取材ノート:旅行意欲を顕在需要へ−旅行者動向から読み解くヒント
エイビーロードは先ごろ、初めて各国の観光局を対象に海外旅行セミナーを開催した。セミナーは、2008年に海外旅行を経験した約7000人を対象に、予約プロセスから渡航先の選定方法、旅行スタイルなどを聞いた調査に基づいたもので、調査で明らかになった消費者の動向を今後のプロモーションに活かしてもらうのが目的。しかし、日本人旅行者の増加を望むのは旅行会社も同じであり、セミナーの内容は旅行会社にとっても有意義といえるものであった。
同行者と旅行先の関係性
調査対象者の旅行動向のうち、同行者としてもっとも多かったのは「夫婦旅行」(23.5%)、2位が「家族旅行(子供と)」(14.7%)、3位が「友人と(3人以上で)」(12.9%)。ただし、デスティネーションによって大きな違いが生じることも分かった。例えば、ドイツで最も多いのは夫婦旅行(24.7%)だが、次は一人旅(14.5%)。一方、オーストラリアは家族旅行(子供と)(22.0%)が最も多く、2位は夫婦旅行(16.2%)であった。稲垣氏は、「メインターゲットと、その次に取り込みをねらう戦略的ターゲットを意識してプロモーションする必要がある」と語る。
同行者の人数を見ると、「2人」が52%を占めるが、平均人数は3.6人。これを、「過半数が2人」と捉えるか、「2人は半分だけ」と捉えるかでプロモーション方法は変わる。稲垣氏は、「ホテル予約サイトなどの『2名1室で○○円』という表記は、実際は市場の半分しか対象にならない」と述べ、表記の仕方の工夫だけでも、新たな客層を取り込める可能性を示した。
日常に近づいた近距離デスティネーション
旅行日数は短期化が進んでいる。4日が20.1%と最も多く、平均日数は6.9日となった。FITの平均は10.5日と最も長く、ライフステージ別にみると学生の平均が10.4日と他のセグメントを大きく上回った。このことから、セグメントごとに商品日数に変化をつける工夫もできそうだ。
旅行先で比べてみると、特に近距離方面の短期化が目立つ。前年に旅行日数が平均5日以下だった近場を中心とする8エリアのうち、7エリアで日数が短期化した。稲垣氏は、「現在、近場の海外旅行は国内旅行と比較されており、より日常に近いものとして捉えられている」という。つまり、近距離ではデートや友達同士の飲み会、恋人同士の記念旅行など、海外旅行としてではない新たなイメージでプロモーションできる可能性があるといえる。
選択時の心理をついたプロモーションを
パッケージツアー選択時の“決め手”は「価格が内容の割に安い」(51.9%)が最も多く、「価格が安い」(24.3%)が2番目に続く。しかし、選択時に“重視する”ポイントとしては「価格が内容の割に安い」が60.8%で最も多かったものの、「価格が安い」は28.4%で、旅行会社の信頼性(44.5%)やホテルの立地がよい(36.9%)、安心感がある航空会社(34.3%)、などより下位の6番目となっている。このことから稲垣氏は「単に価格重視だけでなく、内容の割に価格が安いというアピールがさらに必要なのでは」とし、店頭でのさらなるプロモーション強化の必要性を指摘した。
また、旅行の検討開始や申し込みのタイミングを認識しておくことも重要という。今回の調査では、旅行を思い立った時期について平均は4.6ヶ月前だったが、最も多かったのは「出発の3〜4ヶ月前」で26.5%となった。検討開始時期の平均は3.0ヶ月前で、最も多いのは31.6%を占める「出発の1ヶ月以内」だった。申込み時期は検討開始時期と同様に「出発の1ヶ月以内」が45.4%で最も多く、平均でも2.3ヶ月前であった。つまり、消費者は3ヶ月前には検討を開始していることから、需要の高い時期などから逆算して商品をそろえたり、情報発信を強化したりすることで旅行者心理にあわせたアピールにつながるはずだ。
このほか、検討開始から申込みまでの検討期間は平均0.7ヶ月で1ヶ月以内が83.4%を占め、2008年調査と比べて検討期間の平均が0.2ヶ月短期化していることがわかる。時間をかけずとも申し込みのきっかけとなるようなプロモーション展開も大切だろう。
海外旅行に行きたい人の意欲を現実のものに
今後も海外旅行に行きたいという人は93%。性別や年代別にみると海外旅行の意欲は男性よりも女性の方が高く、特に40代以下の女性では「積極的に海外旅行に行きたい」が60%を超えている。さらに全体の84%が今年、海外旅行に行きたいとしており、稲垣氏は「前年に海外旅行に行った人は今年も積極的に行きたがっている」と傾向を話す。
同行者別に見ると、一人旅の場合は「積極的に海外旅行に行きたい」が69.0%と最も意欲が高い。行きたい国や地域は、イタリアが39%で1位、次いでオーストラリアが36%、その他中近東・アフリカが35%となる。こういった行きたい国や地域と実際の渡航者数を比較すると必ずしも合致しておらず、行く動機付けが必要なことがわかる。様々なデータからターゲットをどこに選定し、どういった方法でプロモーションを展開するかが重要となるだろう。
