トップインタビュー:トラベルズー代表取締役社長の武藤友木子氏
市場低迷下でも伸びる余地はある
商品、クライアントの状況を踏まえた切り口で需要を生み出す
2007年11月から日本でのサービスを開始したトラベルズー。アメリカ発祥の旅行情報メディアサービスで、現在はアジア太平洋地域に注力を置き、積極的な投資をしている。同社はウェブサイトで旅行商品を紹介するほか、メールマガジンも活用し、消費者に旅にでる「プッシュ」をする。日本の旅行市場は低迷ぎみにあるものの、同社代表取締役社長の武藤友木子氏は伸びる余地は大きいと考えている。同社のビジネスの状況や今後の展開などを聞いた。
−トラベルズーのビジネススタイルをお教えください
武藤友木子氏(以下敬称略) トラベルズーのサイトに掲載する旅行商品は、旅行を良く知る専門スタッフが、毎週900社以上の旅行関連企業の情報を調査、評価、テスト予約をした上で旅行情報として編集し、厳選した「旅」として紹介しています。プロデューサーの後、編集長が厳選した商品をメールマガジンやサイトで一押し情報の「トップ20」として紹介をします。消費者が「Wow!(ワォ!)」と、驚きと喜びを持って旅行に出かけられるような商品を紹介していこうと考えています。
現在、旅行情報メールマガジン「Top 20」の登録読者数は30万人を超えています。今年はこれから、2009年に積極的にマーケティングを展開していくためのデータ整理をおこなっていきたいと考えています。特に、2007年12月から2008年1月のデータには、「User Unknown」となる例もあり、読者の拡大に取り組んできた時期から転換する時期にあると考えています。
また、読者の平均年齢が40歳以上、平均世帯年収は約680万円で可処分所得が高いのも特徴で、「Wow!」と驚いていただいた後、(予約する)行動につながりやすい。例えば、ジャルパックでグアム4日間の5万8800円という商品を掲載されました。社内でリサーチした時に、他社の4日間は3万9800円程度の旅行が多いことを考慮し「プチ贅沢」という切り口を打ち出したところ、1週間で25件、参加人数50名ほどになりました。このプチ贅沢の旅行の申込者は平均42歳と、ほぼ読者層と重なります。ジャルパックの担当者からは「グアムでの価格競争のなかで、この値段でも売れる」と単に価格だけの勝負ではないと理解していただきました。
−旅行会社や宿泊施設側からのメリットはどのようにお考えですか
武藤 メールマガジンの読者数が増え、ウェブサイトへの誘導が的確にでき、「コンテンツ力」が増しています。価格訴求に力点を置いたエスティーワールドのバンコク4日間では、7月29日に掲載を開始し、約2週間で89件の予約を獲得しました。これはウェブサイトのみで確実に予約までつなげるという意味では、「1万9800円」という価格は魅力的で、実際に行きたいと思う方は多いといえます。
消費者へプッシュする手法では、同じくジャルパックの羽田発ハワイ行きチャーター便利用7日間の商品で、3週間で約100名を集客しました。これは旅行会社がチャーター便利用のため、予約を早く取りたいとの考えがあると判断し、メールで告知することで予約を促すことをねらったのです。メールを配信すると、直後に数件の予約が発生し、商品が高額であればさらに数週間をかけて予約が断続的に入り、最終的に良い結果を生み出すことができます。
クライアント側からすると、ROI(投資収益率/いわゆる投資対効果)がいかに高いかが出稿の判断基準であり、少なくとも10分の1が目安ではないかと考えています。弊社のサービスそのものは、クライアント側の理解を得ると「パートナー」となり、良い結果が生まれやすくなります。ただし、インターネットを使う成果報酬型広告(CPA:Cost Per Action/CPC:Cost Per Click)のサービスを展開しているだけに、レベニューマネージャーのような立場の方には効率や効果の点で納得されますが、ウェブマーケティング担当者には、逆に説明が難しいという点もあります。
こうした点で面白い例があります。A旅行会社が販売する1万円台の日帰り旅行の参加者の総数が129名であったところ、45名がトラベルズーを閲覧して申し込みをした方だったのです。45名のうち、A社を初めて利用する方が85%であったそうです。この例は、一企業にとって、利用者層の拡大につながっており、大きなアピールになると思います。
