Marriott Bonvoy

インタビュー:MEK日本局長の能登重好氏

  • 2008年7月23日
組織変更も消費者のニーズに基づいた活動を継続へ


フィンランド政府観光局(MEK)東京オフィスは7月1日から、フィンランド企業大使館商務部内にあるフィンランド企業の国際化推進をはかるFinpro Japanに業務を移管した。これはMEKとFinproの提携に基づくもので、MEK日本局長の能登重好氏、マーケティングマネージャーの駒木左恵子氏は「Finpro Japan - Visit Finland」で観光プロモーション業務を継続して担当する。移管の経緯、今後の活動方針について聞いた。(インタビュー:弊紙編集部 梶田啓子)


−Finproへの移管の経緯、また新たな体制について教えてください

能登重好氏(以下、敬称略) これまで、MEKは全世界を対象にプロモーション活動を担ってきたが、今後はヘルシンキに拠点をおく本局が国のイメージを高めるカントリー・ブランディングを担当、Finproが世界各地のプロモーション活動を展開する機能の分担がおこなわれた。MEKは観光プロモーションをする上で大枠となる国のイメージを作り、われわれはこれまで通り、市場に即したプロモーションを展開していく。

 今回の業務委託の背景は、フィンランドで観光局を含む公務員の人員削減の流れがある。フィンランドは国家として黒字だが、現在の体制を継続していると20年後に赤字に転じる可能性があるとの試算から、政府が構造改革を進めているところ。また、MEKとしてもリタイアする人が増え、組織が古くなっていることもある。ただ、移管後も観光局の規模はFinproのスタッフを合わせ、これまでと同規模の100名前後を維持し、MEKに在籍していた人は各国の担当者は1名から3名ほどで構成する。

 MEK本局はウェブサイトを活用したプロモーションに注力する予定で、今後2年間で予約機能を備え、複数言語に対応する新たなウェブサイトを構築する。第1段階で対応する言語は、フィンランド語、スェーデン語、英語、ロシア語、ドイツ語の5ヶ国語で、その後は順次、日本語、フランス語、中国語などにも対応する予定だ。


−これまでの日本語のサイトや活動はどうなるか

能登 サイトはパンフレットと同様に、目的にあわせ複数持っていてもよいと思う。また、サイトの機能が異なるのでこれまで日本で展開してきたMEK公式サイト、およびフィンランドカフェのサイトは継続して運営していく。本局は検索サイトで「フィンランド」と入力すると表示されるようなサイトを作っていく。われわれはどのようにすれば「フィンランド」と検索してもらえるようになるかを考えていかねばならない。現在はサイトのリンクも旅行関係が中心だが、音楽や料理などもっと間口を浅くても広くしていく必要があるだろう。また、現在運営しているサイトは数多くの情報やリンクがあり、例えばフィンランドカフェのサイトはリピーターによるディープな話題で盛り上がるコミュニティーが形成されている。本局が新しく作るサイトとすでに運営するサイトとの相乗効果をはかっていく。


−フィンランドへの訪問者が増加しているが、実際に訪問につなげるさらなる工夫は

能登 例えばフィンランドカフェに来て、100人にフィンランドに行ってみたいと思ってもらえたとしても、この中にはもっと説明が必要な人がいる。旅行は行く前の情報提供で満足してもらえないと実際の訪問につながらない。もちろん全員に一様に満足していただけるわけではないが、毎月、1回あたり10名前後の規模で旅行説明会や相談会を開催し、少しずつ消費者との間にある情報提供という意味での溝を埋めていきたいと考えている。インターネットには多くの情報があふれているが、自分が欲しい情報に100%応えられるものがあるわけではない。地道ではあるが、直接話していくことが最良の方法だとおもう。

 また、MEKは国のイメージ作りにあわせて、自分たちのブランディングもしていかねばならない。フィンランドはいつも面白いことをしていると印象付けなければ人は集まらないだろう。


−とくに街歩き型の滞在が人気だがその魅力は

能登 このところ人気が出て来たデザインというテーマは、旅行のモチベーションのひとつに過ぎない。フィンランドへの旅行は、コストパフォーマンスや満足度調査では測れない「何か気持ちいい」指数が高いといわれる。街は安全で、初めての訪問でものんびり過ごすことができ、思わず微笑んでしまうようなところ。パリでアパートを借りて滞在するような旅行も人気があるが、このような旅行者のローカル化願望は「何か気持ちいい」を味わうことが目的なのではないだろうか。

 フィンランドは従来型の観光デスティネーションとは異なり、まだ伸びる余地がある。IT、教育、環境、デザインなど様々な顔を持っていることも魅力だろう。現在の急務はオーロラ、デザインに続く第3の素材を探すことだ。まだ確証はないが、おそらく暮らし方のようなものになるだろう。


―2010年までに20万泊達成するために今後、訴求していきたい素材は

能登 まずは自然。これまでのフィヨルドを見るようなツアーは景色を楽しむ旅行だが、積極的に自然そのものを楽しむような時間の過ごし方を提案していきたい。例えば、サマーコテージに1週間滞在するコースはレンタカーが必要で上級者向きだが、ハイキングや大人の林間学校に参加するコース、2時間で体験できるサウナなどパッケージツアーでも段階ごとにプロモーションしたい。ただ、新しい商品は旅行会社にとってリスクを伴うのでなかなか難しいだろう。こういった商品はスペシャリストが必要なので、観光局と専門の旅行会社などが協力し、育てていかなければならない。パッケージツアーでは引き続き、北欧4カ国をめぐるツアーなど定番の商品を継続して販売していただきたい。

 幸いにもフィンランドは東京、名古屋、大阪の便数が多く、すでに確立しているデザインなどの素材と組み合わせれば20万泊は達成できるだろう。

−ありがとうございました。