ハワイ体験レポート:センチュリーライドで出会うオアフの景色
センチュリーライドで出会うオアフの景色
ハワイ州の自転車レースの中で最も歴史があり、また最も規模の大きいファミリー・ファン・ライドである「ホノルルセンチュリーライド2008」が9月28日(日本時間9月29日)、ハワイ・オアフ島で開催された。今年で第27回目を迎えるこのイベントは、「健康」、「環境」、「レクリエーション」、「健全なコミュニティの活性化」が目的。自転車で走行するだけでなく、参加者にオアフ島の美しさ、他の参加者と地元住民との友情や交流を楽しめる魅力もある。日本人参加者が多く、ゴールに飛び込んでくる人々の笑顔からは、充足感と達成感が感じられた。(取材:フジタ佳子)
3歳から85歳まで、誰もが参加できる
今年の参加者総数は3120名で、このうち日本人は現地在住者の77名を含み、1510名。ファン・ライド・イベントとして、これだけの日本人が参加するほど定着した理由のひとつが、参加者の経験や体力にあった距離を走行できること。20マイルの約32キロから、100マイルの約160キロまでの6コースの距離から、種目の選択が可能。体調にあわせ、エントリーしていた種目を当日に変更することもできる。今回は100マイルでエントリーしたものの、体調不良で当日に25マイルに変更した参加者に遭遇。「次回は体調を整えて100マイルにチャレンジしたい」と、満足そうだった。
また、参加者はレース中に思い思いの気に入った場所で休憩したり、写真撮影をしたりとのんびり走ることができ、子供からシニアまで気軽に参加できるのも、多くの参加者の支持を集めるポイント。今年の参加者の最少年齢は3歳9ヶ月、最高齢者は85歳。最も遠距離からの参加者はイタリアからといい、参加者の年齢や国籍など幅の広さがうかがえる大会だ。
日本側事務局でも、増加する日本人参加者のサポートに務め、毎年のように改善策を打ち出している。今年、新たな取り組みとして、日本からの参加者全員を対象とした日本語による安全走行やハワイでの交通マナーの講義「セーフティ・ブリーフィング」を開催。ハワイでの交通ルールを認識すると共に、走行中の動作やドライバーへの声がけなどで地元住民とのコミュニケーションがとれる効果もある。実際、「エイド・ステーションでの地元の人々のサポートが励みになった」と、現地の人との触れあいも、センチュリーライドの思い出の一つとなっているようだ。また大会事務局は速やかな運営を考慮した改善を実施しており、今年のレースのスタート時はこれまでの参加マイルごとではなく、技量別グループのスタート方法を採用。参加者が快適に、そしてオアフ島の景観を楽しみながら走行できるための工夫が、いたるところに見られる。
想像を超えた絶景と爽快感
レース当日の早朝5時ごろ、日本からの旅行会社がスタート地点のカピオラニ公園にブースを設置し、それぞれ自社の顧客の対応にあたりはじめる。レースのブリーフィングやストレッチ、コンディションの確認など、思い思いに準備をする参加者もいれば、スタッフのアドバイスを熱心に聞いて準備を進める人も。5時50分を過ぎたころ、オープニング・セレモニーが開催。日本語の同時通訳もあり、日本人も退屈することがない。そして6時15分を過ぎるといよいよ、走行経験の多い参加者を集めたAグループからスタート。
100マイルコースはカピオラニ公園をスタートした後、ダイヤモンドヘッドを越え、カハラ地区、ハワイカイを経てオアフ島北部へ自転車を走らせる。長さ約1キロ、高低差45メートルの心臓破りの坂「ハート・ブレイクヒル」を克服すると、ごほうびとばかりに真っ青なサンディ・ビーチなど、オアフ島のなかでも極上の景観を背景に風を切ってすすむ。定番のオアフ島のビーチとは異なる別世界の大自然を満喫できるコース設定で、なかには「こんな風光明媚な景色をオアフ島で見られるとは思わなかった」「ガイドブックに載っていないハワイの景色が見れた」と、今までのオアフ島のイメージを覆すほどの印象を受けた人もいるようだ。
最初のスタートからおよそ2時間後、25マイルの走者がゴールすると、次々にフィニッシュする参加者が続く。そして午後1時から3時ごろまでは100マイルの走者のゴールが続き、午後5時30分、オフィシャルのゴール受付が終了。「還暦を迎える年に何かチャレンジをしたい」と東京から参加した男性は、「憧れのハワイでセンチュリーライドに参加できた。特にマカプウからクアロアにかけての山脈と渓谷、海の美しさが素晴らしい」と、感慨深そう。そんなご主人の様子にゴールで待っていた奥様は「“家族応援シャトルバス”のようなサービスがあれば」と、ご主人を感動させた景色を見たいという気持ちが募ったようだ。
