「世界の高速鉄道」(4)−スペイン、イタリア、北欧

  • 2008年12月26日
  フランスとドイツを中心に、EU圏内の高速鉄道網が広がっており、将来そのネットワークに加わることを目指し、周辺国で開発が進んでいる。

【スペイン】
 スペインはフランスとの間にピレネー山脈がそびえるという地勢的な理由に加え、国内の軌道規格が他の国と異なる。つまり、レールの幅が隣国と異なるために直通運転ができないのだ。そこで将来、他国のネットワークと接続するため、スペインの高速鉄道は日本の新幹線のように、他の国内線とは異なる軌道の新線を建設することとなった。それが、スペイン国鉄が運営する高速鉄道ネットワーク「アベ(AVE)」である。

 開業は1992年。セビリアで開催された万博に合わせて、首都マドリッドとセビリア間で運転が始まった。フランスのTGVがパリをハブに各地にネットワークを広げているように、「アベ」もマドリッドを中心に、国内に路線網を拡充している。現在はマドリッドから南(セルビア方面)に向かう路線のほか、バルセロナ方面の北東、バリャドリッド方面の北西に向かう3つの路線が営業中。そのほか、部分的に開業している路線はあるが、ネットワークとしては整備中の段階である。

 スペインの2大都市であるマドリッド/バルセロナ間を結ぶ路線が2008年2月、開業した。この路線を延伸し、地中海に沿ってフランスとの国境をまたぐ路線が建設中で、TGVが運行するマルセイユなどで「アベ」との接続を目指している。2012年にはパリとバルセロナが高速列車で結ばれる予定。カタールニャ州、バスクへの路線の拡充も進み、北部国境での接続を計画している。また、西の隣国ポルトガルへの路線工事も進められている。


【イタリア】
 ピレネー山脈がフランスとスペインを隔てている地理的要因と同様に、イタリアと他の国々の間にはアルプス山脈が横たわる。EU圏に広がる高速列車ネットワークには、なかなか接続しにくい環境がある。しかし、高速列車の開発で、実はイタリアはヨーロッパで最も早くから開発に取り組んでいる国である。

 今から30年も前の1977年、ローマ近郊の町とフィレンツェを結ぶ、在来線と異なる高速鉄道用の路線が開業した。これは欧州では最初である。ところが、その後の計画が遅々として進まなかった。日本のように山がちな国土であることも一因で、比較的平坦なアルプス以北の国々と比べ、大きなハンディがある。それでも1991年に設立された高速鉄道会社TAVのもと、近年は路線網の充実が図られている。トリノ、ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ナポリといった大都市が高速鉄道で結ばれている。現在、「ユーロスター・イタリア」という高速列車が運行している。

 スイスで進められている「アルプトランジット計画」による、アルプス山脈のもとを貫通するトンネルが完成すれば、スイスやドイツ、またTGVの延伸によるフランスとの接続も進められている。


【北欧】
 スカンジナビアの国々では、スウェーデンが積極的に高速列車の開発に取り組んできた。1990年に首都ストックホルム/ヨーテボリ間で運行を開始。徐々に国内の路線網を広げている。隣国のデンマークのコペンハーゲンに路線が伸び、ドイツの高速鉄道ICEと接続を図ることができる。EU圏であるが、バルト海を挟んでいる地理的条件、山岳部を多く含む人口密度の低い広大なエリアを含むため、北欧諸国での高速鉄道ネットワークの広がりの大きな課題となるだろう。



▽関連サイト

■スペイン政府観光局によるAVE日本語サイト
http://www.spain.info/JP/TourSpain/Reportajes/0/Transportes-Renfe?SubSys=Transp?language=ja

■スペイン国鉄時刻表検索(英語)
http://www.renfe.es/horarios/english/index.html

■レイルヨーロッパ(ユーロスター・イタリア)
http://japan.raileurope.com/japan/rail/specialty/es.htm

■スウェーデン国鉄(英語)
http://www.sj.se/


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