「世界の高速鉄道」(2)−ドイツ・ICE

  • 2008年12月24日
 フランスと並ぶ高速鉄道大国がドイツ。フランスのTGVの開業から遅れること10年。1991年6月にハンブルクとミュンヘンの間を最高時速250キロメートルで結ぶICE(Inter City Express)1がデビューした。この路線は、開業5年で乗客数は1億人を突破。その後1997年にケルンとベルリンを結ぶICE2が開通、2000年にはケルンとフランクフルトを約1時間10分で結ぶICE3が登場した。

 こう書くと、ドイツがフランスの後塵を拝しているようだが、ドイツでは1960年代にはすでに時速200キロメートルの営業運転を始めており、「速い列車」という意味はドイツのほうが先といえる。

 フランスとドイツにはほかにも違いがある。TGVは一極集中の大都市であるパリをハブとして、各地に路線が伸びているが、パリのような大都市がないドイツでは、各都市間を高速鉄道でつなぐネットワークが発達している。高速化による移動時間の短縮だけでなく、乗り継ぎの効率化(主要駅では同一ホームでの接続)などをすすめ、列車の速さだけでなくシステムとしての高速化を進めている。そのネットワークは国内だけでなく、スイス、オランダ、ベルギー、オーストリア、デンマーク、そして高速鉄道のライバル、フランスのパリにも乗り入れており、ヨーロッパの高速鉄道ネットワークの一翼を担っている。

ICEは最高時速330キロメートルを誇るだけでなく、座席間隔の広さといった居住性の高さでも知られている。また食堂車が連結され、単なる移動手段にとどまらず、鉄道の旅を楽しむのに必要な要素を備えた列車だ。例えばICE3の1等車両は濃紺の革製でドイツらしい重厚な座席が備えられ、2等車には家族用コンパートメントが設けられているものもある。また運転席後ろの高速展望席「コックピット・ラウンジ」があり、食堂車ではもちろんドイツビールが楽しめる。

 また、ICEは2時間の運転間隔で運行されているのも特徴のひとつ。途中下車の旅でも、とても計画が立てやすい。例えばフランクフルトとライプツィヒ間の380キロメートルにわたるゲーテ街道。世界遺産ヴァルトブルク城や芸術と文化の町ワイマールなどがあり、日本人旅行者も数多く訪れるところで、ICEはそのルートのすべて町を通過する。途中下車の観光の後に高速列車で移動を繰り返すことで、密度の高い旅ができる。正確なダイヤと豊富な運転本数、そして各地に広がるネットワーク。これだけ揃うと旅を組み立てるのが楽しくなるだろう。


写真提供:レイルヨーロッパ


▽関連サイト
■ドイツ国鉄公式サイト(英語・ドイツ語)
http://www.bahn.de/international/view/en/index.shtml

■レイルヨーロッパのICEページ
http://japan.raileurope.com/japan/rail/specialty/ice.htm


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