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現地レポート:中国・四川省 「催行再開に自信」、復興への期待高まる

  • 2008年9月12日
「催行再開に自信」、復興への期待高まる
−九寨溝を基盤に中国リカバリーへ


中国・四川省で5月12日に発生した大地震の復興状況をうけ、日本旅行業協会(JATA)と中国国家観光局(東京)は「2008中国震災復興支援研修団」を結成した。8月26日から9月2日の日程で、成田、中部、関西、広島、岡山、福岡の6都市から総勢117名が中国を訪問。四川省と陝西省の観光地の現状を視察し、JATA会長で研修団長の金井耿氏は「安全で、問題なく観光できる状態」と断言した。四川省、陝西省の観光地の現在を旅行会社の視点でレポートする。(主催:中国国家観光局、日本旅行業協会、後援:中国東方航空)




九寨溝の再開で、中国旅行の復活に

 研修団の全行程は、陝西省の西安から三国志の舞台の一つである漢中に入り、再度西安を経て成都に移動、都江堰を視察、九寨溝を訪れてから成都に戻った。途中、利用した西安と成都、九寨溝の空港や高速道路を含む交通インフラ、西安ハイアットホテルや九寨溝シェラトン国際大酒店、ホリデイ・イン成都など宿泊したホテルには、震災による損壊、損傷は見られず、参加した旅行会社は口々に、「ツアーでも問題なく使用できる」(JTBワールドバケーションズ商品開発部戦略商品チームチームマネージャーの石田佳子氏)などと太鼓判を押す。九寨溝は変わらず美しく水を湛え、成都パンダ保護センターの子パンダたちも元気良く育ち、西安の兵馬俑博物館も北京オリンピック帰りの外国人観光客を含む多くの人々でにぎわっており、各地の市民も平常どおりの生活を送っていた。

 四川省は九寨溝、黄龍、都江堰、青城山、楽山大仏、峨眉山、臥龍と、中国で最多である7つの世界遺産を有する省で、中国周遊旅行のハイライトとなる観光地が多いデスティネーションだ。今回の視察で、特に人気の高い九寨溝を日程に組み込んだ目的について、中国国家観光局首席代表の范巨霊氏は「非常に人気の高い九寨溝ツアーの復活を四川の復活、そして中国全体の復活につなげること」と語る。旅行会社にとっても九寨溝の商品は高価格の設定になることが多く、最も関心が集まった場所だ。九寨溝国家級自然保護区管理局営業計画所所長の林加水氏は、地震の発生時に落石が一部で発生したものの、それ以外の影響はないことを説明。参加者は、ツアーの催行ができる状態にあることを確認するとともに、神秘的な景色に「自然関係の観光資源ではアジアで一番」、「自然の景勝地はリピーター化が難しいが、九寨溝にはリピーターがつく」など、改めてその実力を絶賛する感想が多く聞かれた。

 九寨溝までのアクセスは、空港から九寨溝、九寨溝内の道路にも影響は見られなかった。成都と九寨溝をつなぐ東西1本ずつの道路は両方とも通行できないが、成都/九寨溝間の東側ルートは、早ければ9月中にも全面開通する予定。西側ルートは震源地付近を中心に被害が大きく、2010年の全面開通をめざしている。また、この機会に「震災前より良くしよう」という意図から、東側ルートの山間部でトンネルを掘る計画があるほか、2015年10月には成都/九寨溝間に鉄道が開通するという。



現状をつぶさに見ることが、
今後の情報の判断に役立つ


 視察した中で、地震の影響を残していたのは都江堰。ここは2300年前に作られた水利施設で、灌漑用に川を分水する仕組みが現在も機能し、世界遺産に指定されている。今回の視察地のなかでは震源地から最も近い30キロメートルの地点にあり、この周辺地域には倒壊した建物が多く見られた。都江堰も川を分水する仕組みを一望できる楼閣「泰堰楼」が崩れており、現在は観光客を受け入れていないが、復旧の工事は始まり、10月1日には川を2つに分ける中州「魚嘴」の部分を含む一部で観光客の受け入れを再開する。ただし、泰堰楼からの眺めが都江堰のハイライトであったため、「本来の魅力が楽しめず、お客様を連れて来ることはできない」との意見が多い。このため、受け入れを再開した後も旅程に組み込むことに慎重な姿勢のようだ。泰堰楼や、都江堰建設者の父子を祀る「二王廟」の復元を含む全面回復には2年から3年ほどかかる見込みだ。