−日本での事業拡大はどのようにお考えですか
武藤 インバウンドのホテル宿泊の実績もあります。例えば、香港から17名、オーストラリアから16名を3週間で集客しました。香港とオーストラリアでは、焦点を置くポイントが異なり、それぞれの国や地域を取扱うスタッフが商品の「売り」をそれぞれの市場で消費者に響くように訴えています。キーポイントは日本から海外に送りますが、細かい点は日本と海外でコミュニケーションをはかって、決めています。
旅館など、宿泊施設の場合、普段は楽天トラベルやじゃらんなどを使うものの、短期在庫を一掃したいときにも効果的です。例えば、6月に1週間に25組50名という集客実績がありましたが、これは週末料金の適用がなく、この点をアピールしたことがうまくいった事例です。
使い方を理解していただいた方には、アメリカのように良いサイクルに入りつつあると認識しています。利用していただく「入り口」としての認識を高めるためには地道な営業活動と同時に、事例も集まりつつあるので来年にもセミナーを開催するなどして、広く活用を促したいと考えています。今後は、特定エリアであれば負けない専門特化したの旅行会社などを中心に、ホテル・旅館など施設の取扱数を増やしたいですね。これにより、バラエティが増えることにつながればと思います。
また、CPC、CPAの仕組みについても、「ほんの一部の予算を使う」という考えを浸透していかなければならないでしょう。特に、規模の大きい企業は在庫を抱えており、それを「さばく」という考えもあり、今後も取り組みを続けたいと思います。試用した企業は反応が変わることも聞いており、結果が出れば考え方も変わってきます。
そのほか、日本と海外を結ぶことも、現在以上に進めていきたいと考えています。既に展開している12ヶ国において、「Wow!」と思われるものをいかに紹介するか。多くの人たちにとってではなく、特定の人が「ぐっ」とくる商品を現地にあるネットワークを活用するとできることがあります。このため、海外の情報を加え、見せ方を含めて強化をはかりたいと考えています。
ありがとうございました。
<過去のトップインタビューはこちら>
商品、クライアントの状況を踏まえた切り口で需要を生み出す
2007年11月から日本でのサービスを開始したトラベルズー。アメリカ発祥の旅行情報メディアサービスで、現在はアジア太平洋地域に注力を置き、積極的な投資をしている。同社はウェブサイトで旅行商品を紹介するほか、メールマガジンも活用し、消費者に旅にでる「プッシュ」をする。日本の旅行市場は低迷ぎみにあるものの、同社代表取締役社長の武藤友木子氏は伸びる余地は大きいと考えている。同社のビジネスの状況や今後の展開などを聞いた。
−トラベルズーのビジネススタイルをお教えください
武藤友木子氏(以下敬称略) トラベルズーのサイトに掲載する旅行商品は、旅行を良く知る専門スタッフが、毎週900社以上の旅行関連企業の情報を調査、評価、テスト予約をした上で旅行情報として編集し、厳選した「旅」として紹介しています。プロデューサーの後、編集長が厳選した商品をメールマガジンやサイトで一押し情報の「トップ20」として紹介をします。消費者が「Wow!(ワォ!)」と、驚きと喜びを持って旅行に出かけられるような商品を紹介していこうと考えています。
現在、旅行情報メールマガジン「Top 20」の登録読者数は30万人を超えています。今年はこれから、2009年に積極的にマーケティングを展開していくためのデータ整理をおこなっていきたいと考えています。特に、2007年12月から2008年1月のデータには、「User Unknown」となる例もあり、読者の拡大に取り組んできた時期から転換する時期にあると考えています。
また、読者の平均年齢が40歳以上、平均世帯年収は約680万円で可処分所得が高いのも特徴で、「Wow!」と驚いていただいた後、(予約する)行動につながりやすい。例えば、ジャルパックでグアム4日間の5万8800円という商品を掲載されました。社内でリサーチした時に、他社の4日間は3万9800円程度の旅行が多いことを考慮し「プチ贅沢」という切り口を打ち出したところ、1週間で25件、参加人数50名ほどになりました。このプチ贅沢の旅行の申込者は平均42歳と、ほぼ読者層と重なります。ジャルパックの担当者からは「グアムでの価格競争のなかで、この値段でも売れる」と単に価格だけの勝負ではないと理解していただきました。
