」――。プーケット観光協会理事長のソンブーン・チラユ氏はインタビューでそう語り、今後の成長に期待感を示す。2004年12月に発生した大津波の影響で、一時はプーケットを訪れる日本人旅行者は大幅に減少した。その後の復興にともなって回復してきたものの、2008年11月には政治的混乱からバンコク・スワンナプーム国際空港が閉鎖に追い込まれたことから、再び減少に転じてしまった。
さらに2009年は、世界的な景気後退や新型インフルエンザの影響で、日本の海外旅行市場全体が冷え込み、タイもその影響を受けた。しかし、チラユ氏は「タイへの旅行需要は確かに厳しい状況だが、プーケットは政治的混乱もなく、経済危機のわりには海外からの旅行者数は安定している」と現状を説明する。
確かに、プーケットを代表するパトンビーチにはカラフルなパラソルが並び、欧米人を中心に賑わいを見せる。夜になると最大の歓楽街バングラ通りはまっすぐ歩けないほど観光客であふれかえる。「プーケットは安全なデスティネーション。夜も安心して歩ける。ホスピタリティも海外から観光客が多く訪れる要因のひとつだろう」とチラユ氏。また、日本市場については「引き続き最重要マーケットのひとつ」と述べ、タイ国際航空(TG)の成田からの直行便についても「今後も継続してほしい」と付け加えた。
一方、タイ国政府観光庁(TAT)南部地域担当エグゼクティブ・ディレクターのサティット・ニッウォン氏も「プーケットはすべてが普段どおり」と述べ、経済危機によってヨーロッパからの観光客が減っているものの、それに比べると日本人観光客の減少幅は小さいと明かす。今後、日本市場で期待する客層としてはハネムーン、ロングステイ、MICEをあげる。「最大のライバルはバリ島。プーケットの特徴を積極的に発信して、バリとの差別化をはかり、日本人をさらに呼び込みたい」と述べ、プーケットの潜在性の高さをアピールした。
大切な情報収集と発信、ロングステイも高い潜在性
2009年上半期(1月〜6月)のタイへの日本人渡航者数は、前年同期比29.4%減の44万8463人と厳しい状況が続いている。プーケットの現状について今回ATTに参加した旅行会社に聞いてみると、「まだピーク時には戻っていない」と、エーアンドエーの富樫桃子氏は話す。「夜のバングラ通りを歩いていても、賑わいは見せているものの、ほとんどが欧米人であまり日本人の姿は見かけない」というのが現地での実感のようだ。
そこで9月には、タイへの旅行需要の喚起を目的として、TAT、タイ日旅行業協会(TJTA)、TJTA加盟各社、TGおよびバンコクエアウェイズ(PG)は共同で「タイ・レポーター」を実施。タイ各地を旅行した体験談を帰国後にリポートしてもらうモニター企画で、プーケットについてのレポートも多数寄せられた。「こうした生の情報はとても貴重。今後の商品造りにもいかしていきたい」と富樫氏。情報の収集と発信という消費者との双方向コミュニケーションは、タイのファンを増やしていく大切なステップなのかもしれない。
一方、ANAセールスの松尾英樹氏は「プーケットへのハネムーンは増えている」と手応えを示す。ハネムーン・デスティネーションとしてビーチリゾートは相変わらずの人気だが、それだけライバルも多い。そのなかでもプーケットが選ばれている理由は、やはり「安心安全」が多いようだ。また、2008年のスワンナプーム国際空港の閉鎖事件を発端に、「シンガポール経由でプーケットに向かう旅行者が増えた」と明かす。同社ではアクセスにバリエーションを持たせることで商品の利便性を高め、顧客のニーズに応えている。
また、ロングステイ商品を扱う海外ぐらしの斉藤高志氏は「今後、プーケットにも力を入れていきたい」と意欲的だ。同社がプーケットで取り扱っているコンドミニアムはアラマンダ・ラグーナ・プーケットだけだが、同社が扱うビーチリゾートは現在のところ限られているため、プーケットの訴求効果は高いという。斉藤氏は「物価が安いのも長期滞在者にはうれしい。医療体制もレベルが高く、大きな病院には日本人や日本語が話せるスタッフが常駐しているのも安心」と、ロングステイ先としてのプーケットのメリットをあげる。また、ロングステイ経験者にはリピーターが多いことから、プーケット市場の底上げにも一役買いそうだ。
楽しみ方いろいろ、プーケットのビーチと街
プーケットの最大の魅力はやはり美しいビーチが点在するところだ。なかでも、島南部に浮かぶコーラルアイランドはツアーのオプションとして人気を集めている。本島のチャロン湾から小型ボートでおよそ15分。白浜が伸びるビーチでは、パラセイリング、バナナボート、シュノーケリング、水中散歩などさまざまなマリン・アクティビティが楽しめる。本島のビーチのような喧噪からはかけ離れた場所であるため、デッキチェアに寝転びながら静かに時間を過ごすこともここなら可能だ。