目的の強い旅行に今後の可能性
日本から参加し、カピオラニ公園にブースを設置した旅行会社は10社。大会直前のブリーフィングや当日のコースでのデスク対応のみならず、各社が独自に手配したコーチとの現地での下見や渡航前の日本での講習、レース後の交流会など、出発前から走行中、レース終了後まで、充実したサポートを実施し、自社のセールス・ポイントとしている。参加者からは「ツアー会社による大会前からのケア、コーチ同行の事前試乗、終了後のストレッチ指導など充実したサポート体制に安心感を持って参加できた」との声が聞かれる。
リピーターのシェアが高い旅行会社には、過去にホノルル・マラソンやマウイ・マラソンに参加し、今回はセンチュリーライドに挑戦したという顧客が多いようだ。このため、「ハワイのスポーツ・イベントを総合的に結びつけたツアーの企画を積極的に検討したい」と考えているようだ。今回、話をうかがった参加者の中にはハワイでのスポーツ・イベントのリピーターには出会えなかったが、日本での「ツール・ド・千葉」などの経験者や「過去に3回参加した友人の強い勧めで、セントレア経由で参加した」という鹿児島からの30代女性がいた。
この女性は最近の旅行需要の減退の一因といわれる燃油サーチャージについても、「金額よりも大会に参加したい気持ちが大きく、気にならなかった」という。「単なる観光ではなく、イベントに参加をする目的を持っての旅行なので、燃油サーチャージは大きな費用負担として感じなかった」という30代男性もおり、旅行目的としてのスポーツ・イベントの強い可能性を感じた。
数年前までは自転車の運搬に関する情報収集や実際の輸送に苦労をしたという声もあったようだが、日本側事務局、また旅行会社の経験から随所でのサポート体制が向上し、参加者・企画者ともに「想像以上に速やかだった」といった声が多く聞かれる。また、アメリカ本土から訪問者数が減少していることもあり、ホテル側の理解が進み、客室への自転車の持ち込みを認めるホテルが多くなったという、送客を後押しする動きもある。まずはセンチュリーライドのツアーを企画して送客実績をあげ、そして次のステップとして顧客の大会へのリピーター化、および同行者数の増加へ。センチュリーライドはハワイ旅行の意欲向上と継続性のあるツアー素材のひとつとして、十分に位置づけられるものとなるだろう。
ハワイ州の自転車レースの中で最も歴史があり、また最も規模の大きいファミリー・ファン・ライドである「ホノルルセンチュリーライド2008」が9月28日(日本時間9月29日)、ハワイ・オアフ島で開催された。今年で第27回目を迎えるこのイベントは、「健康」、「環境」、「レクリエーション」、「健全なコミュニティの活性化」が目的。自転車で走行するだけでなく、参加者にオアフ島の美しさ、他の参加者と地元住民との友情や交流を楽しめる魅力もある。日本人参加者が多く、ゴールに飛び込んでくる人々の笑顔からは、充足感と達成感が感じられた。(取材:フジタ佳子)
3歳から85歳まで、誰もが参加できる
今年の参加者総数は3120名で、このうち日本人は現地在住者の77名を含み、1510名。ファン・ライド・イベントとして、これだけの日本人が参加するほど定着した理由のひとつが、参加者の経験や体力にあった距離を走行できること。20マイルの約32キロから、100マイルの約160キロまでの6コースの距離から、種目の選択が可能。体調にあわせ、エントリーしていた種目を当日に変更することもできる。今回は100マイルでエントリーしたものの、体調不良で当日に25マイルに変更した参加者に遭遇。「次回は体調を整えて100マイルにチャレンジしたい」と、満足そうだった。
また、参加者はレース中に思い思いの気に入った場所で休憩したり、写真撮影をしたりとのんびり走ることができ、子供からシニアまで気軽に参加できるのも、多くの参加者の支持を集めるポイント。今年の参加者の最少年齢は3歳9ヶ月、最高齢者は85歳。最も遠距離からの参加者はイタリアからといい、参加者の年齢や国籍など幅の広さがうかがえる大会だ。
日本側事務局でも、増加する日本人参加者のサポートに務め、毎年のように改善策を打ち出している。今年、新たな取り組みとして、日本からの参加者全員を対象とした日本語による安全走行やハワイでの交通マナーの講義「セーフティ・ブリーフィング」を開催。ハワイでの交通ルールを認識すると共に、走行中の動作やドライバーへの声がけなどで地元住民とのコミュニケーションがとれる効果もある。実際、「エイド・ステーションでの地元の人々のサポートが励みになった」と、現地の人との触れあいも、センチュリーライドの思い出の一つとなっているようだ。また大会事務局は速やかな運営を考慮した改善を実施しており、今年のレースのスタート時はこれまでの参加マイルごとではなく、技量別グループのスタート方法を採用。参加者が快適に、そしてオアフ島の景観を楽しみながら走行できるための工夫が、いたるところに見られる。
