現地レポート:コロンビア、渡航情報引き下げ契機に観光誘致を積極化
歴史、文化、自然のバランス良い観光素材そろう
新しいデスティネーション、コロンビアに期待
コロンビアといえば治安面で悪いイメージがあり、旅行会社がツアー造成の対象にしづらい国のひとつだろう。だが、コロンビアは変わりはじめている。2002年に就任したウリベ大統領の政策により、治安は改善されつつあり、観光産業の育成にも積極的に取り組んでいる。政府は世界規模で観光プロモーションを展開しており、日本市場に向けては副大統領府と民間との共同プロジェクトが始動した。その一環として10月、同プロジェクトに参画する現地日系オペレーターのアラスアドベンチャーが、アビアンカ航空(AV)日本地区GSAのエア・システムと共同でFAMツアーを実施。参加したのは、秘境に強い旅行会社やガイドブックを発行する出版社、ジャーナリストなど9名。全員が初めてのコロンビア訪問となった。
安全性はもちろん、宿泊施設とインフラにも注目
FAMツアーの実施は今年8月7日に、クンディナマルカ県とボリーバル県を含む多くの地域で、外務省が発する渡航情報の危険情報が「十分注意してください」に引き下げられたのが契機になった。クンディナマルカ県には首都ボゴタがあり、ボリーバル県の県都であるカルタヘナは「港、要塞群と建造物群」が世界文化遺産に認定されているコロンビアを代表する観光地のひとつだ。もともとボコダやカルタヘナは2007年に危険情報が引き下げられていたが、県全体が引き下げになる意義は大きい。ちなみに「十分注意してください」は、日本人ツーリストが多数訪れるエジプトや、カンボジアのアンコールワットなどと同レベルになる。
今回のFAMツアーでは、カルタヘナ、レティシア、ボゴタの訪問を計画。危険情報が1段階に該当するエリアのみで組み立てた。「第1の目的は安全性を見てもらうことだが、旅行者を受け入れられる宿泊施設の充実ぶりや、整備されたインフラも確認してもらいたい」とアラスアドベンチャー代表取締役の坪田充史氏。参加者たちは「治安がどの程度改善されたのか、肌感覚で確かめたい」「送客する場合、どの程度の宿泊施設が用意されるのか、水回りやサービスまで含めて確認したい」「道路事情や移動手段など、インフラも確認したい」など、現実的な送客に向けた、安全面や受入状況を視察のポイントとしてあげていた。
徒歩でのシティウォークや深夜に及ぶアトラクションも
カリブ海に面する港町、カルタヘナの見どころは、世界遺産の要塞や城壁に囲まれた旧市街だ。スペイン・コロニアル様式のパステルカラーに彩られた建物がずらりと並ぶ旧市街には、色とりどりの花が溢れ、洒落たブティックやお土産物を扱うショップなどが点在している。女性ファッション誌のグラビア撮影のロケ地にもなりそうな雰囲気だ。城壁の上部は遊歩道になっていて、一日中大道芸が行なわれるなど、市民の憩いの場として賑わっている。夕陽を眺めるのにぴったりのカフェもある。
観光では、旧市街を2時間ほどかけて徒歩で回るシティウォークツアーや、夜のカリブ海からライトアップされた街を眺めるクルージングもある。参加者の評価が高かったのは、小型高速艇で世界遺産サン・フェルナンド要塞を訪れるツアーだ。16世紀にカリブの海賊から街を守るために造られたという歴史にちなみ、海賊に扮したドライバーやガイドが観光客を出迎える。また、カルタヘナではツーリストポリスが配置されており、旅行者が治安に不安を感じる場合、宿泊施設を通して予約をしておけば町歩きの間中、警官に同行してもらうこともできる。旅行会社がツアーのために依頼することも可能だ。
宿泊施設は、新市街には最新のシティホテルもあるが、参加者からは旧市街のブティックホテルが支持された。コロニアル様式の中庭を囲む回廊式の建物を残したまま内装をリノベーションしたブティックホテルは、部屋ごとに味わいが異なるのが特徴。ブティックホテルは客室数が少ないところも多いが、なかには100室を超える大型ホテルもある。「これなら心配なく送客できる」と、参加者も高く評価した。
アマゾン川へ好アクセス、ジャングルをコンパクトに体験
