取材ノート:ランデブーカナダレポート、4観光局の動向と今後の方針

  • 2008年7月22日
カナダ最大の旅行見本市「ランデブー・カナダ」(RVC)が5月下旬に開催され、過去最大規模となる合計1721名のバイヤーとサプライヤーが参加した。日本市場についてはRVC開催直前にエア・カナダ(AC)の関西路線の運休が伝えられたものの、引き続き日本市場を重視する方針を強調。参加した各出展者からは、運休を惜しむ声や復便に向けた要望が多く、「需要があることを見せて、運休を取りやめさせたい」と、需要の獲得に向けた意欲が高まっていた。RVCに参加し、日本人の訪問者の多い州の4観光局の現地担当者に、現在の動向や今後の方針を聞いた。


BC州、オンライン・マーケティングで需要創造、商品造成促進のツールとして活用へ

 ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)観光局のアジア担当マーケット・ディベロプメント・マネージャーのシンディー・ゴービン氏は、オンライン・マーケティングのさらなる強化を進め、日本市場での需要創造、同州の旅行商品の造成を促していく考えを示した。現在、BC州ウェブサイト「Hello BC.JP」を受け皿とし、定期的なニュースレターの発行や、キャンペーンなどを展開。ニュースレターの読者数は約2万人で、その多くがキャンペーンなどを展開した際の反応が高いアクティブな読者だという。

 将来的にはウェブサイト上の情報を充実し、ユーザーが閲覧した内容やキーワードから、その人の興味のある地域や素材を把握。それをデータベース化し、ユーザーがアクセスした時、その人の興味のある情報をサイト内で表示し、ニュースレターもそのユーザーが興味のあるトピックを配信していくことも考えている。また、ウェブサイトを通して得られる消費者のデータを分析し、旅行会社への商品造成を促す際のツールとして活用していきたいという。

 なお、BC州を訪れる日本人旅行者の傾向は5年前と比べ、FIT旅行者が増加。スケルトンタイプのツアー参加者を含めると約60%にのぼり、過半数を超えている。また、BCが提案しているバンクーバー、ウィスラー、ヴィクトリアの三都市周遊の旅も定着してきたという。


アルバータ州観光公社、日本向け予算が5%増−体験テーマに魅力をアピール

 2007年のアルバータ州への日本人訪問者数は前年比14%減で、カナダ全体の減少率と同じ結果になった。しかし、アルバータ観光公社代表のデレック・コークカー氏は「日本マーケットは引き続き重要」と語り、2008年度の日本向けの予算は2007年と比べ5%を増額したという。

 同州は今年も消費者向け、業界向けに様々なプロモーションを展開していく。ロッキーやレイク・ルイーズなどでのハイキング、ウォーキング、カヌーなどのアクティビティや、大自然の中でのスパ体験などに焦点をあて、「体験」をテーマに同州の魅力をうちだしていく考え。その中での大きな取り組みとして今年から3年間、カナダ観光局と協力した大規模な広告キャンペーンを実施する。これは主に消費者の需要喚起をめざし、5月末の見開き新聞広告から開始しているもの。コークカー氏は、「アルバータには日本人を魅了する観光素材がそろっている。改めて市場に認識してもらうためには、長期間の大規模キャンペーンが非常に重要」と、このキャンペーンの意義を語った。


アトランティック・カナダ、赤毛のアン100周年が好調−日本の効果がもっとも高い

 アトランティック・カナダ4州観光局によると、「赤毛のアン」出版100周年の今年、日本からプリンス・エドワード島への予約が非常に好調だという。この好調ぶりは世界の中でも日本が極めて高く、同観光局リージョナル・セールス・マネージャーの高橋由香氏は、「総合的なプロモーションが功を奏した」と語り、赤毛のアン関連のメディアの露出と旅行会社の商品造成が、うまく連動して市場に出たことを評価している。上期商品の予約状況が好調であることから、下期も期待以上の商品数が造成される見込みだという。

 プリンス・エドワード島に関しては今後、赤毛のアン関連のイベントや活動を通して浸透したイメージを保ちつつ、さらにその他の3州への興味や関心を高め、4州内においての滞在日数の増加につなげたいという。そのため、プリンス・エドワード島の露出とともに、他州の紹介を組み込むことを促す広報活動、百貨店で開催されている「赤毛のアン展」において、プリンス・エドワード島のほか4州の写真
やポストカード、関連資料や旅行パンフレットを置く観光ブースを併
設する活動に取り組んでいる。


