現地レポート:北京オリンピック開幕に向けラストスパート
北京オリンピックに向け受入整備進む、一校一国運動の日本チーム応援校も
北京オリンピック開幕の8月8日まで、2ヶ月を切った。今回のオリンピックは開・閉会式が開催される北京市をはじめ、上海、天津、青島、香港、瀋陽、秦皇島の6都市が共催都市で、現地の受入準備はラストスパートを迎えている。そのような中、警備体制は厳重になっており、4月1日以降は原則として各会場施設の見学や関係者へのインタビューはできない。また、一般の人が会場に近づくことは難しい。今回は5月下旬から6月にかけて実施された北京と周辺都市への「北京のオリンピック取材旅行」で垣間見た、現地の様子をレポートする。(取材協力:中国国家観光局)
−四川省大地震により被害に遭遇した皆様に、衷心よりお見舞い申し上げます。−
北京は歓迎ムード
北京市旅遊局によると、オリンピック期間中の旅客数は50万人を見込んでいるそうだ。その人々を歓迎する玄関口の北京首都国際空港では、すでにオリンピックの告知、イメージキャラクターの装飾があり、開会式まで待ちきれないといった様子だ。市街では今後、集中的にデコレーションが始まる予定。7月にも、中国の各メディアがいっせいにオリンピックの特集などを予定しているとも言われており、オリンピックに向けたムードがいちだんと高まりそうだ。また、各開催都市では医療や法律関係など専門的な職種にもボランティアを募集しており、本業を休職して参加する人もいるそうだ。市民も熱い想いでオリンピックを迎え、訪れる人々を「熱烈歓迎」するだろう。
訪れる人たちをもてなす宿泊施設として、天安門広場から真北に位置するオリンピック公園(Olympic Green Area)の周辺に現在、新たに5ツ星クラスのホテルが3軒、国際会議センターが建設中で、開催前には完成する見込みだ。また、一昨年に地下鉄13号線が開通し、7月に北京首都国際空港から地下鉄13号線と2号線(環状線)に接続する東直門までを18分で結ぶモノレールが完成する予定で、インフラの整備も着々と進む。また、オリンピック後のビッグ・イベントである上海万博をにらみ、09年中に北京/上海間の高速鉄道が開通する予定だ。急ピッチで工事が進められており、時速300キロで両都市を結ぶことで、所要時間は現行の13時間から5時間に短縮される。北京を訪れると、オリンピックを契機に躍動していく姿に触れることができる。
ちなみに、オリンピックの競技会場は全37ヶ所で、このうち北京市には31ヶ所が予定されており、中心となるオリンピック公園にはデザインで注目を集めるメイン会場の「鳥の巣」(National Stadium/Bird's Nest)、水泳競技会場の「水立方」(National Aquatics Center/Water Cube)など10施設が集まる。建設中のビルの合間に、新しいオリンピック施設が垣間見られ、まさに北京の街の開発が現在進行形で進められていることを実感する。
リゾートの雰囲気が漂う青島
青島市ではヨット競技のセイリングが開催される。会場の「セイリングセンター」(Qingdao Olympic Sailing Center)は、五四広場ちかくの浮山湾に面する場所にある。北京/青島間のアクセスは現在、空路は所要時間が約70分
で1日約15便が運航。列車では5時間30分で、オリンピック期間中はそれぞれ増便、増発される見込みだ。青島駅から会場は東へ約8キロメートル、車で約15分。駅から会場までの海岸線沿いに高級ホテルや海水浴場が点在し、付近にはヨットハーバーを備え、青島がリゾート都市であるという側面を最も感じることができるエリアだ。マリーナでは一番乗りを果たしたシンガポールチームをはじめ、イタリアチームの一部も、すでにオリンピック本番に向けて現地での練習に入っており、オリンピックの開幕直前という雰囲気がさらに高まる。