想像を超えた絶景と爽快感
レース当日の早朝5時ごろ、日本からの旅行会社がスタート地点のカピオラニ公園にブースを設置し、それぞれ自社の顧客の対応にあたりはじめる。レースのブリーフィングやストレッチ、コンディションの確認など、思い思いに準備をする参加者もいれば、スタッフのアドバイスを熱心に聞いて準備を進める人も。5時50分を過ぎたころ、オープニング・セレモニーが開催。日本語の同時通訳もあり、日本人も退屈することがない。そして6時15分を過ぎるといよいよ、走行経験の多い参加者を集めたAグループからスタート。
100マイルコースはカピオラニ公園をスタートした後、ダイヤモンドヘッドを越え、カハラ地区、ハワイカイを経てオアフ島北部へ自転車を走らせる。長さ約1キロ、高低差45メートルの心臓破りの坂「ハート・ブレイクヒル」を克服すると、ごほうびとばかりに真っ青なサンディ・ビーチなど、オアフ島のなかでも極上の景観を背景に風を切ってすすむ。定番のオアフ島のビーチとは異なる別世界の大自然を満喫できるコース設定で、なかには「こんな風光明媚な景色をオアフ島で見られるとは思わなかった」「ガイドブックに載っていないハワイの景色が見れた」と、今までのオアフ島のイメージを覆すほどの印象を受けた人もいるようだ。
最初のスタートからおよそ2時間後、25マイルの走者がゴールすると、次々にフィニッシュする参加者が続く。そして午後1時から3時ごろまでは100マイルの走者のゴールが続き、午後5時30分、オフィシャルのゴール受付が終了。「還暦を迎える年に何かチャレンジをしたい」と東京から参加した男性は、「憧れのハワイでセンチュリーライドに参加できた。特にマカプウからクアロアにかけての山脈と渓谷、海の美しさが素晴らしい」と、感慨深そう。そんなご主人の様子にゴールで待っていた奥様は「“家族応援シャトルバス”のようなサービスがあれば」と、ご主人を感動させた景色を見たいという気持ちが募ったようだ。
目的の強い旅行に今後の可能性
日本から参加し、カピオラニ公園にブースを設置した旅行会社は10社。大会直前のブリーフィングや当日のコースでのデスク対応のみならず、各社が独自に手配したコーチとの現地での下見や渡航前の日本での講習、レース後の交流会など、出発前から走行中、レース終了後まで、充実したサポートを実施し、自社のセールス・ポイントとしている。参加者からは「ツアー会社による大会前からのケア、コーチ同行の事前試乗、終了後のストレッチ指導など充実したサポート体制に安心感を持って参加できた」との声が聞かれる。
リピーターのシェアが高い旅行会社には、過去にホノルル・マラソンやマウイ・マラソンに参加し、今回はセンチュリーライドに挑戦したという顧客が多いようだ。このため、「ハワイのスポーツ・イベントを総合的に結びつけたツアーの企画を積極的に検討したい」と考えているようだ。今回、話をうかがった参加者の中にはハワイでのスポーツ・イベントのリピーターには出会えなかったが、日本での「ツール・ド・千葉」などの経験者や「過去に3回参加した友人の強い勧めで、セントレア経由で参加した」という鹿児島からの30代女性がいた。
この女性は最近の旅行需要の減退の一因といわれる燃油サーチャージについても、「金額よりも大会に参加したい気持ちが大きく、気にならなかった」という。「単なる観光ではなく、イベントに参加をする目的を持っての旅行なので、燃油サーチャージは大きな費用負担として感じなかった」という30代男性もおり、旅行目的としてのスポーツ・イベントの強い可能性を感じた。
数年前までは自転車の運搬に関する情報収集や実際の輸送に苦労をしたという声もあったようだが、日本側事務局、また旅行会社の経験から随所でのサポート体制が向上し、参加者・企画者ともに「想像以上に速やかだった」といった声が多く聞かれる。また、アメリカ本土から訪問者数が減少していることもあり、ホテル側の理解が進み、客室への自転車の持ち込みを認めるホテルが多くなったという、送客を後押しする動きもある。まずはセンチュリーライドのツアーを企画して送客実績をあげ、そして次のステップとして顧客の大会へのリピーター化、および同行者数の増加へ。センチュリーライドはハワイ旅行の意欲向上と継続性のあるツアー素材のひとつとして、十分に位置づけられるものとなるだろう。