グローバル・ホテルで契約書面のスタンダードづくりに動き−デポジット含め

  • 2008年7月30日
 このほど来日したマリオット・インターナショナル・アジア・太平洋地域セールス&マーケティング担当副社長のドミニク・シェリー氏は、今後のMICEビジネスの強化を打ち出す。その上で、MICE関連の取引について「デポジットを要求、公式な契約を締結する」(シェリー氏)という大きな方針のもと、ホテルのデポジットの統一について「マリオットとして契約のスタンダードを作る必要性を感じている」という。また、契約のスタンダードとして雛形はあるものの、「個別のホテルと調整をしていかなければならない」と、グローバル・ホテルとして数多くのホテル、ホテル・オーナーを含め意思統一することが難しいこともあげる。ただし、シェリー氏は、「デポジットだけにとどまらず、顧客といかに仕事をしやすくするか」が重要と指摘し、例えば契約締結時に顧客から「緊急時に救急車は何分で到着するか」、「エコフレンドリーな対応について」といった項目の対応を求められているといい、「デポジットが契約の上で問題、あるいは(営業上の)抑止力が働いているのであれば、対応したい」とコメント。その一方で、「標準の契約書ありきで、押し付けることも出来ない。柔軟性は確保したい」として、理解も求めた。


▽旅行会社とオペレーターの意見−取引関係者での共通認識を

 さきごろ開催された香港ツアーオペレーター協議会(HKTC)の定例会では、旅行会社、ランドオペレーターからホテルの支払い条件が今年に入り厳しくなったこと、各ホテルのデポジットが統一されていない、香港以外の都市でさらに厳しい条件を出すホテルがあること、規則が不明瞭であることなどが指摘された。ランドオペレーターからは、特に「今年は厳しく、需要が高まると厳しくなる」、あるいは「稼動が高まるとホテル内の関係として営業より経理の力が強くなる」などと分析。ホテル担当者からは「デポジットの支払いで、香港はまだ良いほう」、「ポリシーは特にない」など現状について説明し、「デポジットの支払い条件が緩やかになる時もある」とした。こうしたデポジット支払い条件の厳しさは、「バンケットが絡んだ予約で要求され、厳しいときには明日、明後日にも振り込みを迫られる」(旅行会社)といい、マリオットなどのようにMICEをはじめグループ需要に注力していく動きが強まる中では一段と大きな課題となりそう。また、この問題ではデポジットの支払いをオペレーターが立て替えし、出発3ヶ月前に決まるといわれるまで、各社の分を「月数億円を負担することもある」(オペレーター)ということもある。ただし、オペレーター側でも、旅行会社への立て替えについては確約書を取るなど、対応をしている動きもある。


 昨年のJATA国際観光会議2007の特別プログラム「日本のトラベルビジネス商習慣」では、日本の旅行会社のデポジットを含む支払い、契約書の締結などから幅広い議論が交わされ、また、日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)が昨年に実施したアンケート調査で浮かび上がった事業者間取引で「仕入れの支払い、デポジット」の問題が浮かびあがっているところ。この問題は、オーガナイザーを含め、旅行業界が世界の旅行動向として需要が増えていることによるデポジットの厳格化など、日本の商慣習や事情だけでは図れない部分を理解しつつ、旅行会社やランドオペレーター、日本での営業を担当するホテルのセールスから現地に対して理解を求める調整が必要なもの。ただし、需給のバランス関係から旅行会社やオーガナイザー側から譲る部分としてデポジットの支払いの早期化、ホテル側には契約の目安となるスタンダード化が今後もさらに求められるだろう。


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