教育旅行の早期回復に向け旅行会社のサポートに期待−安全対策セミナーで

  • 2009年7月7日
 財団法人全国修学旅行研究協会は7月4日、教職員を対象に「海外教育旅行安全対策セミナー」を開催した。新しい学習指導要領が提示され、教育の一環として海外へ教育旅行を実施する学校が増えてきたが、新型インフルエンザ(H1N1型)の影響により、国内外の修学旅行が相次いでキャンセルや延期となった。この現状を受け、セミナーでは「新型インフルエンザへどう対処していくか」がメインテーマとなった。

 講師として登壇した日本旅行医学会専務理事の篠塚規氏は、海外の先進諸国の対応を例に取りながら、日本での一連の騒動に言及した。科学的データによると新型インフルエンザは弱毒性であり、海外渡航歴がなくても日本国内で感染者が出ている。つまり海外渡航を控えれば感染を防げるわけではない。また、約90年前に大流行したスペインかぜは、イメージが先行した恐怖ストーリーに過ぎないとし、栄養状態や衛生環境、医療技術、情報量などが違う現代と比較しても意味がないと訴える。

 新型インフルエンザを懸念して教育旅行を取り消す必要はないとする一方で、篠塚氏は教育旅行に添乗する旅行会社社員や引率する教職員には、正しい医学知識の教育が必要だと述べる。新型インフルエンザではないが、感染症による旅行者下痢症を発症したツアー客に、旅行会社の添乗員が下痢止めを渡してしまい、症状を悪化させた事例なども挙げられた。新型インフルエンザに怯えすぎる必要はないが、新型にせよ従来型にせよ感染症を発症させないために必要なのは、基礎免疫力の強化と手洗いの徹底。また、新型インフルエンザは持病があると悪化するケースが多いため、持病がある場合は病院で処方された自分の病気に合った薬を、生徒自身に持参させることが大切だと強調した。

 同じく講師を務めた海外邦人安全協会理事でロングステイ財団理事の福永佳津子氏は、外務省発表のデータにもとづき教育旅行に参加した生徒が巻き込まれる可能性のある事件や事故について、具体例をあげながら対策を指導。その上で、「安全対策というと被害者になるケースばかりを想定するが、加害者にならないための事前教育も大切」と述べた。訪問する国の文化や規律を事前に学ぶことが、トラブル回避につながる。そのためにも、教職員の指導だけに頼らず、世界各国の事情に精通した旅行会社の情報提供といった協力が欠かせないと説明した。


※訂正案内(編集部 7月7日 午後2時24分)
訂正箇所:第1段落
誤:新型インフルエンザ(H5N1型)
 ↓
正:H1N1型