青島がオリンピックの開催に関連し、最も注力していることが「エコ」の視点。風力発電や海水の淡水化研究、海の潮力を利用した発電の研究など、試用期間のものを含めて会場施設の電力供給にも利用される予定だという。
青島市旅遊局は今年度、中国国内から400万人、海外は30万人の観光客の入域を想定している。「オリンピック後」の2011年までには、海外からの観光客は前年比20%増を目標として掲げる。このうち、日本市場への期待は非常に高く、特に若い女性層をターゲットとして「ショッピング&観光」というテーマのもと、3日から4日間の滞在を想定した観光素材を整備していく考えだ。
サッカー会場となる天津
天津の「サッカースタジアム」(Tianjin Olympic Center Stadium)は、「水滴」をイメージし、ガラスを多用した特徴的な施設だ。南北が380メートル、東西が270メートル、高さ53メートルで、収容人員は6万人。日本チームの予選リーグでは、8月7日のアメリカ戦、8月10日のナイジェリア戦で使用される予定だ。
天津市旅遊局によると、天津市への海外からの観光客の入域数は103万人。そのうち日本人は30万人で、毎年約5%ずつ増加しているという。日本人の誘致策として重視するのは、リピーター。近距離デスティネーションのメリットを活かして、何度も観光に訪れてもらえるような観光素材を整備していくことが必要と認識している。日本企業の進出も盛んで、トヨタ、デンソー、ヤマハのほか、健康食品関連では大塚製薬や中小企業も多く、業務渡航の需要も見込めるという。
また、北京/天津間のアクセスの強化も進められており、オリンピックの開幕に間にあわせるよう、高速鉄道が開通する予定だ。平均時速は300キロメートルで、同区間が30分で結ばれる。車の場合、所要時間は約2時間30分。同区間の渋滞を緩和するため、オリンピック開催までに現行の高速道1本に加え、バイパス的な高速道をもう1本、開通する予定だ。
日本応援校を訪問−国家的イベントに向け大きな期待
長野オリンピック以来、さまざまな国際行事に取り入れられている「一校一国運動」。開催地の小・中学校の生徒が自国の選手団に限らず、特定の参加国を応援しようという
試みだ。子供たちにとっては国際体験、異文化交流や協力について考え、学ぶことのできる絶好の機会。応援する対象の国の文化、生活習慣を理解し、未来に続く親善、交流が期待されている。北京オリンピックでもこの運動が実施されており、日本選手団を応援するのは、北京市内の花家地実験小学校の児童、および教職員たち。会期中には実際に競技会場に行き、応援するという。
花家地実験小学校の児童数は約1100人。同校では以前から、日本の小学校と交流をしている実績があり、劉世濤副校長は「今年は中日青少年交流年という意義ある年で、昨年末には日本から福田首相もご来校いただいた。これまで、日本との間でさまざまな交流を実施してきたが、今回の北京オリンピックでは日本選手を招き、メダル獲得に向けて応援する」と意欲的だ。実は今回、視察団は訪問前日に取材を申し込んだが、急な申し入れにもかかわらず親切に受け入れてくれた。教職員や子供たちから、オリンピックを日本と中国の交流の架け橋としたいという大きな期待感と熱意が感じられ、国家的なイベントであるとともに、交流、歓迎を感じる視察であった。
北京オリンピック開幕の8月8日まで、2ヶ月を切った。今回のオリンピックは開・閉会式が開催される北京市をはじめ、上海、天津、青島、香港、瀋陽、秦皇島の6都市が共催都市で、現地の受入準備はラストスパートを迎えている。そのような中、警備体制は厳重になっており、4月1日以降は原則として各会場施設の見学や関係者へのインタビューはできない。また、一般の人が会場に近づくことは難しい。今回は5月下旬から6月にかけて実施された北京と周辺都市への「北京のオリンピック取材旅行」で垣間見た、現地の様子をレポートする。(取材協力:中国国家観光局)
−四川省大地震により被害に遭遇した皆様に、衷心よりお見舞い申し上げます。−
北京は歓迎ムード
