和歌山市・加太を「夕陽の聖地」に

 夕陽にこだわった宿づくりや地域振興に取り組む「夕陽と語らいの宿ネットワーク」(岸本一郎会長=滋賀県長浜・浜湖月)はこのほど、和歌山市加太の休暇村紀州加太で第6回「全国夕陽サミット」を開いた。約70人が出席した。

 サミットは「夕陽を謳う 万葉の海に願いを託す」がテーマ。加太には、ひな流しの行事で知られる淡嶋神社や万葉集に多数詠まれている女流歌人の歌にちなんで、講演やパネルディスカッションを女性主体に繰り広げたほか、願い事を書いた貝を海に流すイベントなども行った。

 はじめに、観光庁創設を記念して、国土交通省近畿運輸局企画観光部長の吉田晶子さんが「観光庁創設と観光地域づくり」を演題に講演した。吉田さんは「観光立国の実現は21世紀の我が国経済社会の発展のために不可欠な国家的課題」であるとし、2泊3日以上の滞在型観光ができる「観光圏」整備の取り組みを紹介した。

 続いて夕陽評論家で同ネットワークの顧問を務める油井昌由樹さんが「夕陽にありがとう」と題し夕陽への思いやこだわりを語ったあと、旅行作家の西本梛枝さんが「万葉集と夕陽の舞台・加太」をテーマに、紀の国を詠んだ万葉の歌は130首あることを紹介。加太に残る「紀の国の 鮑等の浜の 忘れ貝 我れは忘れじ 年は経ぬとも」の歌に出てくる「忘れ貝」とひな祭り、夕陽との関連性を含めて観光資源になるのでは、と提案した。

 パネルディスカッションは、観光ジャーナリストの井村日登美さんをコーディネーターに西本さん、滋賀県尾上温泉・旅館紅鮎女将の山本愉希江さん、和歌山市加太観光協会の保家泰子さん、活魚いなさの稲田圭美さん、淡嶋神社宮司の前田光穂さんで、夕陽を生かした加太のまちづくりについて話し合った。

 サミットの最後に、地元を代表して稲田さんが「女性が願いを託して貝を流す夕陽の聖地していこう」という「加太宣言」を読み上げ、参加者全員で採択した。

 このあと会場を加太海岸の城ケ崎に移し、「思い貝流し」を行った。万葉集の「忘れ貝」にちなみ、参加者が思い思いの願い事を2枚貝に書き込み、貝を麻の紐で結んで、油井さんのかけ声で夕陽に輝く海へ向かって一斉に投げて、祈りを捧げた。

 会場では元漫才師で現在は画家として活躍する大西孝仁さんが、この日の夕陽をイメージした絵を書き上げ、フルートの演奏を楽しみながら、加太に沈む夕陽を鑑賞した。

 夕陽と語らいの宿ネットワークでは2009年、三重県志摩市で第7回サミットの開催を予定している。


情報提供:トラベルニュース社