※調査期間は4月10日から14日までで、2008年に海外旅行をした7600人を対象としている。調査対象は7600人、集計人数は6110人となった。
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◆満足度1位はドイツ、近場は出かけて良さ再認識する傾向強く−リクルート調査(2009/06/25)
同行者と旅行先の関係性
調査対象者の旅行動向のうち、同行者としてもっとも多かったのは「夫婦旅行」(23.5%)、2位が「家族旅行(子供と)」(14.7%)、3位が「友人と(3人以上で)」(12.9%)。ただし、デスティネーションによって大きな違いが生じることも分かった。例えば、ドイツで最も多いのは夫婦旅行(24.7%)だが、次は一人旅(14.5%)。一方、オーストラリアは家族旅行(子供と)(22.0%)が最も多く、2位は夫婦旅行(16.2%)であった。稲垣氏は、「メインターゲットと、その次に取り込みをねらう戦略的ターゲットを意識してプロモーションする必要がある」と語る。
同行者の人数を見ると、「2人」が52%を占めるが、平均人数は3.6人。これを、「過半数が2人」と捉えるか、「2人は半分だけ」と捉えるかでプロモーション方法は変わる。稲垣氏は、「ホテル予約サイトなどの『2名1室で○○円』という表記は、実際は市場の半分しか対象にならない」と述べ、表記の仕方の工夫だけでも、新たな客層を取り込める可能性を示した。
日常に近づいた近距離デスティネーション
旅行日数は短期化が進んでいる。4日が20.1%と最も多く、平均日数は6.9日となった。FITの平均は10.5日と最も長く、ライフステージ別にみると学生の平均が10.4日と他のセグメントを大きく上回った。このことから、セグメントごとに商品日数に変化をつける工夫もできそうだ。
旅行先で比べてみると、特に近距離方面の短期化が目立つ。前年に旅行日数が平均5日以下だった近場を中心とする8エリアのうち、7エリアで日数が短期化した。稲垣氏は、「現在、近場の海外旅行は国内旅行と比較されており、より日常に近いものとして捉えられている」という。つまり、近距離ではデートや友達同士の飲み会、恋人同士の記念旅行など、海外旅行としてではない新たなイメージでプロモーションできる可能性があるといえる。
選択時の心理をついたプロモーションを
パッケージツアー選択時の“決め手”は「価格が内容の割に安い」(51.9%)が最も多く、「価格が安い」(24.3%)が2番目に続く。しかし、選択時に“重視する”ポイントとしては「価格が内容の割に安い」が60.8%で最も多かったものの、「価格が安い」は28.4%で、旅行会社の信頼性(44.5%)やホテルの立地がよい(36.9%)、安心感がある航空会社(34.3%)、などより下位の6番目となっている。このことから稲垣氏は「単に価格重視だけでなく、内容の割に価格が安いというアピールがさらに必要なのでは」とし、店頭でのさらなるプロモーション強化の必要性を指摘した。
また、旅行の検討開始や申し込みのタイミングを認識しておくことも重要という。今回の調査では、旅行を思い立った時期について平均は4.6ヶ月前だったが、最も多かったのは「出発の3〜4ヶ月前」で26.5%となった。検討開始時期の平均は3.0ヶ月前で、最も多いのは31.6%を占める「出発の1ヶ月以内」だった。申込み時期は検討開始時期と同様に「出発の1ヶ月以内」が45.4%で最も多く、平均でも2.3ヶ月前であった。つまり、消費者は3ヶ月前には検討を開始していることから、需要の高い時期などから逆算して商品をそろえたり、情報発信を強化したりすることで旅行者心理にあわせたアピールにつながるはずだ。
このほか、検討開始から申込みまでの検討期間は平均0.7ヶ月で1ヶ月以内が83.4%を占め、2008年調査と比べて検討期間の平均が0.2ヶ月短期化していることがわかる。時間をかけずとも申し込みのきっかけとなるようなプロモーション展開も大切だろう。
海外旅行に行きたい人の意欲を現実のものに
今後も海外旅行に行きたいという人は93%。性別や年代別にみると海外旅行の意欲は男性よりも女性の方が高く、特に40代以下の女性では「積極的に海外旅行に行きたい」が60%を超えている。さらに全体の84%が今年、海外旅行に行きたいとしており、稲垣氏は「前年に海外旅行に行った人は今年も積極的に行きたがっている」と傾向を話す。
同行者別に見ると、一人旅の場合は「積極的に海外旅行に行きたい」が69.0%と最も意欲が高い。行きたい国や地域は、イタリアが39%で1位、次いでオーストラリアが36%、その他中近東・アフリカが35%となる。こういった行きたい国や地域と実際の渡航者数を比較すると必ずしも合致しておらず、行く動機付けが必要なことがわかる。様々なデータからターゲットをどこに選定し、どういった方法でプロモーションを展開するかが重要となるだろう。
※調査期間は4月10日から14日までで、2008年に海外旅行をした7600人を対象としている。調査対象は7600人、集計人数は6110人となった。
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取材:本紙 秦野絵里香