現地レポート:オーストラリア(2)、タスマニア州
世界遺産の山と湖の自然体験と西海岸の海辺のリゾート
〜ビクトリア州との組みあわせで新たな広がりの可能性〜
タスマニア州の自然の豊かさは、驚くばかりだ。北海道よりやや狭い島ひとつがそのまま行政単位として州になっているタスマニア島は、どこへ行っても国立公園といった印象だ。何しろ国立公園に国有林と海洋保護区をあわせた面積が島全体の約4割に達し、島の2割が世界遺産なのだ。しかもタスマニア州は、オーストラリアの歴史のごく初期の段階からヨーロッパ人が入植しており、歴史的な見どころも少なくない。さらに今年から、タスマニア州政府観光局の日本代表であるアダム・パイク氏が、隣の州であるビクトリア州の日本代表も兼務することになった。両州の連携がしやすくなり、組みあわせによる新しいツアー造成が可能。これまで以上に日本人の好みにあった魅力ある提案も期待できる。
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◆現地レポート:ビクトリア州で楽しむ庭園都市と絶景の海岸道路(2009/04/17)
クレイドル・マウンテンで希少な体験、タスマニアンデビルに大接近も
今回の研修旅行は、ビクトリア州のメルボルンからフェリーでバス海峡を渡り、タスマニア州デボンポートからスタートした。最初にめざすのは世界自然遺産のクレイドル・マウンテン。デボンポートから直行すると、2時間30分ほどでそのエリアに入る。州最高峰である標高1617メートルのオサ山を中心に、湖の点在する広大なエリアが世界遺産に登録されている。岩肌がむき出しの荒々しい景観と緑濃い温帯雨林の広がりが絶妙なコントラストを描く景観は、どこを撮影しても絵になる。
クレイドル・マウンテンに来たら、ぜひとも立ち寄っておきたいのが「デビルズ@クレイドル」。タスマニア島固有の動物で、絶滅が危惧されているタスマニアンデビルの保護・飼育施設である。夜行性の肉食動物であるタスマニアンデビルは、かつて家畜や家禽を襲う有害動物として駆除され、絶滅の危機に追い込まれた。さらに近年、腫瘍ができて死に至る謎の病気が野生のタスマニアンデビルの間に蔓延し、放って置けば絶滅は必至とされている。ここでは、その貴重なタスマニアンデビルをごく間近に観察ができる。昼間のガイドツアーではフェンス越しに触れて、毛並みの感触を確かめることもできる。
また、クレイドル・マウンテンまで来たら、美しい自然のなかに飛び込みたいと思うのが普通だ。そんな思いを手軽に果たしたいなら、ダブ湖ループ・ウォークがお勧め。最もポピュラーなトレッキングルートで、距離は約6キロメートル。健康な人なら誰でも1時間から2時間ほどで歩き切れる。静けさに満ちたダブ湖と青空をバックに荒々しい岩肌をさらすクレイドル・マウンテンのコントラストは、絶景の名に恥じない。
湖上から絶景の連続を楽しむレイククルーズ
クレイドル・マウンテンまで来たら、ぜひとも足を延ばしてみたいのがレイク・セントクレア。オーストラリアで最も水深の深い湖である。クレイドル・マウンテンからレイク・セントクレアまでの原生林と山々をつなぐ全長80キロメートルのトレッキングルート「オーバーランド・トレック」は、世界中のトレッカーたちの憧れ。気軽には参加できない本格的なトレッキングだが、一般の人もクレイドル・マウンテンとレイク・セントクレアの両方を訪問することで、オーバーランド・トレックのさわりの部分を自分の目で確かめられる。
レイク・セントクレアの湖畔にあるビジターセンターから、レイククルーズが出発しており、1時間30分ほどかけて湖の一部をめぐる。氷河に削り取られた岩山の湖面からの景観と澄み切った水をたたえた深い湖の静寂は、ここでしか味わえないもの。エコポイントと呼ばれる湖畔の上陸スポットに立ち寄り、ガイドが湖畔の植生や生態系などについても解説してくれる。また深い原生林から流れ出る小川の水を汲み、純度100%のナチュラル・ミネラルウォーターを飲む体験もできる。
世界遺産を訪れるリバー・クルーズ、囚人の島にも上陸観光
クレイドル・マウンテンやレイク・セントクレアとの組みあわせに適しているのが、タスマニア西海岸を代表する港町、ストローン。といっても人口わずか900人の静かな町だ。かつては世界で最も価値が高い木材として取引されたヒューオンパインの出荷拠点として栄えたが、伐採が禁じられた現在は西海岸屈指のリゾートとして知られるようになった。
