基礎知識から応用まで、クルーズ販売のアプローチ方法、セミナーで意見交換

クルーズの基礎知識
クルーズマーケットは大きく3つのカテゴリーに区分できる。その基準は料金とクルーズ船のサービス体制。マーケット全体の80%を占めるのがカジュアルクラスで、料金が1泊70ドルから、乗客と乗組員の比率が3対1。全体の15%を占めるプレミアムクラスは1泊200ドルから、乗客/乗組員比は2対1。最上級クラスのラグジュアリークラスは全体の5%で、1泊400ドル以上、乗客/乗組員比は1対1とされている。
クルーズの料金は固定制と変動制があり、通常の旅行商材では馴染みがないのが変動制。これは船会社が販売動向にあわせて料金を変動させるもので、たとえば1泊1000ドルで販売された同じキャビンが、販売順調なら1ヶ月後に1100ドルに値上がりし、その後販売が伸びずに空室が出そうなら、さらに1ヶ月後には600ドルに値下げして販売されることもある。変動制については「欧米では当たり前のこととして受け入れられているが、日本では顧客から説明を求められ、理解を得るのが難しいこともある」(オーバーシーズトラベル・クルーズ事業部係長の本郷芳人氏)のが実情だ。
クルーズ販売のポイント

またクルーズ専業のイークルーズ社長の大井潔氏は、クルーズ独特の料金の変動制をいかす方法を紹介。「変動制のクルーズ料金は、主市場のアメリカが不振になるとガクンと下がる傾向にある。1泊200米ドルのプレミアムクラスのクルーズが、7泊8日で400米ドルというケースもある。販売できる期間が一定でなくリスクもあるが、うまく使えば大きな武器になる」と説明する。
クルーズ販売の問題点
クルーズ販売には、いくつかの問題点も指摘された。まず、あげられたのは取消料の問題。船会社が個別に設ける取消料は、標準旅行業約款の規定とは条件が異なるため、販売上のネックとなっていたことから、日本の旅行会社が販売しやすいようにクルーズ約款が設けられたほか、旅行者のためにはクルーズ保険が販売されるようになった。しかしクルーズ約款では、たとえば60日前の取消料は旅行代金の12.5%とされているが、船会社の中には25%とするところもあり、差額は依然として旅行会社のリスクとなる。クルーズバケーション営業部長の猪股富士雄氏は「3泊4日の短い旅行ならともかく、3ヶ月のワールドクルーズにでもなれば旅行代金の12.5%ではまったくカバーできない」と実情を明かす。
予約金(デポジット)や支払いについても課題がある。売り手市場気味のクルーズ・ビジネスにおいては、キャビン確保のために予約金が必要で、キャンセルしても返却不可の場合もある。支払いも出港前が一般的だ。このため旅行会社からは、「予約金は仕方がない面があることは認めるが、何日前までなら払戻しが可能といった交渉の余地があれば、やりやすい」(ニッコウトラベル営業企画主任の板垣明朗氏)といった指摘もあった。
また、ブロッケージについては、インターナショナルクルーズのマーケティングクルーズ事業部長の堀内浩氏が「世界的にブロッケージでクルーズを販売しているのは日本くらい」という。仕入れが1年から10ヶ月前で、半年前には船会社からネーミングの催促がくる。さらに90日から120日前には「調整」の名目で未販売分の返却が求められるのが一般的だ。これに対し、前出の板垣氏は「早期発表、早期販売を心がけ、先手先手を意識することで対応している」と述べたほか、クラブツーリズムのアジア・中国旅行センター・東南アジアチーフの大場和世氏も「2週間前のネーミングという通常ツアーの仕入れに慣れていると最初は戸惑い、流れを把握するのに時間が必要だが、慣れれば何とか対応できるようになる」と、業務上の工夫を話した。
クルーズ市場の高い将来性

世界的な統計を基にクルーズと旅行会社の関係を見ると、クルーズ未経験者の海外旅行における旅行会社利用は44%と半数以下だが、クルーズ利用者は60%に跳ね上がる。また2007年のクルーズリピーターの旅行会社利用率は74%と高く、旅行会社離れが日本以上に進む欧米においてもクルーズは旅行会社の重要な商材になっていることが分かる。
低迷する海外旅行市場にあって、クルーズは将来性と成長性が高く、旅行会社との相性もよい。今後ますます旅行業界にとっての重要性を増していきそうだ。
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取材:高岸洋行