もうひとつの訪問地レティシアは、北部のカルタヘナとは反対に国土の最南端にあり、中心部から徒歩10分ほどでアマゾン川にアクセスできる。歩いて回れるほど小さい町で「ガイドをつけずに散策しても、ほぼ心配はない」と坪田氏。ホテルからのんびり歩いて船着き場へ行き、ボートでのアマゾン川1日ツアーに参加可能だ。日本でアマゾン川といえばブラジルというイメージがあるが、「コロンビアを拠点にしたアマゾン川への旅のイメージも、定着させていきたい」と坪田氏は話す。
ツアーはランチ付きで、体験を取り入れたプログラムがうまく組み立てられている。パライソ保護地域では世界一大きな蓮「ビクトリア・レヒア」(オオオニバス)を見たり、ミコス島では手のひらサイズの小さなコモンリスザルにバナナで餌づけをしたり、世界最小のサルであるピグミー・マーモセットにも出会える。そのほか、国立アマカヤク自然公園ではアマゾン川で獲れた魚のランチを食べたりするなど、アマゾン川流域を満喫できる充実した内容だ。ボート上では、ブラジル、ペルー、コロンビアの3ヶ国間でボートを停めて見学し、川で生息するピンクイルカなどのイルカを探す。ピンクイルカは90%以上の確率で見つけることができるそうだ。
参加者からは「世界最大のジャングルであるアマゾンの体験としては物足りない」という指摘もあったが、逆に「これだけプログラミングされていれば、探検的要素を求めていない一般的な旅行者にも受け入れられやすい」という意見も。特別な装備を用意しなくてもアマゾン川を体験できるツアーは、女性客や高齢者層にも受け入れられそうだ。
宿泊施設は数えるほどしかなく、ツアーでは2007年に開業した「ホテル・デカメロン・デカロッジ・ティクナ」を利用することになるだろう。全室がコテージタイプのリゾートホテルで「清潔度、水回り、食事、ホスピタリティのすべてにおいて、日本人旅行者を送っても問題ない」と、参加者も好印象を持っていた。
ツアー造成には課題があるも、観光に積極的な姿勢に期待
今回訪れた2つの観光地は、いずれも空港から街の中心地まで車で10分から15分ほどにある。観光拠点として足回りがよく利便性が高い。また、カルタヘナで深夜に街に繰り出したり、レティシアの街中でショッピングをしても特に危険を感じることはなく「この治安なら送客できる」と参加者は口々に評価。充実した宿泊施設や水回り、道路といったインフラが十分整備されていることも好印象であった。一歩先を行く旅慣れた旅行者に提案する、新しいデスティネーションとして期待される。
とはいえ、日本からのツアーを造成するには課題も残る。特に参加者が指摘したのは、スムーズなツアー運営への懸念。例えば、ボゴタでは同時刻に複数のフライトが離発着するため、入国審査場に長蛇の列ができ1時間から1時間半以上待つことが多い。そして今回は突発的な措置で手荷物検査が4度実施され、かなりの時間を要した。またレティシア空港では国内線利用であったが、外国人旅行者は突然別室に呼ばれパスポート提示が求められたほか、航空会社と空港職員とのトラブルが原因で手荷物がすべてハンドチェックとなり、エアコンのないロビーで1時間以上も並んで待つことになった。突然そういう状況になれば、旅行者はかなり驚くだろう。
このほか、英語が通じにくいことも課題としてあげられた。今回の参加者は英語を使いこなし、英語を公用語としない国への旅行にも慣れたメンバーが多かったが、その参加者が驚くほど英語が通じない。空港職員や客室乗務員でも通じないことがある。ちなみに、レティシアのスーパーマーケットでは、「ハウマッチ?」が通じなかった。
しかし、これらの課題点は日本人がコロンビアを旅行する際の障壁となるものであり、不便を理解してもらうことが旅行会社のツアーに参加する意味づけになるともいえる。そのためには、安全や旅程保証などの責任を負う日本の旅行会社の特性や日本人旅行者の感性への配慮ができる、信頼の置ける現地担当者を見つけることが重要だ。
なお、今回のFAMツアーでは、日本からロサンゼルスでAVに同日乗り継ぎを予定していたが、受託手荷物のピックアップが間にあわず、ロサンゼルスで宿泊。さらにコロンビア国内での遅延が重なり、首都のボゴタの視察ができなかった。ボゴタはコロンビア観光の主力であり、治安を含めて参加者が最も現状視察を希望した場所であった。そのため、ボゴタの視察なしでのツアー造成に対する不安があったことも付け加えておく。
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◆コロンビア、観光客誘致に本腰−渡航情報の引下げ好機に、日本向け計画も始動(2009/09/17)