北京市旅遊局によると、オリンピック期間中の旅客数は50万人を見込んでいるそうだ。その人々を歓迎する玄関口の北京首都国際空港では、すでにオリンピックの告知、イメージキャラクターの装飾があり、開会式まで待ちきれないといった様子だ。市街では今後、集中的にデコレーションが始まる予定。7月にも、中国の各メディアがいっせいにオリンピックの特集などを予定しているとも言われており、オリンピックに向けたムードがいちだんと高まりそうだ。また、各開催都市では医療や法律関係など専門的な職種にもボランティアを募集しており、本業を休職して参加する人もいるそうだ。市民も熱い想いでオリンピックを迎え、訪れる人々を「熱烈歓迎」するだろう。
訪れる人たちをもてなす宿泊施設として、天安門広場から真北に位置するオリンピック公園(Olympic Green Area)の周辺に現在、新たに5ツ星クラスのホテルが3軒、国際会議センターが建設中で、開催前には完成する見込みだ。また、一昨年に地下鉄13号線が開通し、7月に北京首都国際空港から地下鉄13号線と2号線(環状線)に接続する東直門までを18分で結ぶモノレールが完成する予定で、インフラの整備も着々と進む。また、オリンピック後のビッグ・イベントである上海万博をにらみ、09年中に北京/上海間の高速鉄道が開通する予定だ。急ピッチで工事が進められており、時速300キロで両都市を結ぶことで、所要時間は現行の13時間から5時間に短縮される。北京を訪れると、オリンピックを契機に躍動していく姿に触れることができる。
ちなみに、オリンピックの競技会場は全37ヶ所で、このうち北京市には31ヶ所が予定されており、中心となるオリンピック公園にはデザインで注目を集めるメイン会場の「鳥の巣」(National Stadium/Bird's Nest)、水泳競技会場の「水立方」(National Aquatics Center/Water Cube)など10施設が集まる。建設中のビルの合間に、新しいオリンピック施設が垣間見られ、まさに北京の街の開発が現在進行形で進められていることを実感する。
リゾートの雰囲気が漂う青島
青島市ではヨット競技のセイリングが開催される。会場の「セイリングセンター」(Qingdao Olympic Sailing Center)は、五四広場ちかくの浮山湾に面する場所にある。北京/青島間のアクセスは現在、空路は所要時間が約70分
で1日約15便が運航。列車では5時間30分で、オリンピック期間中はそれぞれ増便、増発される見込みだ。青島駅から会場は東へ約8キロメートル、車で約15分。駅から会場までの海岸線沿いに高級ホテルや海水浴場が点在し、付近にはヨットハーバーを備え、青島がリゾート都市であるという側面を最も感じることができるエリアだ。マリーナでは一番乗りを果たしたシンガポールチームをはじめ、イタリアチームの一部も、すでにオリンピック本番に向けて現地での練習に入っており、オリンピックの開幕直前という雰囲気がさらに高まる。
青島がオリンピックの開催に関連し、最も注力していることが「エコ」の視点。風力発電や海水の淡水化研究、海の潮力を利用した発電の研究など、試用期間のものを含めて会場施設の電力供給にも利用される予定だという。
青島市旅遊局は今年度、中国国内から400万人、海外は30万人の観光客の入域を想定している。「オリンピック後」の2011年までには、海外からの観光客は前年比20%増を目標として掲げる。このうち、日本市場への期待は非常に高く、特に若い女性層をターゲットとして「ショッピング&観光」というテーマのもと、3日から4日間の滞在を想定した観光素材を整備していく考えだ。
サッカー会場となる天津
天津の「サッカースタジアム」(Tianjin Olympic Center Stadium)は、「水滴」をイメージし、ガラスを多用した特徴的な施設だ。南北が380メートル、東西が270メートル、高さ53メートルで、収容人員は6万人。日本チームの予選リーグでは、8月7日のアメリカ戦、8月10日のナイジェリア戦で使用される予定だ。
