現地レポート:ハワイ、オアフ島・ハワイ島
夏場に向けてハワイの需要喚起へ
消費者と同じ体験が、自信を持って販売する意欲に
ハワイ州観光局(HTJ)と日本航空(JL)は、今年で3年目となる「ハワイ研修旅行」を5月下旬に実施し、北海道から沖縄まで約80名が集まった。第1の目的は最新のハワイ視察だが、今年はJLの「JALフラウィーク」プロモーションを兼ねた内容となっている。全参加者のうち約30名はビッグ・アイランド(ハワイ島)も視察し、ハワイのもつ多彩な魅力を体験した。
付加価値高めたハワイ、今年後半の活性化を
今年、ハワイはアメリカ合衆国50番目の州となって50周年を迎える記念の年。昨年の燃油サーチャージ高騰による旅行の手控えといった状況も落ち着き、今年は巻き返しをはかるはずだった。現に今年の出だしは前年を上回りはじめていたという。しかし、成田、大阪、名古屋からハワイへ1日6便を運航するJLは研修旅行中のセミナーで、5月の旅客数は前年比11%減、6月27%減、7月2%減となる見込みと発表(5月20日現在)。新型インフルエンザが需要に与えた影響と、夏の繁忙期に向けて回復しつつある状況がうかがえる。
現地で開催されたセミナーでは、ハワイ関係者が一様に「ハワイで新型インフルエンザの影響を感じなかったことを日本で伝えてほしい」と口をそろえた。HTJではハワイ州知事に旅行者へ向けたメッセージを求め、ハワイ州の対応と安心してハワイを訪れていただきたいと呼びかける内容の文書を5月21日付けで発信している。ちなみに、研修旅行の終了後、日本での騒動が除々に収束に向かい、夏の予約が増加傾向に好転。5月29日には9月の5連休が旅行特需という記事が新聞紙上に掲載されるまでに変化した。
また、ハワイは昨年、アロハ航空の経営破綻したが、セミナーではHTJ代表の一倉隆氏が、現在はハワイアン航空(HA)とアイランドエアー(WP)、ゴー・エアライン(YV)に加え、モクレレ航空(MW)が就航し、アクセスが充実したことを説明。さらに、各島の魅力を際立たせる「ハワイ50選」、「アニバーサリー」をテーマにしたハワイならではの楽しみ方の提案といった、ハワイ旅行の付加価値を高める取り組みも紹介し、「7月には天皇皇后両陛下がハワイをご訪問されるという明るいニュースもあり、夏以降のハワイを盛り上げていきたい」と、参加者にアピールした。
このほか、ハワイ・ビジターズ&コンベンション・ビューロー(HVCB)は、グループ需要の重要性をアピール。現在、日本は北米に次いで2番目に重要なグループマーケットであり、太平洋のクロスロードであるハワイ各島にハードが整い、バイオテクノロジー、天文学、ヘルスケアといった科学分野に長けている点も、多様な団体客を集客する上で強みとなっている。HVCBでは、今年4月から2010年末まで、泊数に応じたインセンティブを提供するプログラムを展開しており、現在27のホテルが協賛しているという。
人気のフライベントも実体験、夏の家族需要をねらう
また、セミナーではJLがこの数年の日本マーケットの落ち込みを自覚しつつ、ハワイが依然人気の高いデスティネーションであることを強調。国際営業部マネージャーの青木剛氏は「安全で、円高メリットがあり、常に新しさを発信する付加価値の高いハワイをアピールしたい」とし、JALフラウィークをはじめとするさまざまな取り組みを説明した。冬のホノルルマラソンなど、他のイベントもあわせ、年間を通してハワイを盛り上げていきたい考えだ。
昨年からスタートしたJALフラウィークは、夏と秋の実施で1万人以上の集客に成功し、今年2年目を展開する。60万人ともいわれる日本のフラ人口をみても、フラは一過性のブームに留っていないことから、HTJとともに打ち出したプロモーションだ。昨年同様、JL便およびJALウェイズ(JO)便の利用者を対象に、フラを「観る」「触れる」「踊る」の項目に分け、抽選で格式高いフライベントに招待したり、フラ体験の場を用意したりといった内容。6月20日から7月31日までと昨年より期間を延長し、子ども向けのケイキ・フラ・コンペティションの招待をとり入れるなど、より家族需要の取り込みに力点を置いている。
今回の研修旅行では主に女性参加者はフラ、男性参加者はハワイアンクラフト作りのワークショップを体験した。フラのワークショップでは約1時間に渡って初心者にも分かるフラレッスンを実施。クラフト作りでは、ククイナッツの実を使ったストラップ作りを体験し、参加者は一心に実の中身を針金で掻き出す作業に熱中した。JALフラウィークは、6月、7月および11月に実施され、JLでは今年、1万2000人の集客をめざしている。