 また、世界遺産に登録されているパンダの保護区の臥龍は、施設が損壊し、パンダを別の施設に避難させている。また、道路も崩落し、アクセスできない。ただ、こうした状況を直接、確認することで、復興に向けた状況や現地の真摯な取り組みを肌で感じることができる。JATA金井会長は「真剣な取り組みを確認できたことで、今後の復興状況に進展があって連絡があったとき、その情報を信じることができる」と、現状を視察しておくことが場所現地の情報に対する信頼感と、その状況を推し量る感覚が得られる点で重要であると強調する。

 現在、四川省では21の州と市のうち、15の州と市で全面的に受け入れを再開。成都、徳陽などの地域では部分的に再開した。省内で被災した5万3295キロメートルの道路のうち、5万2530キロメートルはすでに修復を終えている。都江堰以遠の道路も復旧に時間がかかるものの、高速道路を新設、臥龍のパンダ保護施設も建て直すという。これらの観光地はまだ送客は厳しいという意見もあるが、「もともと都江堰は臥龍や四姑娘山への途中での訪問や成都市内観光との組み合わせやするパターンが多く、影響は少ない」(NOEリテール事業部リテール大阪営業課の佐々木浩二氏)との見方もあり、四川へのツアー催行に向けた動きが見られそうだ。




旅程中の地震発生で中国の広大さ実感
ポイントは渡航情報引き下げ時期の見極め


 視察中の8月30日、四川省の南部で地震が発生。当時、研修団は九寨溝にいたが揺れを感じず、地震の発生は日本からのニュースで知った。四川省は日本の国土の1.3倍の面積があり、九寨溝から震源地「攀枝花」まで750キロメートル以上、成都から500キロメートル以上という広大さを、参加者全員が身をもって体験したできごとだった。5月の地震の場合は、震源地のモン川(モンはサンズイに文)近辺から省都の成都まで150キロメートル離れている。これは阪神大地震と比較すると、震源地の淡路島北部から名古屋付近と同じ距離だという。

 この経験を踏まえ、びゅうトラベルサービス代表取締役社長で研修団副団長の佐藤勉氏は、「地震が起きても我々が無事に快適な旅行を続けられたことを証明でき、今回の大きな成果のひとつ」と、送客に向けた自信を示した。また、金井氏は「現地側の真剣な取り組みを確認できた」とし、旅行会社は現地の復興のスケジュールを把握しつつ、「それに合わせて送客の取り組みを展開できるようスケジュールを組んでおく必要がある」と復活に向けた道すじを描く。

 ポイントは、外務省の渡航情報「渡航の是非を検討してください」の発出が取り下げられる時期の見極めだ。外務省は引き下げの検討を開始しているが、実現のタイミングはまだ不明。ただし、こうした動きを踏まえ、商品造成から販売の最前線まで準備を整えておくことは今からでも着手でき、これも金井氏の指摘する「スケジュール組み」の一環である。これに加え、中国市場全体の落ち込みを業界全体が盛り上げ、消費者の訪問を後押しする活動も必要だ。「今回現地の復興への努力を確認でき、次は旅行業界として送客の努力をする番」(副団長の佐藤氏)との意見もあり、今後の中国の勢い回復を予想させる視察となった。


▽Photo NEWS
Photo NEWS Vol.049:中国、九寨溝に息をのみパンダに癒される−被災地も復興めざす(2008/09/13)



パンダ観光は成都の保護センターへ


 四川省を訪問するツアーではパンダは人気の観光素材。
世界に約1600頭いるパンダのうち、約800頭は四川省にい
るそうだ。九寨溝には「パンダ海」と名づけられた湖が
あり、野生のパンダが現れることもあるという。

 成都市内のパンダ保護センターでは現在も元気なパン
ダの姿を見ることができる。今年は12頭の子どもが生ま
れ、1000元(約1万6000円)を寄付することで愛くるしい
子どものパンダを抱いて記念撮影でき、動物好き、パン
ダ好きに向けたプログラムも用意されている。また、秋
ごろには成都の西南200キロメートルほどの距離にある雅
安に新施設ができる予定で、完成後には新しいプログラ
ムも提供されるという。




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