一方、夜のオプションの定番となっているのが「プーケット・ファンタシー」。プーケット唯一の本格的なテーマパークで、多彩なアトラクションが揃い、ファミリーで楽しめるのが魅力だ。最大の見所はイリュージョンショー。ゴージャスでアクロバティックなミュージカルショーにコミカルなマジックが加わり、合間にはタイ各地の文化を紹介する場面もある。圧巻は30頭ものゾウが繰り広げるパフォーマンス。その軽快で賢い動きには一見の価値がある。
レジャー・アイランドとして定着しているプーケットだが、その歴史的遺産も興味深い。島最大の街であるプーケットタウンに一歩足を踏み入れると、中国、ヨーロッパそして現地の風俗がミックスした独自の風景が広がる。間口が狭く奥に続く長屋が連なるオールドタウンは、ペナンやマラッカなどでも見られるように、アンダマン海文化の象徴的な街並みだ。街自体はコンパクトにまとまっているため、FITの散策はもちろんのこと、ツアーでの自由時間でも有効に使えるはずだ。
プーケットでフライ&ドライブ、レンタカーで新しい発見を
プーケット空港でレンタカーを借りてフライ&ドライブを体験してみた。まずは滞在先となるパトンビーチのアンダマン・ビーチ・スイート・ホテルをめざす。幹線道路の道幅は広く、スムーズに走る。
牧歌的な風景を走り、プーケット特有の斜度のきつい坂を登りきると、海が見えてきた。ビーチに出ると道幅は狭くなり、人通りやバイクも増えてくる。スピードを落として安全運転に集中。それでも緊張が少ないのは、日本と同じ左側通行だからだろう。日本での運転と感覚が似ているのは、プーケットのみならずタイでドライブを楽しむための最大の利点だ。
また、レンタカーがあれば、アウトレットやバンジージャンプ、地元で人気のレストランなど、パッケージでは行く機会のない場所にも気軽にアクセスできる。旅の幅が広がるフライ&ドライブは、FITには特におすすめだ。
〜アンダマン・トラベル・トレードが開催〜
2009年11月、タイのプーケットでアンダマン・トラベル・トレード(ATT)が開催された。2年に1度開かれるこのトレードショーは、プーケットを中心としたアンダマン地域に特化したもの。世界各地から250社を超えるバイヤーと、地元プーケットをはじめ150社以上のセラーが集まった。日本からも東京、大阪、福岡から旅行会社が参加し、各出展ブースで商談や情報交換が進められた。ATTで掴んだ市場動向と、ポストツアーで訪れたプーケットの観光素材を紹介する。
日本人観光客に回復の兆し、新たなマーケット開拓も
「日本人旅行者数に回復の兆しが見えている」――。プーケット観光協会理事長のソンブーン・チラユ氏はインタビューでそう語り、今後の成長に期待感を示す。2004年12月に発生した大津波の影響で、一時はプーケットを訪れる日本人旅行者は大幅に減少した。その後の復興にともなって回復してきたものの、2008年11月には政治的混乱からバンコク・スワンナプーム国際空港が閉鎖に追い込まれたことから、再び減少に転じてしまった。
さらに2009年は、世界的な景気後退や新型インフルエンザの影響で、日本の海外旅行市場全体が冷え込み、タイもその影響を受けた。しかし、チラユ氏は「タイへの旅行需要は確かに厳しい状況だが、プーケットは政治的混乱もなく、経済危機のわりには海外からの旅行者数は安定している」と現状を説明する。
確かに、プーケットを代表するパトンビーチにはカラフルなパラソルが並び、欧米人を中心に賑わいを見せる。夜になると最大の歓楽街バングラ通りはまっすぐ歩けないほど観光客であふれかえる。「プーケットは安全なデスティネーション。夜も安心して歩ける。ホスピタリティも海外から観光客が多く訪れる要因のひとつだろう」とチラユ氏。また、日本市場については「引き続き最重要マーケットのひとつ」と述べ、タイ国際航空(TG)の成田からの直行便についても「今後も継続してほしい」と付け加えた。
一方、タイ国政府観光庁(TAT)南部地域担当エグゼクティブ・ディレクターのサティット・ニッウォン氏も「プーケットはすべてが普段どおり」と述べ、経済危機によってヨーロッパからの観光客が減っているものの、それに比べると日本人観光客の減少幅は小さいと明かす。今後、日本市場で期待する客層としてはハネムーン、ロングステイ、MICEをあげる。「最大のライバルはバリ島。プーケットの特徴を積極的に発信して、バリとの差別化をはかり、日本人をさらに呼び込みたい」と述べ、プーケットの潜在性の高さをアピールした。
大切な情報収集と発信、ロングステイも高い潜在性
