関空・平野副社長、一時的需要低迷をはなれ長期的国家戦略での政策求める

  • 2008年9月22日
 関西国際空港代表取締役副社長の平野忠邦氏は9月19日、業界紙との会見で国の政策について「一時的な需要の低迷ばかりに目を向けることなく、長期的な国家戦略として(関空を)どう位置付けるかを考えてほしい」と語った。関空を巡っては、日本航空(JL)と全日空(NH)が燃油価格の高騰などの理由で路線の減便や運休を発表。これにより、2期島の整備の条件となっていた年間発着回数13万5000回の達成が困難になり、国土交通省が2009年度予算の概算要求で整備費用を盛り込むことを見送った。また、先ごろには交通政策審議会の航空分科会で国土交通省航空局局長の前田隆平氏が、競争力向上を目的に1兆円を超える関空の負債の肩代わりについて言及。さらに、大阪府知事の橋下徹氏が伊丹空港の廃止に言及し、現在は関西3空港の一体的な運用の議論が活発化している。

 平野氏のコメントは、こうした流れの中で、アジア・ゲートウェイ構想で関空の競争力向上が盛り込まれていることを念頭に置いたもの。負債の肩代わりに関しては、金利の返済だけで年間230億円にのぼり、着陸料収入の200億円を超過。「世界一高い着陸料」を下げることが出来ない状況だ。現在は、前田局長の発言を受けて金融機関などと方策を検討しているところ。平野氏は、「正式に国交省に案を提示する段階ではない」としつつ、「航空分科会の場で、局長に前向きな姿勢を示して頂けたことは心強い」と語り、「国と連携して一緒に検討を進めていきたい」と方針を示した。2期島についても、まだ「諦めずに工事を凍結することなく、継続できるように訴えている」という。

 関西3空港の一体的運用については、「どのような一体的な運用なのか見えておらず、一体的運用がバラ色の方策のように見えてしまっている」と指摘したものの、「地元から意見が出て、役割分担を見直す良い機会ができた」ことは歓迎。その上で、伊丹空港に関して多額の環境対策費を投じつつ環境基準値を超えており、かつ最高裁判所で周辺住民の環境権を侵害したとの判決も出ていることに触れ、基準値の超過分を他空港に振り分ける必要に言及した。一体的な運用の具体案としては、「ビジネス客の多い羽田、福岡は伊丹空港、それ以外の長距離路線や地方からの乗継路線などは関空なりで飛ばす」とのアイディアを示した。