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日本航空、再建で社員6800名削減、外航と共同事業立ち上げへ−地点撤退も

  • 2009年9月16日
 日本航空(JL)の経営再建計画の策定を支援する有識者会議が9月15日に開催され、計画の方向性が明らかになった。計画は、「路線の大幅な見直し」「コストの削減」「企業構造の柔軟化&多様化」を3本柱に設定。人員削減や外国航空会社との提携などを盛り込んだもので、会議では「基本的な方向性には一定の評価を得られた」(国土交通省航空局航空事業課長の篠原康弘氏)という。ただし、内容や実現可能性を検証できる状態ではなかったといい、次回の会議までにできるかぎり施策の具体化と実現時期や効果額の明確化を進めるよう求められた。

 会議では、まずJL代表取締役社長の西松遙氏が現在の検討状況を説明。その冒頭、西松氏は「これまでのJLは低収益路線を抱え、自己資本が手薄な中で、ボラティリティ(変動性)の高い事業をおこなってきたために、今般のような急激な需要の変動に耐えられない企業体であったことを深く反省している」と述べ、「現在のような環境化においても安定して収益を上げられる強靭な企業体質に生まれ変わることをめざして、大きく3つの柱を立てた」と強調した。

 計画案の詳細について、国土交通省は検討中の事項であることから開示を避けたが、社員を3年間で6800名削減することや外国航空会社との提携といった方向性が示された。注目が集まるデルタ航空(DL)とアメリカン航空(AA)との提携交渉については、社名は出なかったものの10月半ばまでの決着をめざす方針という。

 次回の会合の時期は未定で、航空局では「事務的に進められることを精一杯進めてきたが、(これ以降のプロセスは)まずは新大臣、あるいは新政権に今の状況を説明して判断を仰いでから」との見解だ。計画の策定時期も、提携交渉の進捗状況などによって変わる可能性があるが、こちらについても「よく説明、相談することに尽きる」とした。


▽国際線中心に「過去最大規模」の縮小、外航と共同事業立ち上げへ

 3本柱のうち、「路線の大幅な見直し」では、国際線を中心に大幅に路線の縮小を実施する。現在は内際の路線の比率が5対5であるところを、国際線の比率を引き下げるという。また、内際ともに、空港からの撤退も進める。このほか機材の小型化を進めて需要に見合った供給量とし、ロードファクターや単価の向上をはかる方針だ。路線の縮小について篠原氏は、「競争の確保が目的であり、そのためにはJLが生き残る必要がある」とし、「生き残り」のためには多少の縮小は避けられないとの見方を示した。

 一方、自社運航便は削減するものの、外航との提携強化により外部資源を積極的に活用し、国際競争力の高い効率的、効果的なネットワークの構築をめざす。特に日米路線については、オープンスカイ政策にあわせて、独占禁止法の適用除外措置(ATI)を前提とした共同事業の立ち上げを検討。具体的には例えば、大西洋路線でDLとエールフランス航空(AF)が路線やダイヤの調整、収入プールなどの施策を1つの会社のように実行して効果を挙げていることにならい、JLから「太平洋でもATIの動きがあるので、JLとしても積極的に相手を探したいと思っている」との説明があったという。提携する航空会社によって得られる効果が異なる点については、「それぞれの会社にメリットとデメリットがあり、検討しているところ」だ。

 このほか「コストの削減」では、人件費の削減がコスト削減の最大のポイントとし、6800名の人員削減に加え、乗員の賃金手当ての見直しを含む単価の削減、年金の大幅な見直しに取り組む。また、「企業構造の柔軟化&多様化」では、来年4月をめどに協議している日本郵船との貨物事業分野の共同事業化をはじめ、事業特性に応じて外部資源を導入して資産規模を圧縮する方針。


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