現地レポート:マレーシア 教育旅行で注目のジョホール州
教育旅行で注目のジョホール州
宗教文化や体験型の素材が豊富
マレーシアで最も南に位置するシンガポールとの国境の町、ジョホール・バルを州都とするジョホール州。観光地としては注目度が低かったが、生活文化体験ができるホームステイや農業教育素材に恵まれ、多くの教育素材がある。シンガポールからのアクセスがスムーズで、シンガポールからも多くの学生が研修旅行に訪れるという。教育旅行に向いているデスティネーションとして注目されるジョホール・バルとその近郊を視察した。(取材協力:マレーシア政府観光局)
市内観光で宗教文化を見学、王宮で日本との意外な接点を発見
クアラルンプールに次ぐ都市として知られるジョホール・バル。ジョホール海峡をはさんですぐ向かいはシンガポールという国境の街でもあり、1日旅行などでシンガポールから訪れる日本人観光客も多い。とはいえ、ジョホール・バルの街自体はそれほど大きくはない。良港を有する貿易の要衝として発展した産業の街であり、観光素材も地元の人々が利用するスルタン・アブ・バカールモスクや寺院などを見学(宗教の違う人は内部までの立ち入りはできない)するものが多い。
また、モスクの隣に位置する王宮は博物館も併設しており、王族の所有する品々が公開されている。イスラム教徒がモスクで集団礼拝をする金曜日は閉まっているが、美しく整備された庭園は散策することができる。この庭園内には鳥居や茶室があり、和風に仕立てられた一角がある。これは昭和10年に昭和天皇によって寄贈された茶室で、スルタンと日本の天皇陛下と交流していたことの証だ。よく見るとモスクや王宮の屋根も瓦葺で、それは日本の三州瓦だという。こちらは現在のスルタンによって造られたというので、現在まで続く親日ぶりが見えるようだ。
このほか、ろうけつ染めや料理などの文化体験、楽器演奏などのショーを見学できるモハマド・アミン文化村があり、マレーシアのフルーツや農産物が植えられた庭をガイドの説明つきで見学することもできる。見学のみ、あるいは体験学習のアレンジが可能で、少人数のグループで訪れるのに適している。ジョホール・バルの市内観光は半日ないし1日で十分見て周ることができるが、道路は一方通行が多いので、効率よく見て回るには見学ルートをうまく作成するといいだろう。
農園見学やカンポン・ステイ、体験型の教育素材が充実
ジョホール・バルからちょっと郊外へでると、近年、マレーシアの経済を牽引しているパームオイル(油やし)のプランテーションが広がっている。道路沿いには収穫された赤黒く熟れた油ヤシの実が盛り上げられ、回収車が来るのを待っている。そんな風景が車窓に延々と続く様子に、パームオイルの生産量が世界屈指というのもうなずける。
そんな景観を見ながら、ジョホール・バルから車で約2時間。南シナ海に面したビーチリゾートであるデサルは、付近に農業教育素材が多く、教育旅行の拠点におすすめ。非常にシンプルで数軒のリゾート以外の遊び場はない。シンガポールに至近であるため、主にシンガポールからカップルや親子連れが訪れるが、都会で暮らす子どもたちに農業の様子や生きて動く家畜などを見せることを目的としている人も多いという。
果樹園の「デサル・フルーツファーム」では見学ツアーを開催しており、数台の大型バスで訪れても問題ないほど広い敷地をほこる。シーズンである6月から8月はたくさんのトロピカルフルーツがたわわで、パイナップルやバナナなど日本でもおなじみのフルーツの実り方がわかっておもしろい。特にこの農園で作られたドリアンは賞をとったことがある絶品として知られ、シンガポールからの見学客は大量に購入していた。濃厚でクリーミーだが独特の臭みが少なく、強烈な匂いが苦手な人もこのドリアンなら試してみることができそうだ。ツアーのコースにもよるが、最後に果物の盛り合わせが出るので、農園で見た果物を実際に味わってみることもできる。
また、マレーシアの生活体験としてカンポン・ステイを実施するセメンチュー村もデサルから至便だ。フルーツの実をつける街路樹やどの家の庭にも花が咲き乱れている様子は、マレーシアで一番美しい村として賞をとったというだけのことはある。ホームステイプログラムにはかなり力を入れているようで、引率の教員用の寮まで建設されている。ホームステイができる家には看板があり、どの家でも数名までが宿泊が可能。村全体で一度に300名以上の学生が訪れたこともあるという。学校で行われるイベント時には家族がそれぞれ車で送ってくれるといい、それ以外の時間は家族と食事をしたり、ゲームして過ごす。また、宿泊せずに民芸品の制作風景の見学や食事での交流を楽しむ「ホームビジット」も可能だ。
マレーシア・ホームステイ協会会長のサハリマン・ハムダン氏によると、こうしたホームステイプログラムを実施しているカンポンではトイレを洋式に変えるなど、より多くの人々が気軽に快適にホームステイを楽しめるための努力をしているという。セメンチューはまさにその好例である。