新しいデスティネーション、コロンビアに期待
コロンビアといえば治安面で悪いイメージがあり、旅行会社がツアー造成の対象にしづらい国のひとつだろう。だが、コロンビアは変わりはじめている。2002年に就任したウリベ大統領の政策により、治安は改善されつつあり、観光産業の育成にも積極的に取り組んでいる。政府は世界規模で観光プロモーションを展開しており、日本市場に向けては副大統領府と民間との共同プロジェクトが始動した。その一環として10月、同プロジェクトに参画する現地日系オペレーターのアラスアドベンチャーが、アビアンカ航空(AV)日本地区GSAのエア・システムと共同でFAMツアーを実施。参加したのは、秘境に強い旅行会社やガイドブックを発行する出版社、ジャーナリストなど9名。全員が初めてのコロンビア訪問となった。
安全性はもちろん、宿泊施設とインフラにも注目
FAMツアーの実施は今年8月7日に、クンディナマルカ県とボリーバル県を含む多くの地域で、外務省が発する渡航情報の危険情報が「十分注意してください」に引き下げられたのが契機になった。クンディナマルカ県には首都ボゴタがあり、ボリーバル県の県都であるカルタヘナは「港、要塞群と建造物群」が世界文化遺産に認定されているコロンビアを代表する観光地のひとつだ。もともとボコダやカルタヘナは2007年に危険情報が引き下げられていたが、県全体が引き下げになる意義は大きい。ちなみに「十分注意してください」は、日本人ツーリストが多数訪れるエジプトや、カンボジアのアンコールワットなどと同レベルになる。
今回のFAMツアーでは、カルタヘナ、レティシア、ボゴタの訪問を計画。危険情報が1段階に該当するエリアのみで組み立てた。「第1の目的は安全性を見てもらうことだが、旅行者を受け入れられる宿泊施設の充実ぶりや、整備されたインフラも確認してもらいたい」とアラスアドベンチャー代表取締役の坪田充史氏。参加者たちは「治安がどの程度改善されたのか、肌感覚で確かめたい」「送客する場合、どの程度の宿泊施設が用意されるのか、水回りやサービスまで含めて確認したい」「道路事情や移動手段など、インフラも確認したい」など、現実的な送客に向けた、安全面や受入状況を視察のポイントとしてあげていた。
徒歩でのシティウォークや深夜に及ぶアトラクションも
カリブ海に面する港町、カルタヘナの見どころは、世界遺産の要塞や城壁に囲まれた旧市街だ。スペイン・コロニアル様式のパステルカラーに彩られた建物がずらりと並ぶ旧市街には、色とりどりの花が溢れ、洒落たブティックやお土産物を扱うショップなどが点在している。女性ファッション誌のグラビア撮影のロケ地にもなりそうな雰囲気だ。城壁の上部は遊歩道になっていて、一日中大道芸が行なわれるなど、市民の憩いの場として賑わっている。夕陽を眺めるのにぴったりのカフェもある。
観光では、旧市街を2時間ほどかけて徒歩で回るシティウォークツアーや、夜のカリブ海からライトアップされた街を眺めるクルージングもある。参加者の評価が高かったのは、小型高速艇で世界遺産サン・フェルナンド要塞を訪れるツアーだ。16世紀にカリブの海賊から街を守るために造られたという歴史にちなみ、海賊に扮したドライバーやガイドが観光客を出迎える。また、カルタヘナではツーリストポリスが配置されており、旅行者が治安に不安を感じる場合、宿泊施設を通して予約をしておけば町歩きの間中、警官に同行してもらうこともできる。旅行会社がツアーのために依頼することも可能だ。
宿泊施設は、新市街には最新のシティホテルもあるが、参加者からは旧市街のブティックホテルが支持された。コロニアル様式の中庭を囲む回廊式の建物を残したまま内装をリノベーションしたブティックホテルは、部屋ごとに味わいが異なるのが特徴。ブティックホテルは客室数が少ないところも多いが、なかには100室を超える大型ホテルもある。「これなら心配なく送客できる」と、参加者も高く評価した。
アマゾン川へ好アクセス、ジャングルをコンパクトに体験
もうひとつの訪問地レティシアは、北部のカルタヘナとは反対に国土の最南端にあり、中心部から徒歩10分ほどでアマゾン川にアクセスできる。歩いて回れるほど小さい町で「ガイドをつけずに散策しても、ほぼ心配はない」と坪田氏。ホテルからのんびり歩いて船着き場へ行き、ボートでのアマゾン川1日ツアーに参加可能だ。日本でアマゾン川といえばブラジルというイメージがあるが、「コロンビアを拠点にしたアマゾン川への旅のイメージも、定着させていきたい」と坪田氏は話す。