オンタリオ州観光局、世界遺産の「リドー・ヘリテージ・ルート」を促進

 オンタリオ州観光局は、2007年に同州内初の世界遺産として認定されたリドー運河沿いの村々を結ぶルートを「リドー・ヘリテージ・ルート」とし、日本マーケットでのプロモーションを展開していく。オタワからキングストンまでの202キロメートルには、マノティック、メリクヴィル、スミス・フォールズ、パースなど、小さな村や町が点在しており、そうした村を基点とするハイキングやクルーズなどのアクティビティを提案していく。これらの村や町には個人経営のイン(小規模の旅館)やB&Bタイプの宿泊施設があるほか、ルートのゲートウェイとなるオタワやキングストンには大型ホテルがあり、ルートを巡るための宿泊施設が整備されていることもアピールする。オンタリオ州観光局のアジア・パシフィック地区担当マーケティング・マネジャーのハービー浜崎氏は、「オタワのウィンタールードや紅葉のシーズンと一緒に組み込み、州内の滞在日数の増加につながれば」と、期待している。


カナダ西部のゲートウェイ、
バンクーバーを“滞在する”魅力

 今回のRVCの開催地バンクーバーは、日本からカナ
ダ西部のゲートウェイとなる都市。現在は、バンフや
ウィスラーをめぐる周遊旅行の玄関口として滞在する
ことが多く、バンクーバーそのものを楽しむツアーが
少ないという。

 バンクーバーは利便性の高い都市機能と海や原生林
といった大自然が共存し、コンデ・ナスト・トラベラ
ー誌に「世界一住みやすい街」に選ばれ続けている魅
力ある都市。バンクーバー観光局セールス&市場開発
課マネージャーの山本安彦氏は、「華やかではないが、
滞在すればするほど良さが分かる街」とその魅力を表
現する。留学やワーキングホリデーで滞在した学生の
多くがリピーターとしてバンクーバーに訪れるのも、
彼らがバンクーバーで自分なりの楽しみを見つけ、心
地よく暮らしたからだとし、「そこに旅行者として訪
れた場合の楽しむヒントがある」という。

 そのため、山本氏が薦めるバンクーバーでの楽しみ
方は、現地に滞在し、暮らすような旅。バンクーバー
内にはサンドマンスイートやカルマナ・プラザなど、
アパートメントタイプの宿泊施設も充実していて、最
近は2週間から1ヶ月ほど滞在するシニアのロングステ
イも増えてきている。

 バンクーバーでの滞在をより充実したものにする方
法のひとつが、現地の英会話学校を活用すること。午
前中は英会話レッスンを受け、午後は観光しながら学
習したことを実践することで、買物やバスの乗り方な
ど生活のコツを学べ、現地での滞在がより充実したも
のになるという。実際、午前中は英会話学校へ行き、
午後は近郊でゴルフというシニアもいるという。

 残念ながら、RVCの期間はホテルと会場の往復と小2
時間ほどの散策しかできなかったが、それでも街中を
歩くと太平洋やロッキーの山々など、バンクーバーを
取り囲む大自然を背景とした都市の景観の美しさに出
会え、通りの角を曲がるごとに表情を変える姿が楽し
めた。

 また、春から夏にかけては、街中のあらゆるところ
に花々が咲き、女性には街歩きの中での花観賞も人気。
中でも市内にあるバン・デューセン植物園のラバーナ
ムの小道が有名。ラバーナムは5月末から6月初旬が見
ごろで、訪問時には鮮やかな黄色の花々が咲いていた。
バン・デューセン植物園のナンシー・ウォン氏は「植
物園は55エーカーと広大で、ラバーナムが咲く人気の
季節でも、ゆっくり自分のペースで観賞することがで
きる」とアピール。バン・デューセン植物園には一年
中あらゆる花が咲いているほか、ガーデニング関連や
花をモチーフにしたクラフト類などを販売する土産物
店、園内で栽培する食用の花のサラダを提供するレス
トランなどもあり、花観賞以外の楽しみも充実してい
る。