チャーター活性化、リスクの分散・低減がカギ−全関係者で協力して促進を

▽チャーターのメリットは「地方需要活性化」と「ピーク期の座席確保」

權田氏はチャーター便について、地方需要の活性化と首都圏のピーク時の座席の確保の意義が大きいと語る。特に成田空港のオンラインチャーターが可能になったことは、「高需要期のオントップが可能になり、大きなビジネスチャンス」という。KNTでは2008年に全体の海外旅行取扱人数が前年比7%減となったものの、チャーターは14%増。これは、ロタ島やスイス、韓国の襄陽など、積極的に独自の展開を図った結果だ。ただし、全体の取扱人数に占めるチャーター利用者の割合は5%以下で、「15%程度には拡大したい」との目標を掲げている。今年も前年比5%増の4万人をめざす方針だ。
松江氏も、地方の旅行会社の立場から「地方のエージェントにとって、チャーターは非常に大きな収入になる」とメリットを説明。ひろでん中国新聞旅行が、広電観光旅行事業部門と中国新聞トラベルサービスであったころから各社で継続的に取り組んでおり、統合後も「5年目で30回以上は実施している」という。また、昨今は船のチャーターも実施。年に2回から3回程度、ウラジオストクや済州・釜山に向けて、400名規模の船をチャーターしており、これも「大きな収入になる」という。なお、航空機のチャーターには地元空港への定期便誘致のためのプログラムチャーターも多く含んでおり、「地方の宿命ではないか」と語る。
▽外国航空会社のリスク軽減に仕組みづくりを

議論では、外国航空会社を使用する上でのリスクについて指摘された。外国航空会社について權田氏は「本当に飛んでくるのか、あるいは機内食を積んであるか」といった基本的な不安や、その不安を解消する役目の日本地区総代理店(GSA)の財務状態が脆弱な場合があるといったリスクを指摘し、何らかの対策や仕組み作りが必要と説明。松江氏も、「地方では、GSAを含めて交渉の窓口がないのが現状」とし、さらに「GSAがどこまで責任を持ってくれるのか」と指摘した。

▽地方では旅行会社同士の協力が重要−「LLP」も紹介

また、地方空港の場合、広島にとっての関空や福岡空港など、比較的近距離にある空港の定期便との競合も課題の一つ。広島県では「県民280万人のうち出国者が28万人であったが、広島空港を利用した人は13万人から14万人」(松江氏)だ。これは、チャーター料金が安くなく、「仮に安く仕入れられたとしても、定期便の運賃より下げられない」(松江氏)ことも一因という。
このほか田端氏は、チャーターのリスク軽減策としてLLP(有限責任事業組合)の仕組みも紹介。LLPは、経済産業省によると出資者(組合員)が出資額の範囲までしか責任を負わない「有限責任」や、柔軟に損益や権限を分配できる「内部自治の徹底」、組織段階では課税せず、出資者に直接課税する「構成員課税」といった特徴を持つ事業体。チャーターにおいても、より多く販売した旅行会社により多くの収益を分配するなど、複数の会社が柔軟に連携できることがメリットだ。