−旅行会社や宿泊施設側からのメリットはどのようにお考えですか
武藤 メールマガジンの読者数が増え、ウェブサイトへの誘導が的確にでき、「コンテンツ力」が増しています。価格訴求に力点を置いたエスティーワールドのバンコク4日間では、7月29日に掲載を開始し、約2週間で89件の予約を獲得しました。これはウェブサイトのみで確実に予約までつなげるという意味では、「1万9800円」という価格は魅力的で、実際に行きたいと思う方は多いといえます。
消費者へプッシュする手法では、同じくジャルパックの羽田発ハワイ行きチャーター便利用7日間の商品で、3週間で約100名を集客しました。これは旅行会社がチャーター便利用のため、予約を早く取りたいとの考えがあると判断し、メールで告知することで予約を促すことをねらったのです。メールを配信すると、直後に数件の予約が発生し、商品が高額であればさらに数週間をかけて予約が断続的に入り、最終的に良い結果を生み出すことができます。
クライアント側からすると、ROI(投資収益率/いわゆる投資対効果)がいかに高いかが出稿の判断基準であり、少なくとも10分の1が目安ではないかと考えています。弊社のサービスそのものは、クライアント側の理解を得ると「パートナー」となり、良い結果が生まれやすくなります。ただし、インターネットを使う成果報酬型広告(CPA:Cost Per Action/CPC:Cost Per Click)のサービスを展開しているだけに、レベニューマネージャーのような立場の方には効率や効果の点で納得されますが、ウェブマーケティング担当者には、逆に説明が難しいという点もあります。
こうした点で面白い例があります。A旅行会社が販売する1万円台の日帰り旅行の参加者の総数が129名であったところ、45名がトラベルズーを閲覧して申し込みをした方だったのです。45名のうち、A社を初めて利用する方が85%であったそうです。この例は、一企業にとって、利用者層の拡大につながっており、大きなアピールになると思います。
−日本での事業拡大はどのようにお考えですか
武藤 インバウンドのホテル宿泊の実績もあります。例えば、香港から17名、オーストラリアから16名を3週間で集客しました。香港とオーストラリアでは、焦点を置くポイントが異なり、それぞれの国や地域を取扱うスタッフが商品の「売り」をそれぞれの市場で消費者に響くように訴えています。キーポイントは日本から海外に送りますが、細かい点は日本と海外でコミュニケーションをはかって、決めています。
旅館など、宿泊施設の場合、普段は楽天トラベルやじゃらんなどを使うものの、短期在庫を一掃したいときにも効果的です。例えば、6月に1週間に25組50名という集客実績がありましたが、これは週末料金の適用がなく、この点をアピールしたことがうまくいった事例です。
使い方を理解していただいた方には、アメリカのように良いサイクルに入りつつあると認識しています。利用していただく「入り口」としての認識を高めるためには地道な営業活動と同時に、事例も集まりつつあるので来年にもセミナーを開催するなどして、広く活用を促したいと考えています。今後は、特定エリアであれば負けない専門特化したの旅行会社などを中心に、ホテル・旅館など施設の取扱数を増やしたいですね。これにより、バラエティが増えることにつながればと思います。
また、CPC、CPAの仕組みについても、「ほんの一部の予算を使う」という考えを浸透していかなければならないでしょう。特に、規模の大きい企業は在庫を抱えており、それを「さばく」という考えもあり、今後も取り組みを続けたいと思います。試用した企業は反応が変わることも聞いており、結果が出れば考え方も変わってきます。
そのほか、日本と海外を結ぶことも、現在以上に進めていきたいと考えています。既に展開している12ヶ国において、「Wow!」と思われるものをいかに紹介するか。多くの人たちにとってではなく、特定の人が「ぐっ」とくる商品を現地にあるネットワークを活用するとできることがあります。このため、海外の情報を加え、見せ方を含めて強化をはかりたいと考えています。
ありがとうございました。
<過去のトップインタビューはこちら>