Marriott Bonvoy

修学旅行キャンセルは450件以上、東京と川崎でも発生で今後の影響に懸念

 日本旅行業協会(JATA)の調査で、5月16日以降にキャンセルとなった修学旅行は、5月20日現在海外と国内合計で450件を上回ることがわかった。内訳は国内が343件で海外が108件。JATA事務局長の奥山隆哉氏によると、修学旅行の取り扱いを得意とする7社から回答を得られたといい、全体の7割から8割程度をカバーした数値という。新型インフルエンザの国内での発生が確認されて以降、国内の修学旅行をキャンセルする動きが顕在化。さらに東京と川崎でも1名ずつ感染が確認されたことで、今後さらに大きな影響が出ることが危惧される。

 奥山氏は修学旅行のキャンセルに対して「非常に憂慮している」と危機感を表明。特に、最も影響の大きいと考えられる国内の宿泊施設への影響に懸念を示し、同じ観光産業の業界団体として対応を検討する考えを説明した。JATAとしては、6月を予定するトレインジャックや9月のJATA世界旅行博といった機会で需要を喚起していく方針だ。


▽オピニオン−回復に向け冷静な対応を

 近畿圏だけでなく、関東にも感染者が出たことで、修学旅行を含めて国内外への旅行需要がさらに減退することが予想される。業界では「過剰反応」が懸念されており、行政機関などへの要望も始まっている。しかし、この問題はSARSなどの際にも言われてきたことであり、すぐには効果が出ない可能性がある。

 もともと「過剰反応」の定義も難しい。在日航空会社代表者協議会(BOAR)や在日外国観光局協議会(ANTOR-JAPAN)などによると、諸外国ではすでに需要が戻ってきているといい、アメリカで開催中のPOW WOWでも日本での反応を不思議がる向きが多いという。こうした事実からすれば、確かに何かしらは過剰と言えるだろう。しかし、過剰となる原因は何か、過剰さの基準は、といった問題は、例えば日本社会の構造やその中での日本人のメンタリティなど様々な要素を考えに入れなくては答えが出ないはずだ。国内で感染者が出たことでマスクを着用しはじめる読者もおられることと思うが、その漠然とした不安への対処と「過剰反応」との境界を明確に説明することはなかなか困難ではないだろうか。

 業界を挙げた対応は、世界的な水準から外れた過剰さを是正するためにも必要不可欠で、いつか結果に結びつくと思われる。しかし、繰り返しになるが、結果が出るのがいつかは見えていない。そうであれば、今はそれと同時に現状を受けとめた上で、危機を乗り越え、将来の成長につなげるための方策を冷静に探る必要があるだろう。その意味では、奥山氏は、旅行会社社員の業務に余裕ができることを逆手に取り、デスティネーション・スペシャリストの勉強会などの開催を検討中と語られており、将来の布石として是非実現を期待したい。

 この危機に対する「特効薬」は残念ながら見つかっていないが、いずれにしても旅行会社をはじめ観光産業の従事者がまずできることは、正確な情報を収集し、適切に消費者に提供することだ。また、社内や店舗の衛生管理の徹底など消費者に安心感を与えられる工夫も重要だろう。JATA会長の金井耿氏がかねて言及されているように、旅への想いは今後も存在し続ける。消費者に冷静さを求めるのと同時に、旅行会社も冷静に役目を果たしていくことが、回復への土台につながる。(松本)