このほか、JLではこの夏、JALマイレージバンクの会員を対象に「JAL家族キャンペーン」を展開。子供用の体験プログラムをそろえ、「家族需要を取り戻したい」と意欲的だ。また、昨年からハワイ線に新しい機内食を導入しており、今回ハワイ線を利用した参加者に直接感想や意見を求めて今後の改善に役立てていきたい意向を示した。
ハワイ島オリジナルの個性をアピール
ハワイ島研修に参加した約30名のうち、9割はハワイ島初心者だ。「これまでオアフ島の話しかすることができなかったが、これでハワイ島も自信を持って勧められる」というカウンター担当者の感想もあり、まさに百聞は一見にしかずの効果をもたらした。ハワイ島には独自の自然環境があり、今回の研修ではハワイ唯一の世界遺産であるハワイ火山国立公園を訪ね、オプショナルでマウナ・ケアの星空観察やマウナラニでのゴルフを体験。そのほか、ハワイ島ならではの素材の数々も巡った。
まず、ヒロではクッキーとチョコレートで有名なビッグアイランドキャンディーとハワイの植物をモチーフにしたアロハシャツで知られるシグ・ゼーンを訪問。どちらも、他国はもちろんホノルルにさえ出店しないポリシーがあり、ハワイ島の付加価値を高めるのにひと役買っている。一方、「マウナ・ロア」のマカデミアナッツはハワイのどこででも購入可能だが、ヒロのビジターセンターでは工場見学をしながら買い物を楽しむことができる。
また、今回は新たにハワイ島の名所となったホノカアの町にも立ち寄った。今年公開された日本映画「ホノカアボーイ」のロケ地となった場所で、映画を見てから訪れると感慨深いものがある。何の変哲もない小さな町だが、これがハワイの真の姿の一端といえそうな、人々の暮らしがひっそりとあった。コナ・コーヒーや地ビールもハワイ島ならではの素材だろう。カイルアコナのUCC直営農園では、コーヒー豆の焙煎体験をすることができ、人気を呼んでいる。地ビールのコナ・ブリュワリーでは、製造工程を見学してから併設のカフェで出来たてのピザと一緒に自慢の一杯を味わいたい。
「JLの直行便を利用してこの島に来る日本人旅行者は年間7万人以上。この島には本当の意味のハワイがある」とビッグ・アイランド観光局のエグゼクティブ・ディレクター、ジョージ・アップルゲート氏は話す。ハワイ島は昨年、ハワイを訪れる日本人旅行者120万人のうち約17万人が訪れている。
旅行者の視点での視察を実務に活かす
今回の研修旅行には、販売、企画、手配などさまざまな部署の担当者が参加。概ね20代、30代の若い世代で、ハワイ初心者も少なくなかった。「テレビや雑誌で知ってはいても、自らの体験が何より実になる」といった新鮮な感想もあり、こうした研修旅行が草の根的な役割を果たしていることを実感する。また、高松からの参加者は羽田経由で成田線を利用し、「羽田利用の利便性を痛感。高松の最寄空港は関空だが、バスで4時間かかることを考えると、今後は羽田経由のハワイを勧めたい」と体験に基づいた意見も飛び出した。
また、HTJが認定するハワイ・スペシャリストも4名が参加している。ハワイ渡航歴十数回という面々が研修に参加するのは、「ホテルのリノベーションなど最新の情報に追いつくことができるから」。また、「いつも気に入った所に足を運んでしまいがちだが、研修に参加することで意外と見ていない定番の観光地などに行くことができた」という利点もあるという。
近年の旅行動向を見ていると、ハワイの魅力としてフラが定着した感を覚えるという声もあった。今回はJALフラウィークの関連で、「1時間たっぷりフラレッスンできたこともいい体験になった」という感想も多かった。
ハワイ販売の現状について、口をそろえて出るのは新型インフルエンザによるグループキャンセルの痛手だ。パッケージツアーのキャンセルもあったという。しかし、FITのリピーターやハネムーナーのキャンセルはほとんどなく、ハワイをよく知る人や、海外旅行に慣れている人には大きな影響を与えなかったことも事実。参加者の多くは空港や機内でマスクをして予防していたが、ハワイに着いたとたんに外して行動していたのは象徴的な光景だった。今回の旅行の実体験を消費者に伝えるという点で、貴重な機会となったに違いない。