天津市旅遊局によると、天津市への海外からの観光客の入域数は103万人。そのうち日本人は30万人で、毎年約5%ずつ増加しているという。日本人の誘致策として重視するのは、リピーター。近距離デスティネーションのメリットを活かして、何度も観光に訪れてもらえるような観光素材を整備していくことが必要と認識している。日本企業の進出も盛んで、トヨタ、デンソー、ヤマハのほか、健康食品関連では大塚製薬や中小企業も多く、業務渡航の需要も見込めるという。
また、北京/天津間のアクセスの強化も進められており、オリンピックの開幕に間にあわせるよう、高速鉄道が開通する予定だ。平均時速は300キロメートルで、同区間が30分で結ばれる。車の場合、所要時間は約2時間30分。同区間の渋滞を緩和するため、オリンピック開催までに現行の高速道1本に加え、バイパス的な高速道をもう1本、開通する予定だ。
日本応援校を訪問−国家的イベントに向け大きな期待
長野オリンピック以来、さまざまな国際行事に取り入れられている「一校一国運動」。開催地の小・中学校の生徒が自国の選手団に限らず、特定の参加国を応援しようという
試みだ。子供たちにとっては国際体験、異文化交流や協力について考え、学ぶことのできる絶好の機会。応援する対象の国の文化、生活習慣を理解し、未来に続く親善、交流が期待されている。北京オリンピックでもこの運動が実施されており、日本選手団を応援するのは、北京市内の花家地実験小学校の児童、および教職員たち。会期中には実際に競技会場に行き、応援するという。
花家地実験小学校の児童数は約1100人。同校では以前から、日本の小学校と交流をしている実績があり、劉世濤副校長は「今年は中日青少年交流年という意義ある年で、昨年末には日本から福田首相もご来校いただいた。これまで、日本との間でさまざまな交流を実施してきたが、今回の北京オリンピックでは日本選手を招き、メダル獲得に向けて応援する」と意欲的だ。実は今回、視察団は訪問前日に取材を申し込んだが、急な申し入れにもかかわらず親切に受け入れてくれた。教職員や子供たちから、オリンピックを日本と中国の交流の架け橋としたいという大きな期待感と熱意が感じられ、国家的なイベントであるとともに、交流、歓迎を感じる視察であった。
世界最大規模、北京首都国際空港第3ターミナル
オリンピックにあわせ、2月29日に北京首都国際空
港の第3ターミナルが供用を開始した。総工費は約38
億ドル(約4075億円)、総面積は世界最大規模を誇
る98.6万平方メートル。内部には中国語と英語の案内
板表示が各所に設けられ、中国語、英語、日本語、韓
国語の空港案内リーフレットも設置されている。
日本路線では中国国際航空(CA)、日本航空(JL)、
全日空(NH)など、この新ターミナルを利用。出国時
は第3ターミナルT3Cエリアの4階ロビーで各社のチェ
ックインカウンターでチェックインし、エスカレータ
ーで2階に移動し、出発ゲートがあるT3Eエリアまでシ
ャトルで移動する。成田国際空港の第2ターミナルの
シャトルと比べると距離が長く、所要時間は6分から7
分。到着後は、まっすぐに進むと出国審査、手荷物審
査を通り抜け、出発ロビーに出る。なお、オリンピッ
クを控え、今年からは手荷物検査のほか、機内預け入
れの荷物のチェックが厳重に行われており、ライター
やマッチ類は全て没収となるので注意したいポイント
だ。
T3Eエリアは、出発ロビーが翼を広げたように奥が
広い形をしており、到着後にまず出発ゲートの場所を
確認しておいた方がよいだろう。ゲートは順番に並ん
でおり分かりやすいが、各ゲートの間隔が長く、思っ
た以上に移動の時間がかかるからだ。ちなみに、ロビ
ー内の大部分はショッピング・エリアが占めており、
ブランドショップも豊富。茶の試飲、販売所もあり、
中国のおみやげを出発間際まで買うこともできる。