勉強へのモチベーション向上に効果あり
引率の先生に聞いたジョホール州の教育旅行
行程中、ジョホール・バルで大阪府立長尾高等学校の研修旅行の一行と出会った。同校では隔年で海外研修旅行を実施しており、全校から希望者を募っているという。2006年にはタイを訪れ、今回は2度目のシンガポール/マレーシア旅行だ。引率の吉川拓男教諭によれば、5日間の行程で自由時間の安全面から宿泊地はシンガポール、マレーシアは日帰りで文化体験と学校交流のみという。今年は燃料サーチャージが高騰したため、4年前に訪れた時よりも料金が高くなり、参加人数が減った。それでも26名の応募があり、なかには2年前にも研修旅行に参加したリピーターの生徒もいる。
「それだけ楽しかったということでしょうね。それに、研修旅行の後には生徒に目に見える変化があります。勉強に対するモチベーションを上げる、大きな効果があるのです」。
学校交流では現地の生徒が積極的に日本の生徒に話しかけてくれるため、普段はシャイな子でもよく話すようになるという。1年生のある女生徒は「片言の英語だったけれど、それでも通じたことがうれしかった。もっと勉強すればもっといろいろ話せると思う」と興奮気味に話す。短い滞在でも大きな刺激になるようだ。
さて、ジョホール州へのアクセスだが、シンガポールから陸路で入国。そこから陸路絵40分ほどでジョホール・バルに到着する。しかし、今回、シンガポールに到着したのは午後5時45分でちょうど仕事帰りの時間帯であったため、マレーシアに入国するまで2時間ばかり時間がかかった。朝夕のラッシュアワーはかなり時間がかかることを予想しておいたほうがよい。このほか、チャンギ港からフェリーでマレーシアに渡ることも可能。ジョホール・バルから車で約2時間の位置にあるタンジュン・ベランコールに着く。フェリーの場合はシンガポールから約1時間弱で、なかなか爽快。ジョホール・バルに宿泊するのでなければ渋滞を避けてこちらを利用するのもいいかもしれない。
宗教文化や体験型の素材が豊富
マレーシアで最も南に位置するシンガポールとの国境の町、ジョホール・バルを州都とするジョホール州。観光地としては注目度が低かったが、生活文化体験ができるホームステイや農業教育素材に恵まれ、多くの教育素材がある。シンガポールからのアクセスがスムーズで、シンガポールからも多くの学生が研修旅行に訪れるという。教育旅行に向いているデスティネーションとして注目されるジョホール・バルとその近郊を視察した。(取材協力:マレーシア政府観光局)
市内観光で宗教文化を見学、王宮で日本との意外な接点を発見
クアラルンプールに次ぐ都市として知られるジョホール・バル。ジョホール海峡をはさんですぐ向かいはシンガポールという国境の街でもあり、1日旅行などでシンガポールから訪れる日本人観光客も多い。とはいえ、ジョホール・バルの街自体はそれほど大きくはない。良港を有する貿易の要衝として発展した産業の街であり、観光素材も地元の人々が利用するスルタン・アブ・バカールモスクや寺院などを見学(宗教の違う人は内部までの立ち入りはできない)するものが多い。
また、モスクの隣に位置する王宮は博物館も併設しており、王族の所有する品々が公開されている。イスラム教徒がモスクで集団礼拝をする金曜日は閉まっているが、美しく整備された庭園は散策することができる。この庭園内には鳥居や茶室があり、和風に仕立てられた一角がある。これは昭和10年に昭和天皇によって寄贈された茶室で、スルタンと日本の天皇陛下と交流していたことの証だ。よく見るとモスクや王宮の屋根も瓦葺で、それは日本の三州瓦だという。こちらは現在のスルタンによって造られたというので、現在まで続く親日ぶりが見えるようだ。
このほか、ろうけつ染めや料理などの文化体験、楽器演奏などのショーを見学できるモハマド・アミン文化村があり、マレーシアのフルーツや農産物が植えられた庭をガイドの説明つきで見学することもできる。見学のみ、あるいは体験学習のアレンジが可能で、少人数のグループで訪れるのに適している。ジョホール・バルの市内観光は半日ないし1日で十分見て周ることができるが、道路は一方通行が多いので、効率よく見て回るには見学ルートをうまく作成するといいだろう。
農園見学やカンポン・ステイ、体験型の教育素材が充実
ジョホール・バルからちょっと郊外へでると、近年、マレーシアの経済を牽引しているパームオイル(油やし)のプランテーションが広がっている。道路沿いには収穫された赤黒く熟れた油ヤシの実が盛り上げられ、回収車が来るのを待っている。そんな風景が車窓に延々と続く様子に、パームオイルの生産量が世界屈指というのもうなずける。
そんな景観を見ながら、ジョホール・バルから車で約2時間。南シナ海に面したビーチリゾートであるデサルは、付近に農業教育素材が多く、教育旅行の拠点におすすめ。非常にシンプルで数軒のリゾート以外の遊び場はない。シンガポールに至近であるため、主にシンガポールからカップルや親子連れが訪れるが、都会で暮らす子どもたちに農業の様子や生きて動く家畜などを見せることを目的としている人も多いという。
