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ツアー実施の安全基準は文書化を、三浦弁護士−東京海上セミナーで

  • 2008年7月24日
 東京海上日動火災保険が7月23日、旅行会社の勤務者約100名を対象に海外旅行安全対策セミナーを開催した。これは5月に起きたイエメンでの日本人女性2名の誘拐拉致事件を受け、日本旅行業協会(JATA)顧問弁護士の三浦雅生氏を講師に「旅行者への危険情報の提供と安全管理」をテーマに講演したもの。三浦氏はイエメン事件の問題点として、持ち込み企画における旅行会社の安全確保義務と外務省が渡航延期勧告を発出している地域の安全確認を指摘した。

 三浦弁護士は旅行会社の安全確保義務は約款に含まれるものではなく、道徳的な要素を含む信義則上の義務であるとしつつ、計画、手配、実施の全ての段階で適応されると言及。その対象として目的地の安全性、運送機関や宿泊施設などの安全性、スキューバダイビングなどのアクティビティの安全性を挙げた。目的地以外は多くの場合、自社の実施ではなく現地のオペレーターや専門機関によるものであり、その場合は過去の判例に基づき旅行会社の安全確保の責任は最低限で良いとの見解だ。例えば、現地のバス会社の選定では、旅行会社が専門的な調査をすることは難しく、現地で定められた運転免許、旅客運送の免許を有し、適法に道を運行しているという3つの条件が揃えば、原則的に旅行会社は義務を果たしたと判断されるという。

 また、いわゆる持ち込み企画、ユニット商品における安全確保義務の代行は認められるかという点について、手配代行者の故意や過失は安全確保義務の責任を負うとした。さらに、旅行者への説明義務は契約前であっても、目的地の安全性について外務省の渡航情報が出ている場合、書面を交付した上で説明をしなければならないことが旅行業法に定められており、この点を改めて強調した。

 なお、外務省の危険情報の位置づけについては、危険性における判断の第1材料と説明する。JATAの「企画旅行における外務省渡航情報への対応についての考え方」というガイドラインの注意書きに、最終判断はそれぞれの責任で行なうよう記載されているが、実質はこの考え方に拘束されると考えるべきだという。このため、どこを旅行先として選ぶ場合であっても安全基準を作り、文書化することでなぜその判断に至ったのかを即座に答えられるようにするべきだとした。


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