中部、インバウンドと貨物需要の確保で需要拡大へ−国際線長距離路線は死守

  • 2009年2月16日
 中部国際空港代表取締役副社長の伊藤鎭樹氏は今期の業績について、「冬ダイヤの状況をふまえると経常損益で25億円程度の損失になるだろう」と見通しを示した。昨年の中国情勢の混迷や原油高による航空路線の縮小から世界的な経済危機に至るまでの市場環境を、「大波に台風が追い打ちをかけた」と表現。その環境下で「中部圏の強みであったビジネス需要が急激に減少した」とし、さらに国際線旅客便の運休や減便が進んだとの見解を示した。こうした現状に対し、中部ではまず3月から取締役は20%、執行役員は10%の報酬を自主返上するという。このほか、短期的な課題としてビジネス需要が支える国際線長距離路線を死守したい考えだ。既に、中部圏企業に対して出張抑制緩和や、具体的な路線の提案を含めて出張時の中部利用の徹底を要請している。

 また、中長期的な取組みとしてインバウンド誘致、貨物需要の取り込みの2点を挙げ、需要拡大の基盤作りを進めていく方針を示した。インバウンド誘致では、全日空(NH)と中部圏観光業者とともに昨年12月に広州からのFAMツアーを実施。NHはその後、3月29日からの中部/広州線の運休を決定しているものの、伊藤氏は「広州の旅行会社に中部の多様な観光資源を認知してもらえた」と中部圏についての認知向上につながったことに自信を示す。今後も航空会社、空港、地域の3者共同による誘致活動が最も効果的であるとの考えで、2月には香港やマカオ、3月にはヨーロッパやロシアから同様のFAMツアーを実施する予定だ。

 貨物においては、航空貨物全体量が減少する中で取扱量の増加は見込めないものの、中部圏でのシェア拡大を進めたい考え。現在、中部圏の航空貨物約70万トンのうち、中部を利用する貨物量は約20万トンに留まっているが、中部発着便の利用促進キャンペーンである「フライ・セントレア・カーゴ」の活動が奏功し始めているという。これは、中部圏の荷主企業に中部発着便利用の宣言とともに自社の貨物情報を提供してもらうというもので、既に134社が参加。今後は中部圏のほか北陸や長野などの周辺地域からの貨物需要の取り込み積極的に進めていく。