ストローン・ビレッジに宿泊し、小さくて可愛らしい町なかを散策するだけでも楽しいが、一番のアトラクションは世界遺産エリアを訪れるリバー・クルーズ。ストローンを出発してマッコリー湾へ出る。そこからゴードン川を遡り、川に沿って広がる原生林やマッコリー湾の島に上陸観光したりする4時間ほどのクルーズだ。上陸観光では樹齢1000年以上とされるヒューオンパインを観察したり、原生林のミニ・トレッキングを楽しめる。
興味深かったのはマッコリー湾の囚人の島、サラ島。オーストラリア最古の監獄跡が残り、生い茂る木々が光をさえぎる暗がりには脱獄不可能とされた島に閉じ込められた数多くの囚人たちの怨念が、いまも立ち込めているようなおどろおどろしい雰囲気。改めて、流刑の地として出発したオーストラリアの歴史を思い起こさせる。
相性の良いビクトリア&タスマニアの可能性
今回の研修旅行は、ビクトリア州とタスマニア州のハイライトを訪れた。メルボルンはオーストラリア第2の都市であり、ヨーロッパのお洒落な街を思わせ、都市の魅力にあふれている。一方のタスマニア州は、自然の宝庫ともいうべきデスティネーション。両者の組みあわせの相性はかなり良いといえる。
今年から、ビクトリア州とタスマニア州の両観光局の日本代表を、タスマニア州政府観光局の日本局長であったアダム・パイク氏が兼務することになり、組みあわせの可能性が一段と広がった。地理的にも隣同士の両州。タスマニア州は日本からのアクセスを考えるとメルボルンを起点にするのが最適という事情もあって、両州の連携が理想的。パイク氏も「メルボルンの都市の魅力と、タスマニア州の自然の魅力をあわせることができれば、大きな可能性につながる」と期待する。早くも両州の連携に着手し、今回の研修旅行を実現した。今後は旅行会社がアイディアを凝らす余地がたっぷりある、楽しみの豊富な提案が可能となりそうだ。
〜ビクトリア州との組みあわせで新たな広がりの可能性〜
タスマニア州の自然の豊かさは、驚くばかりだ。北海道よりやや狭い島ひとつがそのまま行政単位として州になっているタスマニア島は、どこへ行っても国立公園といった印象だ。何しろ国立公園に国有林と海洋保護区をあわせた面積が島全体の約4割に達し、島の2割が世界遺産なのだ。しかもタスマニア州は、オーストラリアの歴史のごく初期の段階からヨーロッパ人が入植しており、歴史的な見どころも少なくない。さらに今年から、タスマニア州政府観光局の日本代表であるアダム・パイク氏が、隣の州であるビクトリア州の日本代表も兼務することになった。両州の連携がしやすくなり、組みあわせによる新しいツアー造成が可能。これまで以上に日本人の好みにあった魅力ある提案も期待できる。
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クレイドル・マウンテンで希少な体験、タスマニアンデビルに大接近も
今回の研修旅行は、ビクトリア州のメルボルンからフェリーでバス海峡を渡り、タスマニア州デボンポートからスタートした。最初にめざすのは世界自然遺産のクレイドル・マウンテン。デボンポートから直行すると、2時間30分ほどでそのエリアに入る。州最高峰である標高1617メートルのオサ山を中心に、湖の点在する広大なエリアが世界遺産に登録されている。岩肌がむき出しの荒々しい景観と緑濃い温帯雨林の広がりが絶妙なコントラストを描く景観は、どこを撮影しても絵になる。
クレイドル・マウンテンに来たら、ぜひとも立ち寄っておきたいのが「デビルズ@クレイドル」。タスマニア島固有の動物で、絶滅が危惧されているタスマニアンデビルの保護・飼育施設である。夜行性の肉食動物であるタスマニアンデビルは、かつて家畜や家禽を襲う有害動物として駆除され、絶滅の危機に追い込まれた。さらに近年、腫瘍ができて死に至る謎の病気が野生のタスマニアンデビルの間に蔓延し、放って置けば絶滅は必至とされている。ここでは、その貴重なタスマニアンデビルをごく間近に観察ができる。昼間のガイドツアーではフェンス越しに触れて、毛並みの感触を確かめることもできる。
また、クレイドル・マウンテンまで来たら、美しい自然のなかに飛び込みたいと思うのが普通だ。そんな思いを手軽に果たしたいなら、ダブ湖ループ・ウォークがお勧め。最もポピュラーなトレッキングルートで、距離は約6キロメートル。健康な人なら誰でも1時間から2時間ほどで歩き切れる。静けさに満ちたダブ湖と青空をバックに荒々しい岩肌をさらすクレイドル・マウンテンのコントラストは、絶景の名に恥じない。
湖上から絶景の連続を楽しむレイククルーズ
クレイドル・マウンテンまで来たら、ぜひとも足を延ばしてみたいのがレイク・セントクレア。オーストラリアで最も水深の深い湖である。クレイドル・マウンテンからレイク・セントクレアまでの原生林と山々をつなぐ全長80キロメートルのトレッキングルート「オーバーランド・トレック」は、世界中のトレッカーたちの憧れ。気軽には参加できない本格的なトレッキングだが、一般の人もクレイドル・マウンテンとレイク・セントクレアの両方を訪問することで、オーバーランド・トレックのさわりの部分を自分の目で確かめられる。