消費者と同じ体験が、自信を持って販売する意欲に
ハワイ州観光局(HTJ)と日本航空(JL)は、今年で3年目となる「ハワイ研修旅行」を5月下旬に実施し、北海道から沖縄まで約80名が集まった。第1の目的は最新のハワイ視察だが、今年はJLの「JALフラウィーク」プロモーションを兼ねた内容となっている。全参加者のうち約30名はビッグ・アイランド(ハワイ島)も視察し、ハワイのもつ多彩な魅力を体験した。
付加価値高めたハワイ、今年後半の活性化を
今年、ハワイはアメリカ合衆国50番目の州となって50周年を迎える記念の年。昨年の燃油サーチャージ高騰による旅行の手控えといった状況も落ち着き、今年は巻き返しをはかるはずだった。現に今年の出だしは前年を上回りはじめていたという。しかし、成田、大阪、名古屋からハワイへ1日6便を運航するJLは研修旅行中のセミナーで、5月の旅客数は前年比11%減、6月27%減、7月2%減となる見込みと発表(5月20日現在)。新型インフルエンザが需要に与えた影響と、夏の繁忙期に向けて回復しつつある状況がうかがえる。
現地で開催されたセミナーでは、ハワイ関係者が一様に「ハワイで新型インフルエンザの影響を感じなかったことを日本で伝えてほしい」と口をそろえた。HTJではハワイ州知事に旅行者へ向けたメッセージを求め、ハワイ州の対応と安心してハワイを訪れていただきたいと呼びかける内容の文書を5月21日付けで発信している。ちなみに、研修旅行の終了後、日本での騒動が除々に収束に向かい、夏の予約が増加傾向に好転。5月29日には9月の5連休が旅行特需という記事が新聞紙上に掲載されるまでに変化した。
また、ハワイは昨年、アロハ航空の経営破綻したが、セミナーではHTJ代表の一倉隆氏が、現在はハワイアン航空(HA)とアイランドエアー(WP)、ゴー・エアライン(YV)に加え、モクレレ航空(MW)が就航し、アクセスが充実したことを説明。さらに、各島の魅力を際立たせる「ハワイ50選」、「アニバーサリー」をテーマにしたハワイならではの楽しみ方の提案といった、ハワイ旅行の付加価値を高める取り組みも紹介し、「7月には天皇皇后両陛下がハワイをご訪問されるという明るいニュースもあり、夏以降のハワイを盛り上げていきたい」と、参加者にアピールした。
このほか、ハワイ・ビジターズ&コンベンション・ビューロー(HVCB)は、グループ需要の重要性をアピール。現在、日本は北米に次いで2番目に重要なグループマーケットであり、太平洋のクロスロードであるハワイ各島にハードが整い、バイオテクノロジー、天文学、ヘルスケアといった科学分野に長けている点も、多様な団体客を集客する上で強みとなっている。HVCBでは、今年4月から2010年末まで、泊数に応じたインセンティブを提供するプログラムを展開しており、現在27のホテルが協賛しているという。
人気のフライベントも実体験、夏の家族需要をねらう
また、セミナーではJLがこの数年の日本マーケットの落ち込みを自覚しつつ、ハワイが依然人気の高いデスティネーションであることを強調。国際営業部マネージャーの青木剛氏は「安全で、円高メリットがあり、常に新しさを発信する付加価値の高いハワイをアピールしたい」とし、JALフラウィークをはじめとするさまざまな取り組みを説明した。冬のホノルルマラソンなど、他のイベントもあわせ、年間を通してハワイを盛り上げていきたい考えだ。
昨年からスタートしたJALフラウィークは、夏と秋の実施で1万人以上の集客に成功し、今年2年目を展開する。60万人ともいわれる日本のフラ人口をみても、フラは一過性のブームに留っていないことから、HTJとともに打ち出したプロモーションだ。昨年同様、JL便およびJALウェイズ(JO)便の利用者を対象に、フラを「観る」「触れる」「踊る」の項目に分け、抽選で格式高いフライベントに招待したり、フラ体験の場を用意したりといった内容。6月20日から7月31日までと昨年より期間を延長し、子ども向けのケイキ・フラ・コンペティションの招待をとり入れるなど、より家族需要の取り込みに力点を置いている。
今回の研修旅行では主に女性参加者はフラ、男性参加者はハワイアンクラフト作りのワークショップを体験した。フラのワークショップでは約1時間に渡って初心者にも分かるフラレッスンを実施。クラフト作りでは、ククイナッツの実を使ったストラップ作りを体験し、参加者は一心に実の中身を針金で掻き出す作業に熱中した。JALフラウィークは、6月、7月および11月に実施され、JLでは今年、1万2000人の集客をめざしている。
