Marriott Bonvoy

インタビュー:ニュージーランド政観日本支局長 ジェイソン・ヒル氏

  • 2008年6月18日
自然を「体感」して楽しめるのがニュージーランド旅行の特長
その魅力を伝え、質の高い旅行が提供できるサポートに努める



自然が観光の魅力の1つとなっているニュージーランドでは、ただ「観る」だけでなく体感して楽しみ、その中で人との交流をして心に残る旅行ができることが大きな特長だ。ニュージーランド政府観光局日本局長のジェイソン・ヒル氏は、「価格を下げて訪問者数を増やすのではなく、魅力や価値を正しく旅行業界に伝え、消費者に訴求したい」と話す。8月末にはニュージーランドから20社ほどのサプライヤーが参加するワークショップ「キーウィリンクジャパン」を開催、新しい情報を発信する場を設ける。日本の旅行業界で展開する今後の活動方針を聞いた。(聞き手 本紙記者:秦野絵里香)


−今後、日本市場でどのように需要を喚起していきますか

ジェイソン・ヒル氏(以下敬称略) 旅行商品の価格を安くして販売するという方向ではなく、ニュージーランドのイメージを高めることにつなげたいと考えている。こうしたイメージ戦略には旅行会社の協力が必要不可欠だ。訪問者数では、ニュージーランド政府観光局(TNZ)チーフ・エグゼクティブのジョージ・ヒクトン氏がいうように今後、10万人にまで減少するかもしれない。しかし、ニュージーランドの魅力は自然を楽しんでもらうことではじめて伝わり、価格のみに左右されるものではない。まずは新鮮で正しい情報を伝え、旅行会社にうまく活用してもらい、販売に役立つような方法を考えたい。


−最近のニュージーランドへの旅行形態はどのように変化していますか

ヒル 南島のマウントクックやミルフォードサウンドは、今後も変わらず人気の高いデスティネーションであるだろう。しかし、宿泊施設や現地で何をするか、ということに変化がでてきている。たとえば、ホテルの滞在ではなく、ラグジュアリーなロッジやリゾートホテルなどの問い合わせが増えてきている。こうした利用客はFITが多く、滞在日数も多いし、消費額も一般のツアー客と比べて2倍から3倍ほど多く消費する傾向がある。そうした流れの一方で、日本市場からはツアーの送客に期待するニュージーランドのサプライヤーもいまだ多い。だからこそ、新しい情報や、日本人が知らないニュージーランドでできることを正しく伝え、FITや企画商品まで販売に役立てられるサポートを継続していかなければならない。

 5、6年前に約80%もあった団体旅行は現在、60%ほどに下がっている。それに対して、レンタカーやキャンピングカーなどの手配を現地のオペレーターに依頼するFITに近い旅行が40%ほどに増えてきている。このようにニュージーランドでの日本人旅行者の旅行形態に変化が出てきている。ただし、訪問者数の維持、あるいは増加をめざし、インセンティブ、グループの利用を促進する研修旅行をニュージーランド航空(NZ)と共同で実施する予定もある。


−今年の日本市場のテーマは「ウォーキング」です。どのように楽しむことをおすすめしますか

ヒル ハイキングやトレッキング、バンジージャンプなどはよく知られていた。しかし、山でも森でも街でも、どこでも誰でもできるウォーキングは、自然との交流だけでなく人とも触れ合うことができる。今年のターゲット層とする55歳以上のアクティブシニアにも気軽に参加してもらえる。自然の中で、自分の気分が良くなり、ニュージーランドの魅力に触れられる。見るだけでなく体感することで、まだ知らないところや経験していないことへの憧れにもなり、再訪を促すことにもつながる。30分でも3時間でも、歩くにはお金がかからず、ツアーの中に少しでも組み込んでもらえれば新しいニュージーランドの魅力を伝えることができる。

 また、ウォーキングは季節を問わないのもポイント。10年ほど前から黄葉やハイキング、トレッキングなど秋のプロモーションを続けており、3月と4月の訪問者数は10年前と比べ伸びてきている。旅行業界は夏がピークという先入観があるが、南島ではスキーをはじめとするウィンタースポーツも人気で、雪と緑のコントラストが美しい。北島は日本の冬ほど寒くはならず、マオリ文化に触れながら原生林の中でのウォーキングや温泉が楽しめる。ニュージーランドの原生林は常緑樹が多いので枯れることがなく、冬は島全体の空気が澄んで景色が美しく映るだろう。


−日本の旅行業界に向けて、これから注力して取り組んでいきたいことはありますか

ヒル 消費者に向けてニュージーランドの魅力を伝えるためには、旅行を企画する人だけでなく、消費者に最も近い存在の販売現場の方々にニュージーランドを知ってもらうことが大切だ。最近はインターネットでデスティネーションのことを簡単に調べることができ、消費者の方が詳しいこともある。そうした消費者に対し、価格で差をつけるのではなく、ニュージーランドを旅行する魅力を伝えて販売した方が消費者にも、旅行会社にもメリットがあるはず。ただ、こうした考え方が根付いていない現状もある。さらに、旅行会社のスタッフにニュージーランドの正しい情報や新しい魅力を伝えるスペシャリストを増やしたいと考えているが、大手の場合は異動もあり、長期的な意味では難しい側面もある。それでも、TNZのサイトに設けているトレーニング用のページで勉強することをはじめ、カウンターで販売する際にホームページ、インターネットを利用して最新の情報を消費者と一緒に見ながら伝えることもしていただきたい。半年前に作ったパンフレットよりも、より新しい情報を伝えることもできるはずだ。

 ニュージーランドは、よくオセアニアとしてひとくくりに考えられてしまう。この中で差別化をはかるのではなく、そもそもまったく違う魅力を持っていることを知ってもらいたい。ニュージーランドはニュージーランドの良さを正しく伝えていくことが、イメージを高め、新しいニュージーランドの認知向上、需要喚起につながるだろう。


ありがとうございました。