レイク・セントクレアの湖畔にあるビジターセンターから、レイククルーズが出発しており、1時間30分ほどかけて湖の一部をめぐる。氷河に削り取られた岩山の湖面からの景観と澄み切った水をたたえた深い湖の静寂は、ここでしか味わえないもの。エコポイントと呼ばれる湖畔の上陸スポットに立ち寄り、ガイドが湖畔の植生や生態系などについても解説してくれる。また深い原生林から流れ出る小川の水を汲み、純度100%のナチュラル・ミネラルウォーターを飲む体験もできる。
世界遺産を訪れるリバー・クルーズ、囚人の島にも上陸観光
クレイドル・マウンテンやレイク・セントクレアとの組みあわせに適しているのが、タスマニア西海岸を代表する港町、ストローン。といっても人口わずか900人の静かな町だ。かつては世界で最も価値が高い木材として取引されたヒューオンパインの出荷拠点として栄えたが、伐採が禁じられた現在は西海岸屈指のリゾートとして知られるようになった。
ストローン・ビレッジに宿泊し、小さくて可愛らしい町なかを散策するだけでも楽しいが、一番のアトラクションは世界遺産エリアを訪れるリバー・クルーズ。ストローンを出発してマッコリー湾へ出る。そこからゴードン川を遡り、川に沿って広がる原生林やマッコリー湾の島に上陸観光したりする4時間ほどのクルーズだ。上陸観光では樹齢1000年以上とされるヒューオンパインを観察したり、原生林のミニ・トレッキングを楽しめる。
興味深かったのはマッコリー湾の囚人の島、サラ島。オーストラリア最古の監獄跡が残り、生い茂る木々が光をさえぎる暗がりには脱獄不可能とされた島に閉じ込められた数多くの囚人たちの怨念が、いまも立ち込めているようなおどろおどろしい雰囲気。改めて、流刑の地として出発したオーストラリアの歴史を思い起こさせる。
相性の良いビクトリア&タスマニアの可能性
今回の研修旅行は、ビクトリア州とタスマニア州のハイライトを訪れた。メルボルンはオーストラリア第2の都市であり、ヨーロッパのお洒落な街を思わせ、都市の魅力にあふれている。一方のタスマニア州は、自然の宝庫ともいうべきデスティネーション。両者の組みあわせの相性はかなり良いといえる。
今年から、ビクトリア州とタスマニア州の両観光局の日本代表を、タスマニア州政府観光局の日本局長であったアダム・パイク氏が兼務することになり、組みあわせの可能性が一段と広がった。地理的にも隣同士の両州。タスマニア州は日本からのアクセスを考えるとメルボルンを起点にするのが最適という事情もあって、両州の連携が理想的。パイク氏も「メルボルンの都市の魅力と、タスマニア州の自然の魅力をあわせることができれば、大きな可能性につながる」と期待する。早くも両州の連携に着手し、今回の研修旅行を実現した。今後は旅行会社がアイディアを凝らす余地がたっぷりある、楽しみの豊富な提案が可能となりそうだ。
フェリー到着後の朝ごはんでタスマニアの風土を味わう
メルボルンからもっともポピュラーな移動手段は
フェリー「スピリット・オブ・タスマニア」号。
船内1泊で両州を結び、宿泊を兼ねた快適な移動手
段である。デボンポートに到着するのは翌朝。ここ
から、観光のメインである世界自然遺産のクレイド
ル・マウンテンへ向かうのだが、その南下の途上で
ぜひ、美味しいスポットに立ち寄りたい。国道1号線
を車で10分ほどのラトローブにあるチョコレート・
ファクトリー「ハウス・オブ・アンバース」だ。小
さなファクトリーながら試食や製造工程の見学がで
き、併設のカフェでは朝食やランチ、アフタヌーン
ティーも可能。フェリー到着後の朝食をこのチョコ
レートファームでとるのもおすすめだ。美味しい
チョコクロワッサンなどをたっぷり食べて腹ごし
らえできる。
さらに1号線を20分ほど南下すると、今度はエリ
ザベスタウンにチーズファームがある。カラフル
なペインティングを施されたアーティスティックな
牛のマネキンが出迎えてくれるユニークなファーム
で、ここの売り物もかなりユニーク。オーストラリ
アで大ヒット商品となっているワサビチーズがそれ
だ。タスマニアは乳製品も美味しく、純和風の食材
であるワサビをチーズにあわせたユニークなひらめ
きがミソ。ワサビのピシッとした味の引き締め感が
チーズによくあう。チーズファームへの立ち寄りは
ドライブ途中の休憩、気分転換にもぴったりだ。
取材協力:ビクトリア州政府観光局、タスマニア州政府観光局
取材:高岸洋行