このほか、JLではこの夏、JALマイレージバンクの会員を対象に「JAL家族キャンペーン」を展開。子供用の体験プログラムをそろえ、「家族需要を取り戻したい」と意欲的だ。また、昨年からハワイ線に新しい機内食を導入しており、今回ハワイ線を利用した参加者に直接感想や意見を求めて今後の改善に役立てていきたい意向を示した。
ハワイ島オリジナルの個性をアピール
ハワイ島研修に参加した約30名のうち、9割はハワイ島初心者だ。「これまでオアフ島の話しかすることができなかったが、これでハワイ島も自信を持って勧められる」というカウンター担当者の感想もあり、まさに百聞は一見にしかずの効果をもたらした。ハワイ島には独自の自然環境があり、今回の研修ではハワイ唯一の世界遺産であるハワイ火山国立公園を訪ね、オプショナルでマウナ・ケアの星空観察やマウナラニでのゴルフを体験。そのほか、ハワイ島ならではの素材の数々も巡った。
まず、ヒロではクッキーとチョコレートで有名なビッグアイランドキャンディーとハワイの植物をモチーフにしたアロハシャツで知られるシグ・ゼーンを訪問。どちらも、他国はもちろんホノルルにさえ出店しないポリシーがあり、ハワイ島の付加価値を高めるのにひと役買っている。一方、「マウナ・ロア」のマカデミアナッツはハワイのどこででも購入可能だが、ヒロのビジターセンターでは工場見学をしながら買い物を楽しむことができる。
また、今回は新たにハワイ島の名所となったホノカアの町にも立ち寄った。今年公開された日本映画「ホノカアボーイ」のロケ地となった場所で、映画を見てから訪れると感慨深いものがある。何の変哲もない小さな町だが、これがハワイの真の姿の一端といえそうな、人々の暮らしがひっそりとあった。コナ・コーヒーや地ビールもハワイ島ならではの素材だろう。カイルアコナのUCC直営農園では、コーヒー豆の焙煎体験をすることができ、人気を呼んでいる。地ビールのコナ・ブリュワリーでは、製造工程を見学してから併設のカフェで出来たてのピザと一緒に自慢の一杯を味わいたい。
「JLの直行便を利用してこの島に来る日本人旅行者は年間7万人以上。この島には本当の意味のハワイがある」とビッグ・アイランド観光局のエグゼクティブ・ディレクター、ジョージ・アップルゲート氏は話す。ハワイ島は昨年、ハワイを訪れる日本人旅行者120万人のうち約17万人が訪れている。
旅行者の視点での視察を実務に活かす
今回の研修旅行には、販売、企画、手配などさまざまな部署の担当者が参加。概ね20代、30代の若い世代で、ハワイ初心者も少なくなかった。「テレビや雑誌で知ってはいても、自らの体験が何より実になる」といった新鮮な感想もあり、こうした研修旅行が草の根的な役割を果たしていることを実感する。また、高松からの参加者は羽田経由で成田線を利用し、「羽田利用の利便性を痛感。高松の最寄空港は関空だが、バスで4時間かかることを考えると、今後は羽田経由のハワイを勧めたい」と体験に基づいた意見も飛び出した。
また、HTJが認定するハワイ・スペシャリストも4名が参加している。ハワイ渡航歴十数回という面々が研修に参加するのは、「ホテルのリノベーションなど最新の情報に追いつくことができるから」。また、「いつも気に入った所に足を運んでしまいがちだが、研修に参加することで意外と見ていない定番の観光地などに行くことができた」という利点もあるという。
近年の旅行動向を見ていると、ハワイの魅力としてフラが定着した感を覚えるという声もあった。今回はJALフラウィークの関連で、「1時間たっぷりフラレッスンできたこともいい体験になった」という感想も多かった。
ハワイ販売の現状について、口をそろえて出るのは新型インフルエンザによるグループキャンセルの痛手だ。パッケージツアーのキャンセルもあったという。しかし、FITのリピーターやハネムーナーのキャンセルはほとんどなく、ハワイをよく知る人や、海外旅行に慣れている人には大きな影響を与えなかったことも事実。参加者の多くは空港や機内でマスクをして予防していたが、ハワイに着いたとたんに外して行動していたのは象徴的な光景だった。今回の旅行の実体験を消費者に伝えるという点で、貴重な機会となったに違いない。
取材協力:ハワイ州観光局、日本航空、ハワイアン航空
取材:竹内加恵