教育旅行に新しい商機あり(2)−ビジネスモデルはこれから、まずは着手を

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▽パネルディスカッション参加者
コーディネーター:河上一雄氏(日本修学旅行協会 理事長)
パネリスト:高橋誠氏(創造開発経済所所長)
須田寛氏(東海旅客鉄道相談役、全国産業観光推進協議会副会長)
稲葉薫氏(全国農業協同組合中央会くらしの活動推進部食農くらしの対策室次長)
小島澄子氏(宮城県多賀城市立東豊中学校教務主任)
服部滋氏(国立大学法人三重大学教育学部付属中学校第3学年主任・教諭)
キャリア教育実例:生徒に必要なことを見極め、プログラムを策定

小島教諭が実施したのは農業民泊のほか、省庁訪問、酪農体験、伝統工芸体験など。地域のみならず、東北地方の都市や東京での教育旅行も実現している。こうした活動を通し、今年はテーマ別研修として「多賀城市のこれから」を考え、自分達にできることは何か提唱することをめざしている。体験した現場で見たことから地域にあるもの、足りないものを出し、地域に提言を発信する活動につなげる考えだ。身近な地域や都会での生活を体験し、視野が広がり、物事を深く考えるようになったこと、地域にも目を配り、より良い生活にしていきたいという態度になったという。
また、三重大学教育学部付属中学校の服部滋教諭も自校の生徒について、「“いいとこ”に進学し、“いいとこ”に就職したいという希望が多いが、『いいとこってどこ?』と聞くと、答えに窮する生徒が多いという。そこで「働いている人」に目を向け、名古屋で働く社会人に聞き込みをし、その調査をもとに「いい会社にとは何か」を議論。「自分の特性が活かされることが大切ではないか」との意見が出てきたという。また、大阪での1泊2日の社会見学として、「商人体験」をテーマに、地域の産物を商店街で販売する試みを実施。商品の選定から実際の仕入れ、商品説明の方法などを考えた。最終的に売り切ることができ、生徒にはその達成感はもちろんのこと、仕入交渉や販売の際の大阪の人々との触れ合いによって、人と出会い、交流できる学習であることを感じたという。
これら実例を聞き、高橋氏は第一次産業から第三次産業まで幅広く体験しており、キャリア教育でやっておくべきことをしていると評価。アンケートでは「大変」「楽しい」が多くコメントされていたことを取り上げ、「これが仕事の実態で、体得できている。キャリア教育とは頭で理解することではなく体得することだ」とまとめた。
教育素材として提供できるシステム作りを

この点について、全国産業観光推進協議会副会長で東海旅客鉄道相談役の須田寛氏須田氏も、受入側が「教育」の意識がない場合があるという。3つの意識のギャップがあり、例えば企業側はピーアールの一環や地域の奉仕としての意識であったり、インターンを実施しても、将来の人材としてスカウトのつもりもある。さらに、受け入れたとしても不慣れのために対話がなく、その土地ならではの印象がないままに終わってしまうこともあるという。産業観光は新しいツーリズムであり、ビジネスとして成り立つ前例がないため、費用面で企業側の持ち出しが多いことも長続きしないのも問題だと加えた。
コストの問題について須田氏は、受入企業だけで見れば赤字になるかもしれないが、地域全体で受け入れれば宿泊や食事、みやげ物でお金が落ちるため、地域でのコンソーシアムや協議会を作ることで解決できる方法があるのではと提案。また、高橋氏はソニーが、自分が一番最初に体験・購入したものには愛着があり、その後もその企業の商品を使いたくなるとのねらいで実施した「マイファーストソニー」戦略を引き合いに、先行投資は後から回収できるという考え方への転換を示した。
ただ、これらの意識のギャップや取組みに向けた対応について、全体的な情報がないことを指摘。地域や産業側、学校側の相互理解と連携が進むような積極的な情報発信とその仕組みが必要だとした。また、教育旅行での産業観光のビジネスモデルの構築も急務とし、コーディネーターを務めた日本修学旅行協会理事長の河上一雄氏は、旅行会社は重要な媒介事業者で、仲介者として時にはアドバイスの能力も期待されるという。逆に、教育旅行市場ではさらに営業能力を高めなければ、旅行会社に将来はないとした。
キャリア教育の対象は身近な地域から日本全域、さらに海外にも幅広いステージがあり、国内・海外担当問わず、キャリア教育を理解することが求められる。ただし、教育旅行市場を取り巻く環境として、燃油サーチャージの高騰により、特に予算の限られた修学旅行がこれまで増加傾向だった海外から国内にシフトする向きもある。「修学旅行の海外旅行は今年が最大数」との予想があることを踏まえつつ、新しいトレンドに取り組むべきだろう。