果樹園の「デサル・フルーツファーム」では見学ツアーを開催しており、数台の大型バスで訪れても問題ないほど広い敷地をほこる。シーズンである6月から8月はたくさんのトロピカルフルーツがたわわで、パイナップルやバナナなど日本でもおなじみのフルーツの実り方がわかっておもしろい。特にこの農園で作られたドリアンは賞をとったことがある絶品として知られ、シンガポールからの見学客は大量に購入していた。濃厚でクリーミーだが独特の臭みが少なく、強烈な匂いが苦手な人もこのドリアンなら試してみることができそうだ。ツアーのコースにもよるが、最後に果物の盛り合わせが出るので、農園で見た果物を実際に味わってみることもできる。
また、マレーシアの生活体験としてカンポン・ステイを実施するセメンチュー村もデサルから至便だ。フルーツの実をつける街路樹やどの家の庭にも花が咲き乱れている様子は、マレーシアで一番美しい村として賞をとったというだけのことはある。ホームステイプログラムにはかなり力を入れているようで、引率の教員用の寮まで建設されている。ホームステイができる家には看板があり、どの家でも数名までが宿泊が可能。村全体で一度に300名以上の学生が訪れたこともあるという。学校で行われるイベント時には家族がそれぞれ車で送ってくれるといい、それ以外の時間は家族と食事をしたり、ゲームして過ごす。また、宿泊せずに民芸品の制作風景の見学や食事での交流を楽しむ「ホームビジット」も可能だ。
マレーシア・ホームステイ協会会長のサハリマン・ハムダン氏によると、こうしたホームステイプログラムを実施しているカンポンではトイレを洋式に変えるなど、より多くの人々が気軽に快適にホームステイを楽しめるための努力をしているという。セメンチューはまさにその好例である。
勉強へのモチベーション向上に効果あり
引率の先生に聞いたジョホール州の教育旅行
行程中、ジョホール・バルで大阪府立長尾高等学校の研修旅行の一行と出会った。同校では隔年で海外研修旅行を実施しており、全校から希望者を募っているという。2006年にはタイを訪れ、今回は2度目のシンガポール/マレーシア旅行だ。引率の吉川拓男教諭によれば、5日間の行程で自由時間の安全面から宿泊地はシンガポール、マレーシアは日帰りで文化体験と学校交流のみという。今年は燃料サーチャージが高騰したため、4年前に訪れた時よりも料金が高くなり、参加人数が減った。それでも26名の応募があり、なかには2年前にも研修旅行に参加したリピーターの生徒もいる。
「それだけ楽しかったということでしょうね。それに、研修旅行の後には生徒に目に見える変化があります。勉強に対するモチベーションを上げる、大きな効果があるのです」。
学校交流では現地の生徒が積極的に日本の生徒に話しかけてくれるため、普段はシャイな子でもよく話すようになるという。1年生のある女生徒は「片言の英語だったけれど、それでも通じたことがうれしかった。もっと勉強すればもっといろいろ話せると思う」と興奮気味に話す。短い滞在でも大きな刺激になるようだ。
さて、ジョホール州へのアクセスだが、シンガポールから陸路で入国。そこから陸路絵40分ほどでジョホール・バルに到着する。しかし、今回、シンガポールに到着したのは午後5時45分でちょうど仕事帰りの時間帯であったため、マレーシアに入国するまで2時間ばかり時間がかかった。朝夕のラッシュアワーはかなり時間がかかることを予想しておいたほうがよい。このほか、チャンギ港からフェリーでマレーシアに渡ることも可能。ジョホール・バルから車で約2時間の位置にあるタンジュン・ベランコールに着く。フェリーの場合はシンガポールから約1時間弱で、なかなか爽快。ジョホール・バルに宿泊するのでなければ渋滞を避けてこちらを利用するのもいいかもしれない。
国王も参列する大規模イベント「フローラ・フェスト2008」
マレーシアのイベントといえば、プトラジャヤで開催
される毎年恒例の「カラーズ・オブ・マレーシア」が有
名。そしてジョホール・バルでは2007年からフラワーフェ
スティバル「フローラ・フェスト」が開催されている。
今年の開催日は7月26日。当日のフラワーパレードをメ
インイベントとして前後3日間、マレーシアのアーティス
トによるショウなどが開催される。パレードではマレー
シア各州からそれぞれ州の特徴を反映したデザインを施
した花の山車や、色とりどりの衣装に身を包んだ子ども
たちが約3時間にわたって客席を魅了。見学席には国王の
姿も見られる、大規模なイベントである。
今年は13の州や地域に加え、マカオと中国の蘇州から
も山車の参加があり、世界16カ国から招待された150名の
メディアほか、来場した人々を沸かせていた。来年度の
開催および開催地は未定とのこと。