2009年上半期(1月〜6月)のタイへの日本人渡航者数は、前年同期比29.4%減の44万8463人と厳しい状況が続いている。プーケットの現状について今回ATTに参加した旅行会社に聞いてみると、「まだピーク時には戻っていない」と、エーアンドエーの富樫桃子氏は話す。「夜のバングラ通りを歩いていても、賑わいは見せているものの、ほとんどが欧米人であまり日本人の姿は見かけない」というのが現地での実感のようだ。
そこで9月には、タイへの旅行需要の喚起を目的として、TAT、タイ日旅行業協会(TJTA)、TJTA加盟各社、TGおよびバンコクエアウェイズ(PG)は共同で「タイ・レポーター」を実施。タイ各地を旅行した体験談を帰国後にリポートしてもらうモニター企画で、プーケットについてのレポートも多数寄せられた。「こうした生の情報はとても貴重。今後の商品造りにもいかしていきたい」と富樫氏。情報の収集と発信という消費者との双方向コミュニケーションは、タイのファンを増やしていく大切なステップなのかもしれない。
一方、ANAセールスの松尾英樹氏は「プーケットへのハネムーンは増えている」と手応えを示す。ハネムーン・デスティネーションとしてビーチリゾートは相変わらずの人気だが、それだけライバルも多い。そのなかでもプーケットが選ばれている理由は、やはり「安心安全」が多いようだ。また、2008年のスワンナプーム国際空港の閉鎖事件を発端に、「シンガポール経由でプーケットに向かう旅行者が増えた」と明かす。同社ではアクセスにバリエーションを持たせることで商品の利便性を高め、顧客のニーズに応えている。
また、ロングステイ商品を扱う海外ぐらしの斉藤高志氏は「今後、プーケットにも力を入れていきたい」と意欲的だ。同社がプーケットで取り扱っているコンドミニアムはアラマンダ・ラグーナ・プーケットだけだが、同社が扱うビーチリゾートは現在のところ限られているため、プーケットの訴求効果は高いという。斉藤氏は「物価が安いのも長期滞在者にはうれしい。医療体制もレベルが高く、大きな病院には日本人や日本語が話せるスタッフが常駐しているのも安心」と、ロングステイ先としてのプーケットのメリットをあげる。また、ロングステイ経験者にはリピーターが多いことから、プーケット市場の底上げにも一役買いそうだ。
楽しみ方いろいろ、プーケットのビーチと街
プーケットの最大の魅力はやはり美しいビーチが点在するところだ。なかでも、島南部に浮かぶコーラルアイランドはツアーのオプションとして人気を集めている。本島のチャロン湾から小型ボートでおよそ15分。白浜が伸びるビーチでは、パラセイリング、バナナボート、シュノーケリング、水中散歩などさまざまなマリン・アクティビティが楽しめる。本島のビーチのような喧噪からはかけ離れた場所であるため、デッキチェアに寝転びながら静かに時間を過ごすこともここなら可能だ。
一方、夜のオプションの定番となっているのが「プーケット・ファンタシー」。プーケット唯一の本格的なテーマパークで、多彩なアトラクションが揃い、ファミリーで楽しめるのが魅力だ。最大の見所はイリュージョンショー。ゴージャスでアクロバティックなミュージカルショーにコミカルなマジックが加わり、合間にはタイ各地の文化を紹介する場面もある。圧巻は30頭ものゾウが繰り広げるパフォーマンス。その軽快で賢い動きには一見の価値がある。
レジャー・アイランドとして定着しているプーケットだが、その歴史的遺産も興味深い。島最大の街であるプーケットタウンに一歩足を踏み入れると、中国、ヨーロッパそして現地の風俗がミックスした独自の風景が広がる。間口が狭く奥に続く長屋が連なるオールドタウンは、ペナンやマラッカなどでも見られるように、アンダマン海文化の象徴的な街並みだ。街自体はコンパクトにまとまっているため、FITの散策はもちろんのこと、ツアーでの自由時間でも有効に使えるはずだ。
プーケットでフライ&ドライブ、レンタカーで新しい発見を
プーケット空港でレンタカーを借りてフライ&ドライブを体験してみた。まずは滞在先となるパトンビーチのアンダマン・ビーチ・スイート・ホテルをめざす。幹線道路の道幅は広く、スムーズに走る。
牧歌的な風景を走り、プーケット特有の斜度のきつい坂を登りきると、海が見えてきた。ビーチに出ると道幅は狭くなり、人通りやバイクも増えてくる。スピードを落として安全運転に集中。それでも緊張が少ないのは、日本と同じ左側通行だからだろう。日本での運転と感覚が似ているのは、プーケットのみならずタイでドライブを楽しむための最大の利点だ。
また、レンタカーがあれば、アウトレットやバンジージャンプ、地元で人気のレストランなど、パッケージでは行く機会のない場所にも気軽にアクセスできる。旅の幅が広がるフライ&ドライブは、FITには特におすすめだ。
取材協力:タイ国政府観光庁
取材:山田友樹