ツアーはランチ付きで、体験を取り入れたプログラムがうまく組み立てられている。パライソ保護地域では世界一大きな蓮「ビクトリア・レヒア」(オオオニバス)を見たり、ミコス島では手のひらサイズの小さなコモンリスザルにバナナで餌づけをしたり、世界最小のサルであるピグミー・マーモセットにも出会える。そのほか、国立アマカヤク自然公園ではアマゾン川で獲れた魚のランチを食べたりするなど、アマゾン川流域を満喫できる充実した内容だ。ボート上では、ブラジル、ペルー、コロンビアの3ヶ国間でボートを停めて見学し、川で生息するピンクイルカなどのイルカを探す。ピンクイルカは90%以上の確率で見つけることができるそうだ。
参加者からは「世界最大のジャングルであるアマゾンの体験としては物足りない」という指摘もあったが、逆に「これだけプログラミングされていれば、探検的要素を求めていない一般的な旅行者にも受け入れられやすい」という意見も。特別な装備を用意しなくてもアマゾン川を体験できるツアーは、女性客や高齢者層にも受け入れられそうだ。
宿泊施設は数えるほどしかなく、ツアーでは2007年に開業した「ホテル・デカメロン・デカロッジ・ティクナ」を利用することになるだろう。全室がコテージタイプのリゾートホテルで「清潔度、水回り、食事、ホスピタリティのすべてにおいて、日本人旅行者を送っても問題ない」と、参加者も好印象を持っていた。
ツアー造成には課題があるも、観光に積極的な姿勢に期待
今回訪れた2つの観光地は、いずれも空港から街の中心地まで車で10分から15分ほどにある。観光拠点として足回りがよく利便性が高い。また、カルタヘナで深夜に街に繰り出したり、レティシアの街中でショッピングをしても特に危険を感じることはなく「この治安なら送客できる」と参加者は口々に評価。充実した宿泊施設や水回り、道路といったインフラが十分整備されていることも好印象であった。一歩先を行く旅慣れた旅行者に提案する、新しいデスティネーションとして期待される。
とはいえ、日本からのツアーを造成するには課題も残る。特に参加者が指摘したのは、スムーズなツアー運営への懸念。例えば、ボゴタでは同時刻に複数のフライトが離発着するため、入国審査場に長蛇の列ができ1時間から1時間半以上待つことが多い。そして今回は突発的な措置で手荷物検査が4度実施され、かなりの時間を要した。またレティシア空港では国内線利用であったが、外国人旅行者は突然別室に呼ばれパスポート提示が求められたほか、航空会社と空港職員とのトラブルが原因で手荷物がすべてハンドチェックとなり、エアコンのないロビーで1時間以上も並んで待つことになった。突然そういう状況になれば、旅行者はかなり驚くだろう。
このほか、英語が通じにくいことも課題としてあげられた。今回の参加者は英語を使いこなし、英語を公用語としない国への旅行にも慣れたメンバーが多かったが、その参加者が驚くほど英語が通じない。空港職員や客室乗務員でも通じないことがある。ちなみに、レティシアのスーパーマーケットでは、「ハウマッチ?」が通じなかった。
しかし、これらの課題点は日本人がコロンビアを旅行する際の障壁となるものであり、不便を理解してもらうことが旅行会社のツアーに参加する意味づけになるともいえる。そのためには、安全や旅程保証などの責任を負う日本の旅行会社の特性や日本人旅行者の感性への配慮ができる、信頼の置ける現地担当者を見つけることが重要だ。
なお、今回のFAMツアーでは、日本からロサンゼルスでAVに同日乗り継ぎを予定していたが、受託手荷物のピックアップが間にあわず、ロサンゼルスで宿泊。さらにコロンビア国内での遅延が重なり、首都のボゴタの視察ができなかった。ボゴタはコロンビア観光の主力であり、治安を含めて参加者が最も現状視察を希望した場所であった。そのため、ボゴタの視察なしでのツアー造成に対する不安があったことも付け加えておく。
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◆コロンビア、観光客誘致に本腰−渡航情報の引下げ好機に、日本向け計画も始動(2009/09/17)
取材協力:アビアンカ航空(AV)、アラスアドベンチャー
取材:江藤詩文