訪日2000万人の受け入れ体制、ビザの緩和は必須−入国審査の改善に要望集中

  • 2008年11月27日
 政府が設置する観光立国推進戦略会議の「観光実務に関するワーキンググループ」の第3回会合が11月26日に開催され、2020年の訪日外国人旅行者数2000万人達成に向けた「受け入れ体制」について議論がなされた。観光庁長官の本保芳明氏はビザや入国審査、通貨・両替、外国人向けの表示・案内などの現状と今後の方向性について報告。特にビザについては、将来的には「緩和(を目指す方向)が明確」と説明した。

 ビザについては、日本政府観光局(JNTO)理事長の間宮忠敏氏も「2000万人のうち600万人は中国人訪問者になるとの予測で、個人ビザは必須」と強調。中国人向けビザは、2008年3月に家族向け観光ビザを解禁したものの、8月までの利用実績は4組10人で「ほとんどゼロ」(本保氏) の状態。日中両国の旅行会社に対するヒアリングでは、「富裕層のニーズはあくまでフリーの個人旅行」であり、日本側と中国側から各1名の添乗員同行を求めている点が阻害要因とする声や、「年収制限がネックで、外資系企業の課長クラスでないと難しい」といった意見が寄せられたといい、ワーキンググループの出席者からは「来て欲しくないと言っているように思われる」と厳しい指摘もあった。観光庁によると、この現状を踏まえて個人観光ビザの解禁やその際の発給要件について検討し、2009年3月までに一定の結論を得る方針という。

 また、会合では、特に入国審査に対して出席者から改善の必要性が指摘された。入国審査は、観光立国推進基本計画のなかで、全空港で待ち時間を20分以下にすることが目標に掲げられている。レーンの弾力的な活用などの施策により、成田空港では調査期間の11日間で20分以上かかった日が3日間のみと改善が見られたが、関空では20分未満の日が1日のみ。メンバーからは、「第一印象が最も重要」であり、「平均ではなく、最も長く待たなければならない日でも目標を達成すべき」との声が多く聞かれた。アメリカンファミリー生命保険会長のチャールズ・レイク氏も「空港が遠いこともあり、飛行機を降りてからホテルに着くまでの時間で考えるべきで、本来は10分を目指す方が良い」と強調。特に、「入国審査は完全に行政の管理下にある」ことから、行政として目標達成に責任を持つべきと語った。

 このほか、本保氏が国際会議誘致ばかりでなく、MICEの「Event・Exhibition」、「Meeting」、「Incentive」についても取り組む必要性を指摘したほか、通貨や両替の課題について、海外発行のクレジットカードへの対応が不十分で、「お金を使いたいのに使えない状況は改善されるべき」といった声もあった。こうした議論の後、座長を務める東海旅客鉄道相談役の須田寛氏は、それぞれの課題について進度を把握し、特に、遅れているものについては「工程表をつくって国を挙げて取り組むべき」と総括した。


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